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50%の省エネルギを実施した革新的な情報通信用空調機器の開発

本空調機の運転状態

図1 本空調機の運転状態

外気温度に対する空調機の特性

図2 外気温度に対する空調機の特性

各サイクルの省エネルギ効果(札幌)

図3 各サイクルの省エネルギ効果(札幌)

1.概要

 近年,情報通信装置を収容するデータセンタは,消費エネルギが増加する傾向にある.床面積あたりの消費エネルギが,一般的なオフィスビルに比べ20倍以上のデータセンタも見られる.中でも,情報通信装置を冷却する空調機の消費エネルギは,データセンタ全体の30~50%を占めており,データセンタ空調の省エネルギ化が強く求められている.

 空調機の省エネルギの取り組みは,従来より行われているが,圧縮サイクルの効率向上だけでは,データセンタ空調の消費エネルギを半減させることは困難である.

 そこで,圧縮サイクルの改善に加え,外気冷熱を有効利用するフリークーリングサイクルを併用したこれまでにない先進的な空調機を開発した.フリークーリングサイクルとは,圧縮機の代わりに,圧縮機より消費エネルギが小さい冷媒ポンプにて冷媒を循環させる熱搬送技術である.

 これまで,フリークーリングサイクルの実用化には,冷媒ポンプに沸点に近い温度の冷媒を吸入させることによる,冷媒ポンプ内部でのキャビテーションの発生が障害であった.本開発では,キャビテーションの発生を抑制する熱搬送技術の開発と,キャビテーションを回避する制御手法を確立し,フリークーリングサイクルの実用化に至った.

2.技術の内容

 本空調機は,外気温度が高い時期は圧縮サイクル,外気温度が低い時期はフリークーリングサイクルと,サイクルを自動で切替えながら運転する(図1).外気温度が低い時期に冷媒ポンプによるフリークーリングサイクルで運転することで,総合COPは大きく向上する(図2).年間消費エネルギでは,気象データを用いた試算の結果,一般の情報通信用空調機に対し,札幌で約54%,東京で約42%の低減が見込める.各サイクルの省エネルギ効果について,札幌の気象データでの試算結果を図3に示す.

 以上の省エネルギを実現するにあたり,圧縮サイクルにおいては,①過圧縮防止弁,②非対称歯形スクロール,③DCインバータモータを採用した.

 過圧縮防止弁の採用により,圧縮機の中~低圧縮比域で発生する過圧縮を防止し,適正な圧縮比での圧縮機運転を可能にする.非対称歯形スクロールについては,スクロールの歯形を非対称にすることで,圧縮機の吸入部および吐出部での圧縮損失を抑制する.また,DCインバータモータの採用により,モータ損失を抑制できる.

 一方,フリークーリングサイクルにおいては,課題であるキャビテーションの発生を抑制するため,①キャビテーション耐力に優れた冷媒ポンプの開発,②キャビテーション防止制御の確立,③サイクル切替え技術の確立を行った.

 冷媒ポンプの開発では,複数の形式の冷媒ポンプについて,キャビテーションの発生特性を実機検証にて明らかにし,フリークーリングサイクルに適した冷媒ポンプの形式・形状を確立した.

 キャビテーション防止制御では,冷媒ポンプの吸入側に位置する室外送風機の回転数を,外気温度と冷媒性状により制御することで,確実に冷媒が過冷却液となる制御方法を策定した.

 サイクル切替え制御では,情報通信装置の冷却に支障を与えず,省エネルギな運用を実現する切替えロジックを考案し,実験とフィールド試験により円滑なサイクル切替え制御方法を確立した.

3.まとめ

 今回開発した「情報通信用空調機器」は,「FMACS-V hybrid」の商品名にて,2011年12月より販売を開始しており,全国に順次導入を開始している.今後さらに導入拡大を図り,情報通信用空調システムの省エネルギに貢献していきたい.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2013年、関口圭輔((株)NTTファシリティーズ)、植草常雄(同左)、宇田川陽介(同左)、内藤靖浩(日立アプライアンス(株))、齋藤潔(早稲田大学)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 植草常雄、柳正秀、君島真仁、河合素直、「間接外気冷房機能を付加した年間冷房型パッケージ空調機の効率向上に関する研究」、日本機械学会論文集、B編67巻660号、pp.229-236, 2001.
[2] K. Sekiguchi, S. Waragai, T. Uekusa, K. Yamasaki, "Development of a High-efficiency Air Cooled Packaged Air-Conditioner for Data Centers", ASHRAE Transactions, Vol.116, Part1, OR-10-036, 2010.
[3] 関口圭輔、柳正秀、「データセンタ向け外気冷房型空冷パッケージ空調機の開発」、日本機械学会論文集、B編78巻789号、pp.126-130, 2012.
[4] Y. Udagawa, K. Sekiguchi, M. Yanagi, T. Uekusa, Y. Naito, "Development of an Outdoor Air Cooling-Type Air-Cooled Package Air Conditioner for Data Centers", ASHRAE Transactions, Vol.119, Part1, pp.167-175, 2013.
[5] 宇田川陽介、関口圭輔、柳正秀、齊藤潔、大野慶祐、「情報通信装置向けフリークーリング併用型ハイブリッド空調システムに関する研究 第1報:高精度数理モデルの構築と静特性解析」、日本冷凍空調学会論文集、Vol.31, No.2, pp.157-168, 2014.

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