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豚もも部位自動除骨ロボットの開発

豚もも部位自動除骨ロボット(全体)

図1 豚もも部位自動除骨ロボット(全体)

豚もも部位自動除骨ロボット(筋入れ部)

図2 豚もも部位自動除骨ロボット(筋入れ部)

カットツール

図3 カットツール

軌道修正動作

図4 軌道修正動作

1.概要

 豚もも部位は,軟らかく,形態が一様ではなく,個体差が大きい「不定形柔軟体」であるため,これから大腿骨・下腿骨を取り除く処理(除骨)を行う作業工程は,身体的な柔軟性や熟練した技能,状況判断が必要とされる職人技であり,その難易度の高さため自動化が遅れていた.

 ロボットにより複雑な三次元形状である上に処理中に位置や関節の屈曲・ねじれが時々刻々と変化していく骨に沿って正確に切るために,人の手首の柔軟性を模した機構を備えたカットツールを開発し,これをハンドに装着することで,ナイフの位置を反射的に微調整できるようにした.さらに,不定形柔軟体としての特性を利用した把持,位置固定と状態の認識を行うことにより,人の作業に近い高品質かつ高速なロボットによる自動除骨を実現した.

2.技術の内容

 豚もも部位自動除骨ロボット(図12)は,豚もも部位から大腿骨・下腿骨を取り除く除骨処理を自動で行うロボットである.500本/時間のもも部位を処理する能力がある.

 処理の流れは,まずコンベア上に流れてくる豚もも部位をロボットアームで拾い上げて連続搬送系の処理工程に投入する.投入後に,X線画像を撮影・処理することにより,内部の骨形状認識や右脚・左脚の判別を行う.計測された情報に基づいて個々のもも部位に合わせたカットラインを生成し,骨形状に沿ってナイフで切り込みを入れる「筋入れ」を行う.筋入れ後のもも部位は段階的に骨から肉をはがし,要所で筋を切ることで,骨と肉を完全に分離する.

 「筋入れ」工程を正確に行うために,X線画像を基に軌道生成を行い,垂直6軸アームロボットにより筋入れ動作を行わせた.しかしながら,ロボットが計画軌道の通りに動作をしても,対象物(骨)の位置や形態が時々刻々と変化してしまうため,適切な位置に筋入れを行うことができない.また,骨に対して刃の角度が立ちすぎるとナイフが骨に食い込んでしまうリスクもある.

 リスクを回避しながら,高速かつ正確に骨に沿って切るために,垂直6軸ロボットの先端フランジとナイフの間に自由度を二つ設けた.自由度の一つは,ナイフ側面に対して垂直方向へナイフを平行移動する軸である.バネでナイフを両側から押してセンタリングする構造になっており,計画軌道に対する骨の太さ方向へのずれに対してナイフを追随させる効果がある.また,バネの押付け具合でカットの力加減も表現できる.もう一つの自由度は,骨に引っ掛かりにくい角度にナイフを振れるようにするものである.ナイフ刃面よりも揺動軸をナイフ進行方向にオフセットした位置とすることで,回転中心が刃面よりも先行するので,ナイフの角度が常に回転中心の方向を向くようになり,骨に引っ掛かる前にナイフの角度を逃がすことができる.(図34

 人の手首の柔軟性と同様の機械的なコンプライアンス機能を有することで,反射動作による軌道修正が可能となり,高速での不定形柔軟体の処理を実現した.

3.まとめ

 本開発ロボットは,商品名「HAMDAS-R」として欧州を中心に導入されており,重労働からの解放と作業者確保難,定着率低下の問題解決に貢献している.

 「HAMDAS-R」の実現は,世界的にも類がなく,食品加工工程を端緒とする不定形柔軟体を対象とした職人技の自動化に新たな可能性を示した.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2014年、豊嶋勝美((株)前川製作所)、海野達哉(同左)、松本浩輔(同左)、後藤修(同左)、木村憲一郎(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

食肉自動処理ロボット、不定形柔軟体、自動化、省人化、衛生
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