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皿ばねとブレーキ技術を用いた高性能摩擦ダンパーの開発と展開

5-03

写真1 

佐野 剛志
鈴井 康正
野村 潤
内海 良和

 我が国の耐震設計法は、頻度の多い中地震に対して建築物はほとんど無損傷、極めて稀に遭遇する大地震に対して建築物の損傷は許容し、人身を護るために建物崩壊を防ぐことを基本の考え方として、被害地震の教訓を踏まえながら発展してきた。しかし、ひとたび都市を最大級の地震動が襲うと、損傷は建物全体に及び、損傷の調査や復旧に多くの時間が必要なこと、損傷が特定の箇所に集中すると建築物の倒壊に至ることもあり、従来の耐震設計の考え方だけでは十分でないと国内外の多くの専門家が考えるようになった。
 1980年代になると、地震時に建築物の自重を支える柱や梁などの主要構造部材を損傷させるのではなく、これらの損傷は最小限にとどめて、地震エネルギーは計画的に配置した変形性能の高い制振部材に吸収させる、いわゆる損傷制御構造の研究が本格化した。制振部材の開発は、1980年代から1990年代にかけて、鋼材ダンパー、粘弾性ダンパー、オイルダンパーなどを主流に精力的に推し進められ、近年では、制振部材を採用した損傷制御構造が、新築や制振改修として数多くの建築物に適用され実用化されている。
 多くの制振構造に関する研究はその構面内の挙動に注目して行われることが多いが、実際の地震時には上下階の梁は構面外方向にも相対的に変位する。制振構造の信頼性向上のために、これらも考慮した実際に近い現象に注目すべきである。本技術にもこの共通課題があるが、面内の速度や変位、温度などに対する制振性能の変動が小さく、力学モデルが明解なバイリニア型で表現できる摩擦ダンパーに着目した素晴らしい技術である。
 本ダンパーでは、皿ばねを高力ボルトの座金として用い、皿ばねの高さを高精度で計測する独自手法を採用したことで精度の高い軸力管理を行っている。この手法と自動車などのブレーキ技術を応用した品質の安定した摩擦材とを組み合わせたことで、これまでにない安定した摩擦力を発揮するダンパーを実現している。また、ダンパーの作動速度や、多数回繰り返し作動した場合などに対する性能の変動が極めて小さく、低層建築物から超高層建築物に至るまで、揺れ方の異なる広範な周期の建築物に数多く適用されている。
 本ダンパーは、現場での組立が可能な標準的な摩擦ユニットを組み合わせる技術として開発されており、必要な摩擦力に応じた摩擦ユニットをブレースや間柱を用いて組み込むことや、粘弾性ダンパーなどの他ダンパーと組み合わせることも可能で、要求性能に応じた多様な高性能摩擦ダンパーの構築を可能とするものである。
 本技術開発の成果は、新築制振建築物、制振改修建築物、大屋根構造および橋梁などの地震時エネルギー吸収部材としてすでに50件以上の適用実績があり、これからの建築への新たな価値の創造のみならず、インフラの整備などへのさらなる展開も期待できる。

 本研究の成果に対して、日本建築学会は、2015年、佐野 剛志((株)大林組技術研究所構造技術研究部上席研究員)、鈴井 康正((株)大林組技術研究所構造技術研究部主任研究員)、野村  潤((株)大林組建築本部特殊工法部上級主席技師)、内海 良和((株)大林組建築本部特殊工法部担当課長)に日本建築学会賞(技術)を贈った。

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地震防災対策、高性能摩擦ダンパー、耐震設計法、損傷制御構造
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