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省エネルギー形エアコンの開発

当社エアコンの年間電気代と定格COP推移(年間電気代は(社)日本冷凍空調工業会の統一基準に基づく算出値)

図1 当社エアコンの年間電気代と定格COP推移(年間電気代は(社)日本冷凍空調工業会の統一基準に基づく算出値)

製品外観(1995年モデル:RAS-251GD/GAD)

図2 製品外観(1995年モデル:RAS-251GD/GAD)

ロータ構造の比較

図3 ロータ構造の比較

室内ユニット(1995年モデル:RAS-251GD)

図4 室内ユニット(1995年モデル:RAS-251GD)

1.概要

 近年家庭用消費電力の増加は著しいが,その中でもエアコンの需要は普及率の増加に伴い約20%と1位を占めている.また部屋別の普及率はまだ30%にすぎず今後未設置の部屋への普及が進んでいくと考えられる.このような環境下で,エアコンの省エネ技術開発に注力し1993年10月に従来のエアコンと比較して電気代が約半分となる省エネルギー形エアコンを開発し市場で大きな反響を呼んだ.このエアコンはデジタル制御で駆動するプラシレス直流モータをコンプレッサに搭載したほか,熱交換器,送風機の改良を行い,さらに自動運転時に快適評価指数(PMV)を一定に保ちむだな暖めすぎ,冷やしすぎを抑える制御を採用したもので快適性を向上させながら消費電力を低減している.翌1994,1995年にも,引き続きコンプレッサ,熱交換器,送風機等を改良し省エネ性をいっそう高め年間電気代を2年連続して5000円低減するとともに,遺伝的アルゴリズム(GA)制御を家電製品で初めて採用し非定常時の応答性と定常時の安定性の両立を実現し,省エネバンガード21において3年連続表彰を受けている.

 1995年モデル(電気上手なエアコン:RAS-251GD/GADシリーズ)では年間電気代27900円,冷房定格時のCOP4.39,暖房定格時のCOP4.65および暖房低温時の能力4.0kWと業界トップの性能を実現するとともに除湿機並の効率を有し室温低下のない新しい除湿方式を開発採用して省エネ年間空調をめざしている.

2.省エネ技術

 2・1 DCコンプレッサとデジタル駆動技術  薄板電磁綱板積層構造のブラシレス直流モータ搭載DCコンプレッサを開発した.このモータは,一般に採用されているロータ外皮をステンレス缶容器で覆う構造と比較し高調波磁束により生ずる渦電流損失を大きく低減し効率を向上している.さらに1994年モデルからは永久磁石の配置を逆円弧形にし磁石内部の粒子配向をラジアル異方性として磁束を固定子巻線の通電区間に集中させて効率を向上している.

 DCコンプレッサを駆動するインバータは,モータのロータ位置を検出して通電を切り換えステータの作る磁界を回転させる必要があり,ロータの回転に伴い巻線に生ずる誘起電圧からロータの位置検出を行っているが,巻線端子電圧をフィルタを通さず直接検出しリアルタイムで高速デジタル処理する方式を開発した.この結果コンプレッサモータの駆動に当たり常に最適な通電進み角を与えたり,通電切り替え時の巻線残留電流を電源側に逆流させない等の省電力制御を可能とし,インバータを含めたコンプレッサの総合効率を約20%向上させることができた.特に従来の交流モータに比べ,広い回転数領域で効率を向上できているので,エアコンの実使用上運転頻度の高い低回転数域での大幅な省エネルギーが図れている.

 2・2 室内熱交換器  室内機用熱交換器には新形スリットフィン熱交換器を開発した.1994年モデルには同熱交換器を前面側は略円弧状に折り曲げ成形するとともに背面側にも配置する業界初の多段(6段)曲げ熱交換器を開発した.コンパクトな筐(しょう)体内に大きな表面積を持つ熱交換器を配置し室内送風機を製品中央に位置させ送風性能を向上できるため,熱伝達総合効率は25%向上している.さらに1995年モデルではあらかじめ円弧状にプレス成形される円弧熱交換器を開発し,折曲部のすき間をなくしパイプピッチを最適配置することで熱交換率を14%向上させた.この熱交換器の背面には小形の過冷却熱交換器を配置し新除湿運転用および冷房・暖房運転時の熱交換性能向上に用いている.

 2・3 制御(PMV一定制御)  エアコンの室温制御には従来の室温一定制御に代わり,快適性一定制御(PMV制御)を採用しむだな暖めすぎ,冷やしすぎを抑えている.PMV(Predicted Mean Vote)はISOに規定されている人間の温熱環境に対する快適度を六つの要因(温度,湿度,ふく射,気流,着衣量,活動量)から表す快適性評価指標であり,一般的には±0.5の範囲が快適領域とされている.例えば暖房運転時に同じ室温コントロールをしていても外気温の高い時は室内の壁温度が上昇するのでふく射により暑くなりすぎる場合が生じる.逆に同じ室温でも外気温が低く壁温度が低い場合には肌寒さを感じる.そこでエアコンが検出できる室温,湿度,外気温度,風量,吹き出し角度,能力,運転時間等から計算したPMV値を一定に保つように設定温度を補正する制御を開発した.この制御により実運転での頻度の多い外気5°C以上で暖めすぎを防止し,従来の制御に対し年問を通じ約20%の省エネ効果を得ることができた.

3.新除湿機能

 従来のエアコンの除湿運転は,冷房運転時と同一冷凍サイクルでコンプレッサを低速回転し微風運転して室内熱交換器(蒸発器)全面で熱交換させて除湿する方式である.しかしながら蒸発器の温度を低くできないので除湿量が小さい,吹き出し空気が冷たく肌寒く室温低下が生ずるなどの問題点があった.室温低下を抑えるためにヒータを搭載した機種もあったが除湿不足と室温低下による不快感は解消されずヒータ分消費電力が増加する問題があった.1995年モデルでは室内機の除湿用熱交換器のみを低温に冷却するよう室外機の電子膨張弁によりサイクル制御するとともに,吹き出し空気を室内機前面にショートサーキットさせる除湿方式を開発した.除湿用熱交換器のみを冷却するため全体の冷却能力(顕熱と潜熱)を抑えながら,除湿能力(潜熱)の増加が可能となり,消費電力100W程度で除湿機並の除湿効率を有し顕熱による室温低下も生じず冷風のドラフトを感じない無意識空調を実現できた.

4.まとめ

 以上の技術開発に加え,室外熱交換器,室内室外送風機の改良等により3年間継続してエアコン省電力化を推進してきたほか,快適性と省エネ性を兼ね備えた新除湿機能を開発し年間を通じて省エネ空調を行うことが可能となった.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1996年、本郷一郎((株)東芝)、平原茂利夫(同左)、守田慶一(同左)、二見俊彦(同左)、長倉進(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

エアコン、省エネ技術、効率向上、DCコンプレッサ、デジタル駆動技術、快適性一定制御、快適評価指数、除湿能力
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