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半導体レーザー励起エルビウム光ファイバ増幅器の先駆的研究と応用展開

  • 中沢 正隆中沢 正隆
 中沢正隆氏は,独創的な発想に基づいて,光通信の基幹要素である光ファイバ増幅器,超短光パルス伝送の飛躍的性能向上を実現し,光量子エレクトロニクス分野に貢献した.また,大容量光通信への道を開くことで社会に大きく貢献した.
 1989 年,中沢氏は,それまでアルゴンレーザー,色素レーザーなどにより励起されていたために実用性に乏しいと考えられていたエルビウム(Er)ドープ光ファイバ(EDFA)を,波長1.48 μmの半導体レーザーでファイバ軸方向に励起することを提案した.これにより,コンパクトでかつ増幅度が10 dB以上の低雑音光増幅器EDFA(Erbium-Doped Optical Fiber Amplifier)を世界で初めて実証した.この成果を出発点として光通信技術は大きな変革を遂げ,超高速化,長距離化,多波長化が世界中で研究され始めた.EDFAは多波長光信号の一括増幅が可能なため,波長多重化(WDM)による通信大容量化の原動力となり,今日の光通信によるグローバルネットワーク構築に大きく貢献している.
 一方,中沢氏は,ソリトンと呼ばれる超短光パルスの伝送においても顕著な成果を挙げている.ソリトンは光ファイバの非線形性が光強度に依存するため,光ファイバの損失はソリトン波を線形波に変えてしまうという欠点があり,伝送には不向きであった.同氏は,これを解決する方法として,光ファイバの損失をEDFA で補償する方法を提案し,実際にEDFA が光ソリトンを効率よく増幅することを世界で初めて示した.この成果を受けて,その後,世界各国でソリトン通信の実験・理論が急速に進展した.同氏はファイバの非線形性を活用したソリトン通信方式を展開し,毎秒1 テラビット級の時分割(TDM)高速長距離伝送の記録を樹立し,同時にその限界も明らかにした.
 また,中沢氏は超高速ファイバレーザーの分野でも大きな成果を挙げている.一般にファイバ共振器は共振器長が長くなるため,高繰り返しモード同期が困難であった.同氏は,再生高調波モード同期法を提案し,繰り返し周波数10 GHz,パルス幅1〜3 ps のパルス列を発生することに成功し,超高速ファイバレーザーの発展にも大きく貢献した.
 さらに,中沢氏が開発したEDFA 技術は,光通信技術のみならず,光信号処理,非線形光学,光センサ,光計測,光標準技術などの周辺分野にも広く普及している.
 以上のように,中沢氏の研究成果は,光ファイバ技術に革新をもたらし,情報社会を担う大容量光通信を支える大きな布石となるものであり,学術性,先駆性,波及効果,ならびに大容量光通信技術の実用化による社会への貢献のいずれの観点においてもインパクトが極めて大きい.

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2012年、中沢 正隆(東北大学)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

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