1. HOME
  2. 機械関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号2014)

安全・快適に人と共存できる低出力80W省エネロボット

ロボットの全体構成

図1 ロボットの全体構成

ロボット昇降軸詳細

図2 ロボット昇降軸詳細

力センサレス柔軟制御

図3 力センサレス柔軟制御

1.概要

 自動車の組立工程は,人が主役の労働集約型の工程であるが,重量物の搬送や搭載にはロボットが使われている.しかし,可搬重量20kgを超えるようなロボットは,キロワットクラスのモータを使用し,出力が高いため人とロボットを隔離する必要があり,その結果広大なスペースを必要とした.そこで,今回開発したロボットでは,ロボットの自重をロボットの姿勢に関わらず常に一定にバランスさせるバネを用いた一定自重補償機構を用いることで,本質安全の動力源の基準とされる80W以下の低出力モータを用い,可搬重量25kgを実現した.また,ロボットのどこに人が接触しても検知し,柔軟に制御する技術を開発する事により,安全性を向上させた.これによりロボットと協働作業する人の安心感を高めることで,安全・安心・快適に人と共存できる低出力80W省エネロボットを実現した.

2.技術の内容

 従来の一定自重補償機構は,ベルトやワイヤ,プーリーを用いており,最終組立工程の設備重量130[kg]では,破断や摩耗の恐れがあった.また,全軸に自重補償機構を組み込んでいるため,複雑で信頼性やコストが問題であった.そこで,ワイヤを用いずシンプルで耐久性の高い方式を実現した.

 今回開発したロボットの全体構成を図1に示す.バネを用いた一定自重補償機構と80[W]モータを組み合せる低出力ハイブリッド駆動機構を,スペアタイヤ自動搭載ロボットとして実用化した.構成のシンプル化を図るため,昇降軸のみに自重補償機構を組み込み,スカラロボットとは異なり,昇降軸は根元に設けている.また,図2に示すように昇降軸を平行リンク機構とすることで,手先が昇降の動きで傾かないようにした.これにより,手先の水平回転2軸,3軸,ピッチ回転軸がどのような姿勢をとっても,水平回転軸に重力モーメントがかからないため,定格80[W]以下のモータで全軸を構成することが出来た.以上によりシンプルで耐久性の高い自重補償機構となっている.

 全軸定格80[W]以下のモータで構成することで,労働安全衛生法や労働安全衛生規則により産業ロボットに求められる人との隔離原則の適用からは除外される.しかし,安全性をさらに向上させ,協働作業する時の人の安心感も高めるため,付加保護方策として力センサレス柔軟制御を開発した.

 外力は,アームの動力学モデルに基づいて,駆動軸のモータ負荷電流から推定したトルクと,各軸の角速度,角加速度から推定している.根元の駆動軸トルクを用いるため,アームのどこが当っても外力を検出でき,視覚センサや力センサを使用した際に発生する死角をなくすことが出来る.また,サーボアンプがもともと持っている負荷電流計測機能を用いているので,新たなセンサが不要である.さらにこの推定外力をインピーダンス制御に用いることで,ロボットと人が接触した場合でも,人への接触力を70[N]以下に抑えてロボットを停止させることが可能となった.(図3)また,インピーダンス制御における仮想動力学特性として,所定の速度で動く仮想ベルトコンベアの特性を用いることで,衝突・はさまれ時の位置偏差による過大な反力が発生しないように制御している点が特徴である.以上により,安全に止まり,安全に動き出す柔軟制御を実現した.

3.まとめ

 今回開発したロボットは,トヨタ自動車高岡工場にてスペアタイヤ自動搭載ロボットとして導入され,累計約20万台の車両への自動搭載を行い,現在も稼働中である.低出力駆動化および柔軟制御化により,他に実例の無い「人とロボットの協働化」を実現することで,生産ラインへのロボット適用領域の拡大に大きく貢献可能であり,安心・快適に人が働ける生産環境を作り出すことが期待できる.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2012年、藤原弘俊(トヨタ自動車(株))、村山英之(同左)、武居直行(首都大学東京)、中野陽雄((株)オチアイネクサス)、石居賢治(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] 村山、藤原、中野、石居、武居、森田、法林、藤本、「80Wモータによる25kg可搬省エネロボットの実用化」、第28回日本ロボット学会学術講演会講演論文集、RSJ2010AC3J1-1, 2010.
[2] 村山、藤原、「人と協働する自動車組立ロボットの安全技術」、日本ロボット学会誌、Vol.29, No.9, pp.783-785, 2011.
[3] 藤原、村山、武居、中野、石居、「安全・快適に人と共存できる低出力80W省エネロボット」、日本機械学会誌、Vol.115, No.1122, p.275, 2012.
[4] 日本機械学会、「先端事例から学ぶ機械工学(増訂版)」、第8編, 2013.

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

かしこくやさしい機械(生体・知能・情報)
(ロボティクス・メカトロニクス)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

データなし

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

人共存ロボット、安全、省エネ
Page Top