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光格子時計の先駆的研究

  • 香取 秀俊香取 秀俊
 香取秀俊氏は,光格子に捕獲された原子を用いて超高精度な分光計測を可能にする光格子時計の基本概念を提案し,その実現により「秒の定義」を大幅に上回る精度を実証した.この成果は,原子物理学・量子計測分野の発展とその新たな応用の創出において卓越した貢献をすると同時に,将来の「秒の再定義」へつながる成果と期待される.
 1967 年,セシウム原子の遷移周波数により定義された国際単位系の秒の精度は,最先端の分光計測技術を取り入れつつ性能向上を続け,人類最良の時間周波数標準を与えてきた.これを凌駕する新たな分光計測技術は,秒の定義の改変を視野に入れる.
 原子の運動状態を凍結することでドップラー効果を抑制し,多数個の原子の観測により量子ノイズの寄与を低減することで,理想的な原子の分光環境が実現できる.シュタルク効果を使って定在波のレーザー電場の腹に原子を捕獲する光格子トラップは,相互作用するレーザー波長より十分狭い領域に原子を閉じ込め,ドップラー効果を抑制する(ラム・ディッケの閉じ込め効果).ところが,一般に,閉じ込めに使うシュタルク効果は分光計測に使う遷移の上下準位で異なる結果,得られる遷移周波数はシュタルクシフトし,高精度な分光計測を阻む要因になる.香取氏は,2つの準位のシュタルクシフトを同一にするレーザー波長(魔法波長)で光格子を作ることで,シュタルク効果を相殺する光格子分光を提案,実証した.さらに香取氏は,電子の全軌道角運動量が0となる2 準位に対して魔法波長の概念を適用し,この光格子に捕獲した多数個の原子の同時観測によって安定度を飛躍的に向上させる光格子時計の基本概念を発案し,自ら実証した.
 光格子時計は,従来の原子時計手法で両立しなかった高精度と高安定度を実現することから,香取氏による提案と同時に世界各国の有力機関が光格子時計の実証実験と高精度化に取り組むようになった.この中においても,香取氏は科学的先見性と実行力で当分野を牽引し,黒体輻射シフトの制御や,2 台の光格子時計の比較などを通して,理論予測された10-18台での時計の再現性を実証した.この成果は高い時間精度を要求する極限計測の地平線を一気に拡げた.その好例は,2 台の光格子時計の光ファイバリンクによる重力ポテンシャル計(高度差計)の実証であり,これらの開発の中心を担ったのが香取氏である.今後の目標の1つは光格子時計が秒の定義として採用されることであり,その実現にむけて香取氏は,実験室における安定性と精度の追求に加え,小型化・ポータブル化を目指した中空光ファイバ中での光格子時計などの研究に着手している.

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2015年、香取 秀俊(東京大学)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

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キーワード

光格子時計、秒の定義、秒の再定義、時間周波数標準、分光計測技術、シュタルク効果、光格子トラップ、光格子分光
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