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700m級超高落差ポンプ水車の開発

ブルガリア・チャイラ発電所用ポンプ水車

図1 ブルガリア・チャイラ発電所用ポンプ水車

ランナに励起される振動モードの例(右側はモードを外周円筒展開した図)

図2 ランナに励起される振動モードの例(右側はモードを外周円筒展開した図)

ランナ振動特性改善例(実落差模型試験結果)

図3 ランナ振動特性改善例(実落差模型試験結果)

運転落差に対するランナ振動応力の実績

図4 運転落差に対するランナ振動応力の実績

1.概要

 電力負荷変動調整用として重要な役割を担う揚水発電所は,建設費低減のため,より高落差で運転するべく技術開発が進められている.

 この程運転が開始されたブルガリアのチャイラ発電所向けの超高落差ポンプ水車(図1参照)は,受注時はもちろん,運転に入った現在においても,世界最高の落差を誇るものであり,ポンプ運転時の最高揚程が初めて700mを超えたものである.

 1970年代に,世界に先駆けて我が国で500m級機が製作,実用化された.ところがこのクラスの機械では,従来の低落差機では問題とならなかったランナの振動応力が非常に大きくなることがあり,ちょうど本機を受注した1980年代に,これら500m級機のいくつかでランナに疲労クラックを生じ,高落差化を進める上で大きい問題となった.

 当社ではこの問題に対し,材料面の研究と並行してランナの振動応力に関する研究も進め,各種設計パラメータの影響などを解明してその低減技術を確立し,本機の設計に適用した.

 本機は,工事の延期等により予定より大幅に遅れて1994年末にようやく運転を開始したが,性能はもとより,ランナの振動応力も従来の500m級機より低いことが確認され,現在好調に運転されている.

2.技術の内容

 本機には,超高落差機としていろいろな新しい技術も採用されているが,特筆すべきものはランナの振動応力低減技術である.

 高落差ポンプ水車ランナの振動応力の実態はそれまで知られていなかったが,まずランナの実働応力を測定することによって,この振動応力がランナベーンとガイドベーン間の動静翼干渉によって生ずることが判明した.

 その後,久保田らによって,この動静翼干渉による水力加振力は回転するモードを持ち,その周波数,モードの直径節数およびその回転速度などが動翼と静翼の枚数の組合せによって決まること(1),また狭い静止部に囲まれた水中に置かれたランナは,開放的な水中にあるときよりもはるかに大きい付加質量効果を受け,モードによっては,その固有振動数は空気中の固有振動数の0.5倍以下に低下すること(2)などの重要な基本的性質が,理論的,実験的に明らかにされた.

 これらをもとに,さらに流力弾性相似則を満足するいわゆる実落差模型試験によって,模型によるランナ振動のシミュレーション実験などを重ねた結果,次のようなことが判明した(3)

 (1)動静翼干渉によって生ずる流体加振力の多くのモードの内,進行波と後退波の各モード中最小の直径節数を持つ二つのモードを組合せたモードは,図2に例を示したように,ランナベーン枚数と同数の節を持つ.

 (2)一般に,ランナは,この加振力モードと同様な形をした固有値モードを必ず持っており,このモードが上記の流体加振力により励振される.ランナは,このモードの水中固有振動数と流体加振力の周波数が一致したときに共振する.

 (3)ランナの固有振動数は,ランナ各部の形状・剛性などを変えることにより変更でき,図3に一例を示したように,これによってランナの振動応答特性を変え共振を回避することができる.

 以上のような研究結果に基づきランナの振動を低減する方法を確立し,本機の設計に適用した.

 本機は,上記のような設計の妥当性を検証するため試運転中にランナの実働応力を測定したが,図4に示すように,従来の500m級機よりも振動応力が低いことが確認された.

3.まとめ

 本機に適用した技術は,図4にも記載されているように,すでに国内の500m級のほかの発電所のポンプ水車にも適用され,振動応力低減に有効なことが実証されている.

 これらの技術および本機の実績は,現在,国内で多数計画もしくは建設されている600~800m級の超高落差揚水発電所用ポンプ水車の信頼性向上に大きく寄与するものである.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1996年、田中宏(東芝テクノコンサルティング(株))、角田佐智雄(東芝エンジニアリング(株))、山形一郎((株)東芝)、城戸均(同左)、向山裕夫(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

文献

(1)久保田・ほか,静止側の分布励振源による羽根付回転円板の振動,日本機械学会論文集,49-439,C(1983-3),307.

(2)久保田・ほか,流体中の振動円板に作用する付加質量効果,日本機械学会論文集,50-449,C(1984-1),243.

(3)Tanaka, H., Vibration Behaviour and Dynamic Stress of Runners of Very High Head Reversible Pump Turbines, Special Book, IAHR Symp., (1990-9), U2-1.

(4)Hiroshi Tanaka, "Vibration Behavior and Dynamic Stress of Runners of Very High Head Reversible Pump-turbines", International Journal of Fluid Machinery and Systems, Vol.4, No.2, pp.289-306, 2011.

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キーワード

揚水発電所、ポンプ水車、超高揚程、振動応力低減技術、動静翼干渉、流体加振力、共振、負荷質量効果
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