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繊維強化プラスチック歯車形工具による微小モジュール小形歯車の高精度・高効率・低環境負荷仕上げ加工技術の開発

小形ギヤードモータ

図1 小形ギヤードモータ

GFRP歯車形工具の例

図2 GFRP歯車形工具の例

GFRP歯車形工具による小形歯車端部の2次バリ除去加工の例

図3 GFRP歯車形工具による小形歯車端部の2次バリ除去加工の例

ライン導入されている自社製作小形歯車仕上げ加工装置

図4 ライン導入されている自社製作小形歯車仕上げ加工装置

1.概要

 近年,小形ギヤードモータ(図1)は,病院やオフィスなどのような静かな環境で,さらに人のすぐ近くに設置される医療機器や事務機器などに使用されてきている.このような分野で使用される小形ギヤードモータには高い強度と静音性が強く求められている.弊社では,この要求に対応するため高強度かつ静音化を実現したVシリーズという商品名の小形ギヤードモータを開発した.しかし,静音化のために必要となる高い歯車精度を従来の歯車加工技術で得ることが非常に困難であり,静音性の高いギヤードモータの実現に向けた課題となった.この課題を解決するため,独創的な発想により開発した繊維強化プラスチック歯車形工具と歯車仕上げ加工装置による高精度な小形歯車仕上げ加工技術を構築した.本技術によって高品位な小形歯車の高効率な量産が可能になり,これを組み込んだ小形ギヤードモータは,業界トップクラスの静音性能を達成した.また,歯車仕上げ加工装置を小形化・低コスト化するとともに近年急務となっている環境負荷の低減,作業環境の快適化を実現した.

2.技術の内容

 小形ギヤードモータの高い静音性を実現するために耳障りな音の原因を追究した結果,歯車の歯面形状精度だけではなく,微細な2次バリやこれまで小形歯車では音への影響が小さいと考えられていた表面粗さなどの歯面性状の向上が必要であることが判った.そのために歯車の仕上げ加工技術が不可欠となった.従来,表面硬化された歯車を仕上げる工具としては,砥粒を結合した砥石があった.しかし,在来砥石では使用可能な砥粒の大きさに下限があり,小形歯車に適用するには工具製作や強度の面で問題があった.この問題を解決するために小形歯車に適した工具材料の研究をした結果,ガラスやアルミナなどの繊維から構成された繊維強化プラスチック(FRP)を工具に用いることを考案し,FRP歯車形工具を開発した.FRPは,ガラス,アルミナなどの強化繊維がエポキシ樹脂で結合された高い強度の複合材料である.また,繊維の硬度が高いために先端が工具切れ刃としての機能を有することから,小形歯車用の工具材料に適していると考えた.ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)とアルミナ繊維強化プラスチック(ALFRP)を用いた工具を開発した.図2は,作成したGFRP歯車形工具の例を示す.図3は,GFRP歯車形工具により,小形歯車端部に生じた2次バリの除去加工した例を示す.このように従来の仕上げ加工技術では困難であった2次バリなどを除去することが可能となった.

 このFRP歯車形工具を適用した歯車仕上げ加工装置では,被加工歯車とFRP歯車形工具を平行にかみ合わせ,一方の歯車をその軸方向に振動させながら回転させる.被加工歯車と歯車形工具には,回転方向と軸方向の摺動が同時に生じ,これにより,仕上げ加工がなされる.加工装置は自社で開発・製作しており,市販の歯車仕上げ装置と比較して大幅な省スペース化と低コスト化を実現している.

 この加工技術は現在,図4に示すように歯車製造ラインに導入されており,製造工程での歯車部品の不良低減や高品位で高効率な量産に貢献している.さらに,在来の砥粒砥石を用いた研削加工では,多量の加工液を必要としたが,FRP歯車形工具を使用した場合は,歯車を1個加工する際に毎分0.2ml(5~6滴)の加工液でも加工が可能である.このように環境負荷の低減やオイルミストが発生しない作業環境の実現にも貢献している.

3.まとめ

 本加工技術を含めた総合的な静音化技術により,測定距離1mで30dB(A)以下という小形ギヤードモータが完成し,BOS(Basis Of Silence)対応Vシリーズ(現KⅡシリーズ)の量産化に成功した.これにより,医療用機器などの分野の要求に対応することができ,国内や海外の病院や医療機関などで使用されている.

 高齢化社会の進む今後,自立支援機器などへの適用も視野に入れて,さらなる高強度と静粛性に優れた小形ギヤードモータを開発することで貢献をしていきたい.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2014年、藤澤孔裕(オリエンタルモーター(株))、小森雅晴(京都大学)、大塚衛(オリエンタルモーター(株))、川上修(同左)、美尾竜太朗(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 藤澤孔裕、小森雅晴、「ガラス繊維強化プラスチック歯車形工具のオシレーションによる小形歯車のバリ打痕除去法」、日本機械学会論文集C編、Vol.77, No.778, pp.2553-2565, 2011.
[2] 藤澤孔裕、小森雅晴、「アルミナ繊維強化プラスチック歯車形工具による表面硬化小形歯車の打痕除去法」、日本機械学会論文集C編、Vol.77, No.783, pp.4254-4262, 2011.
[3] 藤澤孔裕、小森雅晴、「ガラス繊維強化プラスチック歯車形工具による小形はすば歯車のバリ打痕除去法」、2013年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp.257-258, 2013.

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