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SiC半導体・デバイスの先駆的研究

  • 松波 弘之松波 弘之
 シリコンカーバイド(SiC)は、Siに比べて、禁制帯幅が2~3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍という優れた物性を持つ化合物半導体であり、特に高耐圧デバイスの分野で、SiやGaAsを用いた既存デバイスの性能を桁違いに向上させる可能性を秘めている。
 しかしながら、高品質結晶の成長やデバイス作製が非常に困難であり、長年、電子デバイス応用は著しく遅れていた。松波弘之氏は、半導体SiCの重要性を1960年代後半から認識し、一貫してこの材料・デバイスの研究を進め、常に世界を先導して実用的な半導体材料に育て上げた。
 SiCは複雑な周期構造に起因して現れる結晶多形現象を示すため、単一の結晶多形からなる高品質単結晶の作製は不可能とされていた。氏は1986年、SiC {0001} 面に適度なオフ角を導入することによって原子レベルで結晶成長を制御する方法を考案し、初めて結晶多形混在のない高品質SiCエピタキシャル単結晶の作製に成功した。この方法によって、SiC半導体材料・デバイス応用に関する研究が世界的に広がり、開発が一挙に加速された。この独創的なステップ制御エピタキシャル成長技術は、日本発の国際的な先導研究として、世界的に広く認知されている。
 氏は、この成長方法を用いて広範囲にわたるp型、n型の導電性制御法を確立するとともに、結晶成長機構を学術的に解明した。また、この高品質結晶を用いて、多くのSiC固有の物性を明らかにした。さらに、氏は1993~1995年にかけて金属/SiC界面の研究を進めて、高耐圧・高速・低損失のSiCショットキーダイオードを試作し、Siの理論限界を二桁突破するデバイスが実現できることを世界で初めて実証した。この成果を基にして高耐圧・高速のSiCショットキーダイオードやSiC MESFETが製品化されている。また、氏はSiO2/SiC MOS界面の研究にも取り組み、1999年には、SiCの新しい結晶面方位 (1120) を用いることによって、MOSFETの性能を約20倍向上させ、高性能SiCパワーMOSFET実現への基礎を築いた。
 SiCは高効率電力変換用デバイスや高周波パワーデバイスへの応用が強く期待されている。エネルギーの有効利用、環境負荷の低減につながるだけでなく、低損失・高速パワー半導体デバイスを基にしたパワーエレクトロニクスのパラダイムシフトが期待されている。全く未開拓であった材料の作製から取り組み、常に前人未到の道を歩み続け、SiCを実用的な半導体に育てた氏の業績は卓越している。

 本研究の成果に対して、応用物理学会は、2003年、松波 弘之(独立行政法人科学技術振興機構)に応用物理学会業績賞(研究業績)を贈った。

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キーワード

SiC半導体、シリコンカーバイド、化合物半導体、高耐圧デバイス、結晶多角、結晶成長、高品質SiCエピタキシャル単結晶、SiCショトキーダイオード、SiCパワーMOSFET
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