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ウェアラブル光トポグラフィ技術の開発

 光トポグラフィは、近赤外光を用いて脳活動に伴う大脳皮質の血液動態変化を画像化する技術である。脳神経外科の検査や精神科診断補助の検査に使われている。一方、脳科学の発展に伴い、様々な分野で脳科学を取り入れたいというニーズも高まっている。従来装置は、約100 kgの筐体と被験者頭部の間が光ファイバで接続されていたため、計測環境は実験室や病棟などに限定されていた。本技術開発では、光源/検出器を内蔵した計測用キャップと、計測制御/データ蓄積を行う携帯ボックスからなる重量約1kgで携帯可能な小型装置を実現した。

 装置の小型化と感度確保を両立するために時分割ロックイン法を開発した。マルチチャネル計測による脳活動分布の画像化のためには計測信号のチャネル分離が必要であるが、光源を順次点灯してチャネルを時分割分離をすることにより駆動系回路を共有化して回路規模の縮小を行うとともに、順次点灯期間に各光源をさらに振幅変調しロックイン検波することにより計測感度を向上した。本開発では、脳の司令塔である前頭前野の計測を行うために22計測点で前額部をカバーした。更にPCによる無線制御により複数人同時計測を世界で初めて実現した。これは、脳機能計測を身近なものとするだけでなく、コミュニケーションなど脳と脳の相互作用の解明に貢献する画期的な開発である。
 
 ウェアラブル光トポグラフィ技術は、車内や機内、屋外などでも計測が可能となり、脳機能計測の適用範囲を大きく広げるものである。また、初めて搭載された複数人同時計測機能は、多人数データを収集する際の計測スループットを向上し、計測コストを低減できる。これまで、脳活動計測をマーケティング調査に利用する二ユーロマーケティングには機能的MRIが用いられてきたが、本技術は、装置コストのみならず、時間を含む計測コストで有利である。更に、複数人同時計測により、人と人の関わりや社会性などを脳科学的に解明するといった、これまで無かった新しい研究分野を切り拓く可能性がある。このように本技術は、脳機能計測を身近なもとのし、特に非医療分野において広く利用されることが期待される。本技術は2010年4月に製品発表がなされ、7月より非医療機器として販売開始した。

 本研究の成果に対して、電気学会は、2011年、敦森 洋和 (株式会社 日立製作所)、木口 雅史 (株式会社 日立製作所)、米倉 孝洋(株式会社 日立国際電気エンジニアリング)に電気学術振興賞 進歩賞を贈った。

文献

[1] H.Atsumori, M. Kiguchi, et al., 「Development of a Multi-channel Portable Optical Topography System」, Engineering in Medicine and Biology Society, EMBS 2007, 29th Annual International Conference of the IEEE, pp. 3362-3364. 2007.
[2] H.Atsumori, M. Kiguchi, et al., 「Development of wearable optical topography system for mapping the prefrontal cortex activation」, Review of Scientific Instruments, Vol.80, No.4, p.043704, 2009.
[3] H.Atsumori, M. Kiguchi, et al., 「Noninvasive imaging of prefrontal activation during attention-demanding tasks performed while walking using a wearable optical topography system」, Journal of biomedical optics, Vol.15, No.4, pp. 046002-046002-7, 2010.
[4] 木口雅史、特開2008-278903、「生体計測装置」、公開特許公報、2008年.
[5] 木口雅史、特開2009-45281、「生体光計測用頭部装着式ホルダ」、公開特許公報、2009年.

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