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放送用PCMビデオテープレコーダの実用化研究

試作されたPCM-VTRの外観。左側がディジタル回路系を内蔵したラック、右側がテープ走行系。

図1 試作されたPCM-VTRの外観。左側がディジタル回路系を内蔵したラック、右側がテープ走行系。

試作PCM-VTRの主な諸元。右欄は、比較のために示したCフォーマットの1インチ放送用VTRの諸元。

表1 試作PCM-VTRの主な諸元。右欄は、比較のために示したCフォーマットの1インチ放送用VTRの諸元。

 映像信号をディジタル化して処理・記録・伝送する“ディジタルテレビジョン”の実現には、番組制作や送出で中心的役割を果たす放送局内のビデオテープレコーダ(VTR)のディジタル化が欠かせない。1975年ごろの放送用カラーVTRは、性能や運用性、特にダビングによる画質劣化が最大の難点であった。

 これを解消するためNHK技術研究所の記録技術研究グループは調査研究の結果、「アナログVTRでも、時間的ゆらぎ(ジッタ)のない理想の画像が再生できる」「ディジタルでダビングすれば、ダビングによる画質劣化は生じない」「高密度記録が実現できれば、アナログVTRと同程度のテープ使用量で高画質再生ができる」という結論に達した。

 そしてディジタル記録のためのディジタル信号処理法(PCM技術)については、当時の電電公社の通信技術研究所で進んでいたPCM伝送技術に着目した。

 ディジタル記録では、ディジタル信号として記録された記録符号の復号、その際に生じる符号誤りを訂正するための「誤り訂正符号」を考慮しなければならない。アナログVTRはS/Nの低下と再生波形のひずみが再生画質を劣化させるが、ディジタル記録の場合は、特にテープ表面の不均一、ゴミや傷によって生じるドロップアウト、テープとの接触圧変化による再生信号の振幅値と波形形状変化などが、復号時の符号誤りの要因になる。

 これらのうちドロップアウトがバースト状符号誤りとなり、かつ符号誤りの主要因なので、バースト誤りに強い特殊な誤り訂正符号が必要であった。最適な誤り訂正符号を構成するには、ドロップアウト長の分布や集中度の検討が必要となったが、PCM伝送用符号誤り測定器は市販品に適切なものがなかったので、磁気記録に適した「符号誤り測定器」を独自に試作した。

 磁気シートPCM記録再生実験装置による一連の検討結果を踏まえて1979年、斜め走査形VTRを用いて世界初の回転ヘッド形PCM-VTRを実現した。これによりテープ消費量を当時の1インチ放送用アナログVTRと同程度に抑えることが可能になった。

 こうして得られたディジタル記録の基礎技術は、のちに普及した家庭用ディジタルムービやDVDの実現に貢献している。これらの技術開発に対して1983年、電子通信学会は論文賞を贈った。


文献

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PCM Video recording Using Rotating Magnetic
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ディジタル記録技術、PCM-VTR、パーシャルレスポンス方式、符号誤り訂正技術、未飽和NRZ記録、ディジタル制御技術、コアー損失補償、センダスト積層ヘッド、スペース損失、符号誤り測定器
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