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生涯自律補償可能なディーゼル噴射系システム開発

i-ARTインジェクタとシステム概念図

図1 i-ARTインジェクタとシステム概念図

インジェクタ内の圧力波形(上:処理前,下:処理後)

図2 インジェクタ内の圧力波形(上:処理前,下:処理後)

パイロット噴射数違いでの熱発生率の比較

図3 パイロット噴射数違いでの熱発生率の比較

1.概要

 近年新興国では,環境性能向上のための排気規制強化と多種燃料対応が求められている.ディーゼルエンジンではこれらの両立が大きな課題となっている.そこで,エンジンの噴射系システムからこの課題に対応すべく次世代コモンレールシステムとして,生涯自律補償可能な噴射系システム,即ちi-ART(Intelligent Accuracy Refinement Technology)システムを開発し,ブラジル向けIMV(Innovative International MultipurposeVehicle)ディーゼルエンジン(KD型)に採用した.このエンジンではi-ARTシステムを活用した様々な技術を投入することで,ブラジルで強化される排気規制に対応すると共に,燃料性状により課題となる燃焼悪化と燃焼音の変化に対応することができた.

2.技術の内容

 従来のシステムでは,燃焼や回転変動といった間接的な手段でしか噴射量を検出できず,『インジェクタの特性を“直接”検出できない』という課題があった.その点に着目して本システムでは,インジェクタに燃料圧力センサを内蔵し,直接圧力変化を計測することを特徴としている.図1に示すように,インジェクタ内部に取り付けられた圧力センサから圧力値を高速でサンプリングして,ECUに入力された情報を噴射ごとに高速演算処理し,実際に噴射された燃料の噴射量・噴射時期を逐次計算している.得られた信号を学習して次回以降の噴射で補正値として用いることで,自律補償可能なシステムを構築した.

 実際に得られた圧力波形を図2上に示す.正確に噴射量・噴射時期を推定するために無噴射気筒の情報を使って前処理を実施し,フィルタにてノイズ成分を取り除いた後に噴射率を算出する.噴射率を5つのパラメータで表現して台形を形成(モデル化)し,面積を求めると噴射量を算出することができるという構成である(図2下).

 i-ARTシステムではインジェクタがエンジンに装着された直後から生涯に渡り噴射量・噴射時期を学習する.この特性を活用して2つの新技術を採用できた.噴射による脈動を高精度で補正できることから,従来の2段パイロット噴射を3段パイロット噴射にすることができた.図3に示すように,3段パイロット噴射により予熱効果が向上し,低圧縮比化(圧縮比17.9から15.0)を実現させNOxとPMを低減できた.また,噴射量精度が向上したことでセタン価検出制御も可能となった.i-ARTシステムで正確に検出した微小噴射の燃焼変化(回転変動)を見ることでセタン価を推定し,補正することでセタン価が変化しても安定した燃焼を実現でき,燃焼音の変化を少なくした.

3.まとめ

 i-ARTシステムを採用したエンジンを排気規制と多種燃料性状対応の必要なブラジル向けIMVへ採用し,より高精度な噴射システムの活用と低圧縮比化による燃焼改善により低NOxと低PMを実現した.また,セタン価検出制御を導入することで幅広い燃料性状へも対応できた.さらに低圧縮比化,エンジンの適合改良とi-ARTシステムによる噴射量・噴射時期精度改良合わせて従来に比べて5%の燃費向上を実現することができた.複合効果ではあるが,i-ARTを基本とした応用技術から得られた効果と言える.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2013年、宮浦猛(トヨタ自動車(株))、森川淳(同左)、伊藤嘉康(同左)、石塚康治((株)デンソー)、立木豊盛(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 宮浦猛、森川淳、伊藤嘉康、立木豊盛、石塚康治、「自律補償可能な噴射系システム(i-ARTシステム)を用いたディーゼルエンジン開発」、トヨタテクニカルレビュー、Vol.59, No.229, pp.115-119, 2013.

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キーワード

圧力センサ内蔵インジェクタ、ディーゼルエンジン、コモンレール、セタン価、低圧縮比
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