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深穴を高能率であけるツイストドリル

ドリルの断面形状とポイント形状

図1 ドリルの断面形状とポイント形状

切りくず形状

図2 切りくず形状

穴あけの進行に伴う逃げ面摩耗幅の変化(ドリル直径:10mm,切削速度:16m/min,送り速度:0.3mm/rev,被削材:黒皮除去S50C,被削材厚:60mm)

図3 穴あけの進行に伴う逃げ面摩耗幅の変化(ドリル直径:10mm,切削速度:16m/min,送り速度:0.3mm/rev,被削材:黒皮除去S50C,被削材厚:60mm)

ドリルの摩耗形態(ドリル直径:10mm,切削速度:16m/min,送り速度:0.3mm/rev,被削材:黒皮付S50C)

図4 ドリルの摩耗形態(ドリル直径:10mm,切削速度:16m/min,送り速度:0.3mm/rev,被削材:黒皮付S50C)

1.概要

 切削加工の中で穴あけ加工は大きな比重を占めており,この穴あけ加工に現在最も多く用いられている工具はツイストドリルである.この工具は使いやすい工具ではあるが加工能率,加工精度などの点で多くの間題をかかえている.これらの問題はドリルの剛性が低いこと,のみ刃での切削状態が悪いこと,切りくずの排出性が悪いことが大きな原因となっている.従来形のツイストドリルによる穴あけは,切りくずが穴壁から拘束を受けない場合には良好な切削状態と言えるが,この状態の切りくずは円すいらせん形であり,そのまま溝に納まる形状ではない.したがって,連続送りで穴あけを行うと切りくずは穴壁から拘束を受け,ある程度深穴になると切りくず形状は遷移折断形になり,切りくずの排出が悪くなって,ドリルが折損する場合が多い.切りくずの排出改善には,切れ刃にニックを付けると良好との報告があるが,深穴に対する適用結果の報告はなく,また油穴付きドリルは有効であるが,専用の給油装置が必要である.通常深穴加工では切りくず詰まりを避けるため,ステップフィードが採用される.ステップフィードを採用すればドリルの折損といったトラブルは避けられるが,加工能率は悪くなる.本ドリルは溝形状と切れ刃形状によって切りくずの生成と流出を制御して,深穴を連続高送りで,すなわち高能率で加工できるようにしたものである.また長寿命である.

2.技術の内容

 2・1 ドリル形状  図1に本ドリルの断面形状とポイント形状を示す.心厚は先端で従来形ドリルの3.3倍あり剛性が高い.平面研磨法により逃げ面と中心部のすくい面(すくい角0)を研削している.先端が完全なポイント形状になっている点はスリーレーキ研削法と同じであるが,第2主切れ刃をシンニングではなく,第2主逃げ面と中心部のすくい面を一体に成形し,第1,第2両主切れ刃の交差角を約60°と大きくし,別々の切れ刃の性格を与えている.先端角は130°(従来形では118°)である.

 2・2 切りくず排出状態  図2にS50C圧延材を直径20mmの高速度鋼ドリルで深穴加工(切削速度:16m/min,送り:0.6mm/rev)した時の切りくずを示す.最初円すいらせん形で,続いて折断形が生じることは従来形のドリルの場合と同じであるが,本ドリルの場合そのまま穴あけを続けると直径の7倍程度の深さで長ピッチ形に変化する.この長ピッチ形切りくずは第1主切れ刃から生じる主切りくず(切削体積の3/4)に対し,中心部の第2主切れ刃から生じる切りくず(切削体積の1/4)が片側(加工穴の中心側)に不連続にくっついており,ピッチが溝のピッチと同じなので溝に沿って滑り上がり,チャックなどに当たって折れる.折断形切りくずは溝面に1列に並んだ状態で順次押出される.このように切りくずは詰まることなく排出されるため連続送りで深穴加工ができる.またこのような切りくずの排出状態では切りくずと溝壁面のすきまが大きいので,切削液は外部給油でドリル先端の切削部まで供給される.試作した長いドリルでは次の結果を得ている.直径12mm超硬合金M20種チップろう付けドリルで265mm(切削速度:45m/min,送り:0.26mm/rev,エンドミル切削溝),直径10mm高速度鋼ドリルで150mm(切削速度:16m/min,送り:0.3mm/rev,研削溝)の深穴を連続送りで穴あけ,いずれも溝が加工穴に埋没のため送りを停止.

 2・3 ドリル寿命  図3は黒皮を除いたS50C圧延材に直径10mmの高速度鋼ドリルで60mmの貫通穴を連続してあけた際の逃げ面最大摩耗幅の変化の様子を示す.いずれも寿命に達する前に実験を打ち切っている.全穴あけ長さ80mのドリルの場合摩耗状態から寿命に近いと考えられる.これだけの長寿命となるのは摩耗形態による.図4は黒皮付きのS50C圧延材を,従来形のドリルでは32.5mm(連続送りでは65mmの穴あけ不能),本ドリルでは65mmの貫通穴を連続してあけた際のドリルの摩耗状態を示す.
図4(a)に示す従来形ドリルでは主逃げ面とマージンの摩耗が合体した形で,逃げ面外周部の摩耗幅が非常に大きくなっている.全穴あけ長さ10mであるが,この摩耗形態では切削トルクも大きく寿命に達している.図4(b)に示す本ドリルでは逃げ面の最大摩耗幅の位置は外周部ではなく少し内側になっており,マージンの摩耗は軽減されている.全穴あけ長さ17mであるが,この摩耗状態では切削トルクの増大は少なくまだ寿命ではない.

3.まとめ

 本ツイストドリルは従来形のツイストドリルに比べ心厚が先端で3.3倍あり,高剛性であるので高送りが可能で,しかも切りくずの排出性能がよいので連続送りで深穴を高能率で加工できる.

 寿命特性を調べた結果,マージンの損傷(摩耗)が従来形のドリルよりも軽減されており,寿命が格段に長くなっている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1996年、細井俊明((株)細井製作所)、細井良祐(同左)、花崎伸作(大阪大学)、長谷川嘉雄(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

ツイストドリル、油穴付きドリル、ステップフィード、シンニング、深穴加工、逃げ面摩耗
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