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高臨場感を生んだハイビジョン画面効果の研究

  • 写真なし畑田 豊彦
  • 写真なし坂田 晴夫
  • 写真なし日下 秀夫
観察画角による主観的座標軸誘導効果

図1 観察画角による主観的座標軸誘導効果

現行テレビとハイビジョンの方式比較

表1 現行テレビとハイビジョンの方式比較

 HDTV(High Definition Television, 日本ではハイビジョンと呼称)の研究が世田谷・砧のNHK放送技術研究所で本格的に始まったのは、東京オリンピック(1964年)が終わった頃のことである。

 当初ハイビジョンが目標としたのは、
 1)現行テレビの走査線525本を2倍以上にした、きめ細かな高精細度映像
 2)より近くで、出来るだけ広い視野の画面を見ることの出来る高臨場感映像
であり、特に見る側、人間の眼や耳の感覚・知覚特性に整合したシステムを目指した。

 この計画に沿って1980年の前後数年にわたり「臨場感効果を得る視覚とHDTVの整合条件」の研究が進められた。この研究から、テレビの画面を横方向に大きくして広い視野で映像を見たとき、画面内の映像から受ける心理的な感覚・知覚量が大きくなって表示された映像空間に引っぱられるような効果、即ち臨場感効果が得られることが明らかになった。

 この研究では先ず、直径1.7mの半球の内側を使った視野180度のスクリーンに視野の角度を徐々に広げながら風景のスライドを投影して、この映像を観た被験者が受ける感覚の変化を客観的に捉えることから始まった。実験では、少し傾けて投影したスライド映像を被験者に見せた後、暗転した中で被験者は自らの体軸が垂直だと思う方向にスリット指標の傾きを合わせる。すると、最初に提示したスライドの視野を広げるに従って被験者の体軸は、画面の映像の空間座標に引っ張られて傾く現象のあることがわかった。

 即ち、画面の左右両端を見込む視野角が20度を超えると次第に映像の空間に主観的な座標が誘導されるようになり、前述のように映像の空間に入ったような感覚、つまり臨場感の効果を心理物理量として捉えることができた。(図1.(文献1& 2)ハイビジョンではこの効果が顕著になる視野角30度を、望ましい観視条件としている。

 一方、画面の縦横比は3:5付近がもっとも好まれることが別のグループの実験で明らかになった(文献3& 4)。その後、映画の縦横比も考慮に加えてハイビジョンの縦横比は9:16 に国際統一された。

 縦横比が決まると、画面両端を見込む視角がちょうど30度になるための画面までの視距離は、画面の高さの3.3倍として求められる。

 次に走査線数である。標準観視条件下で画素構造ないしは走査線構造が見えないことが時条件になる(文献5)。一方、視距離(画面までの距離)から画素又は走査線間隔を見込む角度が視力の分解能(視力1.0の人で1/60度)以下になっていることが人間側からの条件になる。この条件から、視角30度、視距離を画面の高さの3.3倍とすると画面上の所要有効走査線数は1040本ほどになる。以上から現在のハイビジョン方式パラメータは、表1のように設定されている。

 

 ハイビジョンの特長を、視覚によってもたらされる心理効果の面から振りかえって記述した。大きな画面で映像を見ると、画面中の映像空間から受ける感覚が大きくなり、それだけ大きな臨場感効果.が得られる。この結果は今日、高臨場感ハイビジョンと呼ばれる一つの根拠になっている。

 さて、ハイビジョンは、視力1.0 の人が画面の高さのおおよそ三倍強の距離から見るように設定されている。ですからシニアの方や普段眼鏡をかけている方は、自分が部屋で座る位置も勘案しながら、画面との距離にピントの合った眼鏡を用意されてご覧になることをお勧めしたい。きっとハイビジョンの映像に改めて感動することでしょう。

 本研究の成果に対して、映像情報メディア学会は、1979年、畑田 豊彦(NHK)、坂田 晴夫(NHK)、日下 秀夫(NHK)に丹羽高柳賞論文賞を贈った。

文献

[1] 畑田豊彦、坂田晴夫、日下秀夫、画面サイズによる方向感覚誘導効果 ―大画面による臨場感の基礎実験―、1979年、テレビ誌,Vol.33,5,pp.407-413
[2] Toyohiko Hatada, Haruo Sakata and Hideo Kusaka、Psychophysical Analysis of the “Sensation of Reality” Induced by a Visual Wide-Field Display、1981年、SMPTE Journal,Vol. 89, pp.560-569(Aug.,1980)
[3] 大谷、藤尾、浜崎、1976年、NHK技術研究 Vol.24, 4, pp.1-9 1976年
[4] 三橋哲雄、畑田豊彦、1982年、テレビ誌、Vol.36,pp.873-881(1982.10)
[5] 西沢、1961年、テレビジョン学会 視覚情報研究会資料 1961-1

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キーワード

HDTV、ハイビジョン、画面効果、高精細度、高臨場感、ハイビジョン、放送方式、高臨場感システム
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