1. HOME
  2. 電気・情報関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号236)

神経回路網の学習能力をATM網に適用

学習型ATM呼受付制御の構成例

図1 学習型ATM呼受付制御の構成例

 非同期転送モード(ATM)網は、同一の回線で多くの通信が行うための多重化伝送方式の一つである。送受信データは53バイトのパケット(ATMセル)に分割され、音声通話からテレビ電話、計算機間のデータ通信まで多様な通信を並行して転送できる。ただ、音声や映像を送るリアルタイム通信では、パケット転送遅延やパケット廃棄率といった通信品質の劣化を防ぐためのトラヒック(情報の流れ)制御が難題であった。データを圧縮・伸張するソフト(コーデック)によって必要な通信帯域が異なり、また通信の利用状況に応じて必要帯域が変化するからである。

 そこに登場したのが、ATM網のトラヒック制御にニューラルネット(神経回路網)を利用するアイデアであった。ネットワーク運用中にトラヒック量と通信品質の観測結果をデータベースに蓄え、これを用いてニューラルネットに品質を推定する関数を学習させ、トラヒック制御を行おうというものだ。入力と出力の関係が未知でも、ニューラルネットの学習能力を利用すれば、入力と出力の正解事例から近似関数が得られるので、トラヒックに関する予備知識がなくてもトラヒック制御が可能になる。たとえ入力と出力の関係が変化していったとしても、使い続けられるのも強みだ。

 ニューラルネットのモデルのうち「3層パーセプトロン」が用いられ、学習アルゴリズムとしては「バックプロパゲーション法」が採用された。特に工夫が必要だったのは学習用データベースの構成である。

  ニューラルネットの学習は、さまざまな入力例に対する正解出力値をセットで多数用意しておき、これをランダムに選んで学習させるのだが、正しい制御で通信品質が良好に保たれると、通信品質の悪い状況のデータがだんだん観測されなくなっていく。これでは品質のよい状態のデータに偏ってしまい、品質の悪い状況に対する推定精度が低下する。

 そこで学習データの記憶スペースを2分して、品質の良かった場合と悪かった場合のデータの保存領域を別々に設けた。こうすれば品質の悪い状況のデータが、どんどん観測される品質の良い状況のデータで上書きされることはない。

  また、トラヒック状況は通常はゆっくりと変化するため、データを連続的に保存していくと、学習データが最近のトラヒック状況に偏ってしまう。そこで新たな観測データは、データベースのランダムな行を選択して、そこに上書きする方法(リーキーパターンテーブル法)を採用した。

 以上のようなATM網技術の研究開発に対して1990年、電子通信学会は論文賞を贈った。


文献

[1] 平松淳、神経回路網を用いたATM網の学習制御方式の検討、1989年、電子情報通信学会論文誌B-I、Vol.J72-B-I、No.7
[2] 平松淳、柳谷雅之、神経回路網を用いたATM多元呼接続制御方式の検討、1989年、信学技報告、SSE89-71、1989-09
[3] Atsushi Hiramatsu、ATM Communications Network Control by Neural Networks、1990年、EEE Transactions on Neural Networks, Vol.1, No.1
[4] 平松淳、神経回路網を用いたATM呼受付判定制御とリンク容量割当制御の統合、1990年、信学技報、SSE90-44、1990-07
[5] Atsushi Hiramatsu、Integration of ATM Call Admission Control and Link Capacity Control by Distributed Neural Networks、1991年、IEEE Journal on Selected Areas in Communications, Vol.9, No. 7
[6] 平松淳、仮想出力バッファ法を用いた学習型ATM呼受付制御方式、1993年、信学技報、SSE93-43、1993-09
[7] Atsushi Hiramatsu、Training Techniques for Neural Netowrk Applications in ATM、1995年、IEEE Communications Magazine, October 1995

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1990
大学センター試験が始まる。
1990
東西ドイツが統一される。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

データなし
Page Top