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運動性能と環境性能を両立する新型自動変速機「SKYACTIV-Drive」の開発

SKYACTIV-Drive技術コンセプト

図1 SKYACTIV-Drive技術コンセプト

フルレンジダイレクトドライブ

図2 フルレンジダイレクトドライブ

ロックアップ領域

図3 ロックアップ領域

メカトロニクスモジュール

図4 メカトロニクスモジュール

1.概要

 近年,ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車を搭載した自動車が登場し,自動車の性能は,エンジン,トランスミッション,ボディなどの「ベース技術」と,電気デバイスとの総合力で語られる時代となってきた.これに対してマツダは,一部の環境対応車に大きく依存することなく,すべてのお客様に「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」をお届けする取組みを行っている.効果的にCO2・燃料消費量を削減するアプローチとして,新型オートマチックトランスミッション「SKYACTIV-Drive」を開発したSUVのCX-5およびセダン・ワゴンのアテンザ,アクセラなど主要車種に搭載する事により,スムーズで力強い発進,ダイレクト感による走る歓びの体現,クラストップレベルのCO2低排出,低燃費を実現した.

2.技術の内容

 SKYACIV-Driveの開発では,その使命を実現するために図1に示すコンセプトを掲げ,ゼロベースで実現可能にする方法を考えた.車両全体からトランスミッションのロスエネルギーを分析した結果,トルクコンバーターのロスが大きいことに着目し,走行中の滑りを無くすフルレンジロックアップを実現する事を目標とした.走行中のロックアップ領域を拡大するためには,こもり音や加減速ショックが障害となる.従って,これらをいかに解消するかという課題に挑戦した.本課題をブレークスルーするキーイネーブラが図2のフルレンジダイレクトドライブである.キー技術として,1)ダンパーによる振動抑制,2)ロックアップクラッチの耐久性の向上,3)トーラス小型化の開発を行った.ロックアップ時の振動抑止のため,ダンパーを従来比46%低剛性化することで,振動減衰性能の大幅な改善を実現した.これに加えて,クラッチの劣化に伴うジャダーを防止する必要がある.そこで,クラッチの冷却機能を高めるため,世界初となる片張りセグメントタイプの湿式多板クラッチを採用し,冷却能力は従来比約50%の改善に成功した.さらに全長短縮が厳しいトランスミッションパッケージに収めるためにトルクコンバーターの使用領域を発進時に限定し,内部のオイル流れを最適化する事で小型化に成功した.結果として,図3に示すように,JC08モード走行中のロックアップ領域は従来比49%⇒82%と飛躍的に拡大した.これら環境性能に加えて運動性能を飛躍的に高めるためには,変速応答性とショックを高次元で両立させる必要があり,高応答・高精度の制御が必要である.ATの油圧精度は多数の機械部品や電子部品が影響する.そこで,これまで個別管理されていた油圧回路と電子部品を一体化した図4のメカトロニクスモジュールの開発を行った.出力特性をコンピュータに記録する事により,クラッチ油圧のバラツキを1/5に抑制する事に成功した.本技術の導入により,従来トランスミッション比4~7%の燃費改善を可能とすると共に,ダイレクト感,ベストインクラスの変速応答性を実現した.

3.まとめ

 SKYACTIV-Driveは主力車種に順次展開を行っており,世界中のお客様に優れた「運動性能」と「環境性能」をお届けしている.弊社従来AT車種数%のMTが主たる市場においても,AT比率が約30%と伸びており,本技術がもたらすCO2削減への貢献に,確かな手応えを得ている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2014年、土井淳一(マツダ(株))、鎌田真也(同左)、丸末敏久(同左)、坂時存(同左)、三谷明弘(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 黒川和司ほか、「ドライブトレイン技術開発の現状と展望」、自動車技術、Vol.65, No.9, pp.11-16, 2011.
[2] 土井淳一ほか、「SKYACTIV-DRIVEの開発」、マツダ技報、No.30, pp.19-23, 2012.
[3] 宮本崇史ほか、「SKYACTIV T/Mユニット同時開発に対するギヤノイズ解析の適用」、動力伝達系の最新技術、pp.1-6, 2012.
[4] 田中和宏ほか、「新型自動変速機のNVH性能と燃費・走りの両立」、自動車技術、Vol.67, No.7, pp.66-71, 2013.
[5] 工藤健士ほか、「モデルベースによるSKYACTIV-DRIVEのNVH開発」、マツダ技報、No.31, pp.60-66, 2013.
[6] 清岡毅ほか、「SKYACTIV-Driveを支えたモデルベース開発」、動力伝達系の最新技術、pp.1-5, 2014.
[7] 岩下典生、前田一仁、「自動変速機用トルクコンバータの技術動向」、トライボロジスト、Vol.59, No.11, pp.687-693, 2014.

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キーワード

新型トランスミッション、ロックアップ、ダンパー剛性、こもり音、フルレンジダイレクトドライブ、メカトロニクスモジュール、変速応答性、モデルベース制御、燃費改善、抵抗低減
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