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半導体エピタキシャル結晶成長に関する先駆的研究

  • 西永 頌西永 頌
 西永頌氏は,結晶成長機構に関する深い理解に基づき,半導体結晶がエピタキシャル成長する表面において繰り広げられる微視的過程を解明し,その応用として高品質な半導体薄膜を成長するための基盤技術を確立することに貢献した.
 高品質の結晶成長技術が,現在の半導体産業を支える最も重要な基盤技術のひとつであることは周知の事実であるが,西永氏は「新しい結晶成長技術の開拓は,成長の微視的プロセスを理解することにより初めて可能となる」という理念のもと,成長表面における原子の振る舞いに関する基礎的研究を精力的に進めた.1980年代後半,分子線エピタキシャル成長(MBE)における反射高速電子線回折(RHEED)を用いた成長のその場観察手法が大きく発達し,成長中の表面構造に関する多くの情報が得られるようになった.同氏は,RHEED によるその場観察手法と,それまでに培った結晶成長の基礎過程に関する知見をもとに,成長表面における吸着原子の拡散,核形成,ステップの振る舞いといった最も重要な基本過程に対する実験と理論との詳細な比較を行い,MBE における表面の成長過程を精密にモデル化することに成功した.この成果は招待講演や基調講演として多数の国際会議で報告され,その後の結晶成長の研究に大きな影響を与えた.
 一方,やはり重要な結晶成長技術として用いられてきた液相エピタキシャル成長(LPE)に関しても,西永氏はその重要な素過程を明らかにし,さらに,その知見を元に新しい結晶成長技術を確立することに成功した.LPE では原子ステップが集合して巨大ステップが形成されるが,この巨大ステップは不純物ドーピングの不均一性などを引き起こすことが知られていた.同氏は,原子ステップが集合する過程が液相内の体積拡散と成長表面形状が連動して引き起こす形態不安定性にあることを明らかにし,その理論的モデルを構築した.これらの知見は,当時の半導体レーザー開発のためのLPE によるエピタキシャル層の高品質化に寄与した.さらに,この巨大ステップの形成を排除する手法として,1988年にマイクロチャネルエピタキシー(MCE)の概念に到達した.MCE は,基板表面に異種材料による非晶質薄膜を堆積し,そこに形成した微細な窓(マイクロチャネル)から選択的に結晶成長を行うことにより,基板が有する欠陥情報を排除して結晶成長を行う手法である.その後,MCE は巨大ステップの排除のみならず,格子不整合の大きなヘテロエピタキシーにおいて,ミスフィット転位の密度を大幅に低減するのに極めて有効であることが実証された.この選択成長を用いた転位除去の概念は,その後窒化物半導体の結晶成長技術に広く導入され,今日では窒化物半導体基板の作製方法として,産業的に広く活用されている.
 以上のように,西永氏は結晶成長の微視的プロセスを原子レベルにさかのぼって解明し,その応用技術としての道筋を与えることに大きく貢献した.学術研究と産業応用とを橋渡しする応用物理学の分野における卓越した業績である.

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2011年、西永 頌(豊橋技術科学大学)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

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