1. HOME
  2. 物理関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号3127)

新機能酸化物の創製に関する先駆的研究

  • 細野 秀雄細野 秀雄
 細野秀雄氏は,透明酸化物の化学結合と電気伝導に関する深い洞察に基づいて材料探索を行い,高性能なアモルファス酸化物のトランジスタ,電気を通すセメント,新系統の高温超伝導体など応用物理学上きわめて重要な発見をもたらした.
 細野氏は1995年のアモルファス半導体国際会議で,イオン性が強い金属酸化物のn型半導体物質では,伝導帯の底が金属のs軌道からなり空間的に大きな広がりを有するため,アモルファス状態であっても結晶状態と遜色ない電子移動度が得られるとの仮説を発表した.さらに,この仮説に適した材料としてIn-Ga-Zn-Oに着目し,ポリマー基板上に室温形成した薄膜トランジスタ(TFT)において,アモルファスシリコンTFT の10倍以上の移動度が得られることを発見した.この発見に刺激されて,多くの研究者がアモルファス酸化膜TFT の研究に参加することになり,いくつかの国際会議でセッションが設けられるなどこの分野の研究が拡がっている.アモルファス酸化物TFT は,大型,フレキシブルなどの特徴を持つ次世代ディスプレイへの応用が有望であり,多くの企業で実用化に向けた開発が進んでいる.
 また,細野氏は,古くから知られたセメント化合物12CaO・7Al2O3(C12A7)のケージ構造や電子状態に着目し,還元処理や紫外線照射を行ってケージ内に包接されるアニオン種を制御することにより,C12A7が金属的挙動を示すことを発見した.この物質は,既知のエレクトライドとは全く異なり,空気中で化学的・熱的に安定であることも明らかにした.この発見の意義は,クラーク数上位を占める「ありふれた元素」から,その組み合わせと構造制御などにより既存物質と同等,あるいは革新的な機能を有する材料創製が可能であることを具体的に示したもので,希少元素・有害元素の代替や戦略的利用のための基盤技術に資する新しい材料科学体系の構築が期待できる.
 2008年に細野氏は,透明酸化物研究の延長線上で,その構成元素の一部を鉄などに置き換えた物質が26K で超伝導を示すことを発見した.「鉄イオンは大きな磁気スピンを持ち,超伝導にとっては有害である」とする常識を打ち破るこの発見は,超伝導物質探索の新たなパラダイムを拓いた.この発見に啓発されて,世界各地で類縁化合物における超伝導転移温度の記録更新や新結晶構造の報告が相次いだ.異方性が小さくかつ臨界磁場が高いことから,この材料系は超伝導線材への応用が有望である.
 以上のように,細野氏の研究成果は,独自の材料設計指針を基盤として,従前は誰も注目していなかった材料系の特徴と本質を見抜き,新機能創製を世界で初めて実現したものであり,学術的な独創性,先駆性,波及効果ならびに企業における実用化の何れの観点においてもインパクトが極めて大きい.

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2010年、細野 秀雄(東京工業大学)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

物理
(物理)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

2010
東北新幹線が全線開業する。
2010
上海万博が開催される。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

新機能酸化物、透明酸化物、アモルファス酸化物TFT、高温超伝導体、薄膜トランジスタ、セメント化合物、C12A7、エレクトライド
Page Top