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半導体スピントロニクスにおける先駆的研究

  • 大野 英男大野 英男
 大野英男氏は世界に先駆けてⅢ-Ⅴ族化合物半導体を母体とする磁性半導体の結晶成長に成功し,強磁性の起源に関するモデルの構築,電界による磁性の制御,強磁性半導体を用いた新たな機能素子の提案と実証など独創的で先駆的な研究を行い,多くの研究者を引きつけて半導体スピントロニクスという新たな研究分野を切り拓いた.
 大野氏は1989年に宗片比呂夫氏(東工大)らと共同で,Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体InAsに磁性元素Mnを固溶度以上に添加した磁性半導体InMnAsの結晶成長に成功し,1992年にInMnAsが強磁性を示すことを明らかにした.また,1996年には強磁性半導体GaMnAsの結晶成長にも成功し,さらに2000年にはポーランドのDietl氏らと共同で強磁性半導体の強磁性の起源に関するモデルを構築した.このモデルは強磁性半導体の様々な物性の理解に貢献すると共に,強磁性半導体材料設計の指針を与え,それ以後の新たな強磁性半導体材料開発をも牽引して来た.
 このような強磁性半導体に関する基礎研究に加え,大野氏は強磁性半導体を利用した新原理素子の提案と原理実証にも取り組んで多くの成果を生み出し,応用研究をリードしてきた.2000年には強磁性半導体を用いた電界効果素子を作製し,半導体中のキャリア濃度を電界で変化させることにより,強磁性/常磁性間の磁気相転移を電気的に制御することに成功した.また,強磁性状態での磁気異方性も電界により制御できることを示し,外部磁界印加やスピン偏極電流注入よりも低消費電力で磁化反転できる可能性を示した.さらに,スピン共鳴トンネル・ダイオード,スピン発光素子,強磁性半導体電流誘起磁壁移動素子などの新たなスピントロニクス機能素子も世界に先駆けて提案・実証している.
 一方,半導体素子と金属スピントロニクス素子とを融合した新デバイスの研究領域においても,大野氏は先駆的な研究を進めている.すなわち,産総研に続き,独立に開発したCoFeB/MgO系のトンネル磁気抵抗(TMR)素子において,その組成やアニール条件を最適化することにより室温で604%,低温で1144%と世界最高の値を実証している.また,同じくCoFeB/MgO系TMR 素子において界面磁気異方性を用いて垂直磁化状態を実現するとともに,そのスピン注入磁化反転にも成功し,MRAM の高集積化手法の一つとして注目されている.
 以上のように,大野氏は磁性半導体に関する独創的で先駆的な研究により世界の研究者に学術的に大きなインパクトを与えると共に,電子のスピンを制御・活用する種々の新デバイスを考案・実証することにより,半導体を中心とするスピントロニクスの研究分野を切り拓いてきた.さらに,これらの学術的貢献に加えて,スピントロニクス素子の産業応用にも積極的に取り組んでいる.

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2011年、大野 英男(東北大学)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

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キーワード

半導体スピントロニクス、磁性半導体、強磁性半導体、電界効果素子、スピン共鳴トンネルダイオード、スピン発光素子、強磁性半導体電流誘起磁壁移動素子、トンネル磁気抵抗素子
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