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パイロクロア型酸素貯蔵材料の高耐熱化技術の確立とそれを利用した高性能三元触媒の開発

  • 森川 彰森川 彰
  • 須田 明彦須田 明彦
  • 山村 佳恵山村 佳恵
  • 信川 健信川 健
  • 千葉 明哉千葉 明哉
 本技術は,ガソリン車のNOx 排出量を大幅に低減する新たな浄化コンセプトとこれを実現するための高耐熱性セリア—ジルコニア酸素貯蔵材(CeO2-ZrO2 Oxygen Storage Material: CZ)の実用化に関するものである。
現在の一般的なガソリン車には排ガス中の有害成分(エミッション)である一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOx)を同時に除去するための三元触媒が搭載されている。三元触媒は主に貴金属(浄化反応の活性点),酸化物担体(貴金属を保持)およびCZ から構成され,99%以上の有害成分を除去することができる。近年,新興国での自動車の増加や大気レベルの排出ガス規制への対応により,自動車排ガス浄化触媒用途の貴金属需要はさらに高まっている。このため,必要最小限の貴金属使用量でエミッションを低減することが求められている。

1.新浄化コンセプトに基づく三元触媒の開発
 受賞者らは,三元触媒中の酸素の反応速度を制御する浄化コンセプトとこれを実現する新奇材料を創出し,必要最小限の貴金属量で大幅なNOx 排出量低減が可能な三元触媒技術を確立した。
《新NOx 浄化コンセプト》
 CZ はCe の酸化還元により酸素を「速やかに」吸蔵・放出する反応サイト(酸素吸蔵サイト)を主に結晶表面に持つ。これにより三元触媒中の酸素濃度を調整し,高い触媒活性を保持している。しかしCZ 表面の酸素貯蔵量を超える酸素が急激に流入すると,貴金属が酸化されて失活し,大量のNOx が排出される課題があった。
 受賞者らは,従来CZ に比べ酸素吸蔵・放出反応速度が著しく「遅い」酸素吸蔵サイトを触媒に付加して,触媒の酸素吸蔵反応速度に時間差を与えることで貴金属使用量を増やすことなく,NOx を浄化できることを見い出した。
《パイロクロア型酸素貯蔵材の高耐熱化技術》
 上記コンセプト実現のため,受賞者らは,結晶格子中でCe とZrが規則配列したパイロクロア構造のCZ に着眼した。準安定相であるため本来は高温で不安定なパイロクロア構造CZ を実用レベルの高耐熱材料とするため劣化メカニズムを詳細に解析し,①原料となる従来のCZ 粉末全体に均等な圧力を掛けて成型して結晶同士の密着性を上げて結晶成長を促進する技術,②成型体を精密に制御された条件下で高温還元しパイロクロア構造とする技術,を確立し,高温でもパイロクロア構造を保持可能な新奇材料を創出する技術を実現した。
 本材料は比表面積が著しく小さいミクロンサイズであるにもかかわらず,理論限界の酸素を吸蔵・放出する機能を持つ。さらに本材料は,従来のCZ に比べて「遅い」酸素吸蔵・放出反応速度を示し,同時に車載可能な耐熱性を持つ世界初の材料である。本材料を従来の三元触媒に追加することで著しいNOx 排出抑制効果が得られ,新浄化コンセプトを実現した三元触媒の実用化にいたった。

2.本技術の実用化と社会, 環境への貢献
 本技術実現の鍵となった高耐熱性新奇パイロクロア型酸素貯蔵材は2014 年より生産が開始され,本材料を含む三元触媒はグローバルに展開される車両に搭載されている。
 本材料は,これまで不可能とされてきたパイロクロア構造CZ に実用レベルの耐熱性を付与することで実現された。この材料は,従来のナノサイズ・高比表面積化を指針として開発されてきた酸素貯蔵材とは一線を画している。この新たな材料開発トレンドは触媒材料開発の分野に一石を投じ,既成の材料の概念を変え得る可能性を秘めている。
 また本技術は,酸素の反応速度に着眼し,その制御を可能とする上記材料の創出によって貴金属使用量を最小限に留めながら,NOx 排出を抑制する。このためグローバルな大気環境保全に大きく貢献することができる。

 本研究の成果に対して、日本化学会は、2014年、森川 彰(株式会社豊田中央研究所)、須田 明彦(株式会社豊田中央研究所)、山村 佳恵(株式会社豊田中央研究所)、信川 健(トヨタ自動車株式会社)、千葉 明哉(株式会社キャタラー)に化学技術賞を贈った。

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