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新規分子・構造設計による革新逆浸透膜の開発

  • 木村 将弘木村 将弘
  • 佐々木 崇夫佐々木 崇夫
  • 中辻 宏治中辻 宏治
  • 井上 岳治井上 岳治
  • 川上 智教川上 智教
 本技術は,多様な原水を安定して淡水化,再利用可能とする新規分子・構造設計による革新逆浸透膜の開発とその工業化に関するものである。
 逆浸透膜による水処理技術は,1950 年代に米国において原理が提唱され,世界中で素材,構造,製法について精力的な研究がなされてきた。1980 年代前半には,実用的な脱塩性能と透水性能を両立する架橋芳香族ポリアミド逆浸透膜が発明され,現在も逆浸透膜の主流となっている。架橋芳香族ポリアミド逆浸透膜は,その優れたイオン除去性を特徴とし,超純水製造に用いられ,その後の技術革新により,世界の水問題を解決するべく,海水,かん水の淡水化,下廃水再利用等に用いられてきた。
 一方で,さらなる技術の普及には,水質,造水性能向上による高水質・省エネ水処理技術,およびイオン,有機物,微生物由来化合物などを含む多様な原水への対応が不可欠となり,高性能(高水質,省エネ),耐汚染性(低ファウリング性,耐薬品洗浄性)を兼備した革新逆浸透膜の開発が強く望まれていた。

1.新規分子・構造設計による革新逆浸透膜の開発
 受賞者らは,サブナノメートルからサブミクロンに及ぶマルチスケールでの構造制御という観点から,既往の界面重合による架橋芳香族ポリアミド薄膜について見直しを行った。すなわち,分子動力学計算・構造解析,多元的形態解析を駆使し,細孔構造設計(水分子は透過し,水和イオンなどの低分子は透過しにくい高選択性を有する細孔構造),ひだ構造設計(均一厚み,高さ構造)を付与することで,これまで不可能と考えられていた高透水性と高イオン除去性を両立する架橋芳香族ポリアミド薄膜の開発に成功した。具体的には,理想的な膜構造設計を行うため,従来のアミン化合物,酸クロリド化合物の構造を見直し,新規分子構造導入による細孔径・数制御,精密界面重合によるひだ均一構造制御によって,従来の逆浸透膜と比較し,透水量2 倍,分離性能2 倍(イオン透過率半減)を達成した。さらに,逆浸透膜のトラブルの主要因である①膜汚染物質(ファウラント)の付着,②その汚染物質を洗浄する際に用いられる薬品に関するイオン除去性能の低下に対して,膜汚染物質の付着メカニズムを詳細解析し,汚染物質の吸着を低減させるべく,表面水和水に着目した表面高親水化/平滑化として,膜の透水性を保持しつつ,高親水性架橋ポリマーの表面積層技術の適用を行った。
 さらに,架橋芳香族ポリアミド細孔構造の分子レベルでの荷電制御により,薬品洗浄後も安定したイオン除去性能を長期にわたり保持できる分子設計を行った。このように,分子動力学計算・構造解析を駆使した選択透過メカニズムの解明による細孔構造設計と多元的形態解析による最適ひだ構造設計の指針に基づき,これまでの架橋ポリアミド構造の抜本的な見直しを行い,1)新規分子導入と精密界面重合による細孔,ひだ構造制御,2)表面高親水化/平滑化により,高性能かつ耐汚染性に優れる革新逆浸透膜の創生,その工業化を達成した。

2.本技術の実用化と社会への貢献
 本技術により得られた革新逆浸透膜は,高イオン除去,省エネ,耐汚染性,耐薬品性に優れることから,多くの原水に対応して,海水,かん水の淡水化,下廃水再利用などの水処理分野において,高水質,安価な水を提供することを可能とし,幅広く展開が行われている。 
 本技術は,2005 年に工業化を開始し,2011 年から高性能(省エネ,高除去),耐汚染性(低ファウリング,耐薬品性)などのラインナップの充実を行い,量産・拡大が進んでいる。本技術は,世界最大規模の海水淡水化,下廃水再利用プラントなどに用いられ,その累計造水能は,1900 万トン/日に達し,本技術を用いた水処理プラントでは,約7600 万人分の生活用水に相当する高品質かつ安価な水を提供している。
 さらに,オイル,ガスなどの資源エネルギー分野の環境保全技術として,随伴水処理への適用が進んでいる,また,リチウム,リンなどの有価元素を高効率に製造する膜利用有価物製造技術,バイオ化学品などを高効率に製造する膜利用バイオプロセス,環境保全・修復技術としての適用が期待される。


 本研究の成果に対して、日本化学会は、2014年、木村 将弘(東レ株式会社)、佐々木 崇夫(東レ株式会社)、中辻 宏治(東レ株式会社)、井上 岳治(東レ株式会社)、川上 智教(東レ株式会社)に化学技術賞を贈った。

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キーワード

新規分子、革新逆浸透膜の開発、水処理技術、架橋芳香族ポリアミド逆浸透膜、超純水製造、淡水化、下廃水再利用、細孔構造設計、ひだ均一構造制御、高親水性架橋ポリマー、表面積層技術、多元的形態解析、最適ひだ構造設計、環境保全技術、随伴水処理、膜利用有価物製造技術、膜利用バイオプロセス
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