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走る歓びと環境性能を両立する新世代クリーンディーゼルエンジン(2.2L)の開発—超低圧縮比14.0コンセプトの実現—

SKYACTIV-D技術コンセプト

図1 SKYACTIV-D技術コンセプト

低圧縮比化を可能にした着火性改善技術

図2 低圧縮比化を可能にした着火性改善技術

燃焼圧低下による部品軽量化と機械抵抗低減

図3 燃焼圧低下による部品軽量化と機械抵抗低減

エッグシェイプ燃焼室コンセプトとCFD解析結果

図4 エッグシェイプ燃焼室コンセプトとCFD解析結果

1.概要

 近年,ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車によるCO2削減が話題であるが,2030年時点でもほとんどの自動車が内燃機関を搭載すると考えられ,内燃機関の効率向上は過去にも増して重要な課題となっている.これに対してマツダではガソリン,ディーゼルの両面から理想の内燃機関を目指す取組みを始めており,この度,自動車用量産ディーゼルで世界一の低圧縮比14.0と高効率過給をブレークスルー技術とした新世代ディーゼルSKYACTIV-D(2.2L)を開発した.SUVのCX-5およびセダン・ワゴンのアテンザに搭載して,伸びやかな加速による走る歓びの体現,クラストップレベルの低燃費,およびNOx触媒無しで最新の排気規制に適合するクリーン排気を実現した.

2.技術の内容

 内燃機関の中でも効率の高いディーゼルであるが,従来はNOxやPMなどの排気制約のために理想の燃焼時期・期間の実現が難しいという問題(ディーゼルノック音もこの問題に含まれる),高い燃焼圧力に耐えるための頑丈な構造が機械抵抗を大きくしてしまう問題,加えて厳しい排気規制への適合のためにNOx触媒を用いた場合のコスト増加の問題などがあり,国内のディーゼル乗用車シェアは低迷していた.これらの問題をブレークスルーするため,図1に示した超低圧縮比14.0(欧州向け従来モデルは16.3)と高効率過給を組合せたSKYACTIV-D技術コンセプトに取り組んだ.

 低圧縮比化の課題である冷間での着火性は,図2のように小型ターボによる極低負荷域からの過給,排気バルブ2度開きによる筒内温度上昇,および少量多段燃料噴射制御による局所リッチ混合気の形成などにより,着火遅れを従来モデル並みに短縮させて解決した.低圧縮比化により図3のように出力を維持したまま燃焼最高圧力を下げることが可能になり,回転系部品の軽量・低剛性化による機械抵抗の大幅低減を達成した.低圧縮比のもとモデルベースで着火遅れを予測して着火時期を制御することで,理想的な燃焼時期・期間とクリーン排気を両立させる予混合型燃焼を実用化した.また高負荷域の拡散型燃焼では,図4のように噴霧計測との整合で高精度化したCFD解析を用いて運動量のロスを抑えて強い縦渦を形成させるエッグシェイプ燃焼室を考案し,燃焼期間短縮とクリーン排気を両立させた.これらの燃焼改善技術により高価なNOx触媒無しで国内ポスト新長期/欧州EU6排気規制に適合させ,かつHEVを含めてもクラストップレベルの燃費(欧州向け従来モデル比で15~20%の燃費低減)を達成した.更に小型・大型ターボを組合せたワイドレンジ過給と,軽量化した回転系部品により高回転まで回りきる伸びやかな加速で走る歓びを体現した.以上のような技術コンセプトの実現により,SKYACTIV-D搭載車は欧州のみならず国内市場でも高い商品競合力を得ることができた.

3.まとめ

 理想の内燃機関へのアプローチから生まれた,ディーゼルの既成概念をくつがえす超低圧縮比14.0と高効率過給を組合せた独創的技術コンセプトにより,走り,燃費,排気,およびコストの高次元でのバランスを実現した.販売開始から1年余り,欧州のみならず国内市場からも大変な好評をいただいており,ディーゼル乗用車の本格普及がもたらす高い熱効率と国内軽油消費促進によるCO2削減への貢献に,確かな手応えを得ている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2013年、人見光夫(マツダ(株))、中井英二(同左)、寺沢保幸(同左)、高松宏志(同左)、志茂大輔(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 人見光夫、「内燃機関の将来展望」、第21回内燃機関シンポジウム講演論文集、pp.1-23, 2010.
[2] 中井英二、「新型ディーゼルエンジンSKYACTIV-D 2.2Lの開発」、自動車技術会シンポジウムテキスト、No.15-11, pp.12-38, 2012.
[3] 旗生篤宏、丹羽靖、丸尾幸治、出口博明、寺沢保幸、「乗用車用新世代クリーンディーゼルエンジン」、自動車技術会論文集、Vol.44, No.1, pp.27-32, 2013.
[4] 金尚奎、福田大介、志茂大輔、片岡一司、「ディーゼル機関における燃焼室形状の改良による排気低減 ―EGG燃焼室コンセプトの検証―」、第21回内燃機関シンポジウム講演論文集、pp.135-140, 2010.
[5] 志茂大輔、角田良枝、金尚奎、丸山慶士、橋本孝芳、林原寛、鐵野雅之、「予混合型ディーゼル燃焼による排気と燃費の低減(第3報)― モデルベース着火時期制御と多段噴射によるロバスト性の改善 ―」、自動車技術会論文集、Vol.44, No.6, pp.1335-1340, 2013.

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