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NOx吸蔵還元型三元触媒付リーンバーンシステムの開発

NOx吸蔵還元型三元触媒の浄化メカニズム

図1 NOx吸蔵還元型三元触媒の浄化メカニズム

NOx浄化挙動(実機)

図2 NOx浄化挙動(実機)

10-15モード走行中のNOx浄化

図3 10-15モード走行中のNOx浄化

定常走行時の空燃比制御

図4 定常走行時の空燃比制御

リーンバーンシステム構成

図5 リーンバーンシステム構成

リーンバーン使用域の拡大

図6 リーンバーン使用域の拡大

1.概要

 リーンバーンシステムは有効な燃費向上手段であり,リーン空燃比領域での燃焼改善と精密な空燃比制御等の開発により,近年リーンバーンエンジンとして市場に導入されてきている.しかし,従来の触媒ではNOxを浄化できないため,リーン空燃比の設定が比較的軽負荷領域に限られるなど,このシステムのポテンシャルを十分に発揮しているとはいえなかった.このためリーン運転中に排出されるNOxを浄化する触媒,いわゆるリーンNOx触媒の開発が待望されていた.本システムは,新しく発見したNOx吸蔵還元機能を三元触媒に効果的に複合したNOx吸蔵還元型触媒と,この触媒の性能を効果的に引き出すエンジン制御法の開発により,リーン運転中のNOx浄化を可能にしたものである.その結果,リーン運転領域を従来より拡大し,リーンバーンによる燃費効果を倍増させた.

2.技術の内容

 2・1 NOx吸蔵還元型三元触媒  リーンNOx触媒として,かねてからゼオライト系の触媒が有力なものとして,国内外で多くの研究がされているが,浄化性能,耐久性能に問題がある.今回開発したNOx吸蔵還元型触媒は,以下の新技術により,従来の三元触媒性能はそのままに高いリーンNOx浄化性能と耐久性を実現した.①空燃比リーン時にNOxを吸蔵するバリウム系のNOx吸蔵物質,②耐熱性を確保するための多孔質コート材(担体).

 NOx吸蔵還元メカニズムを図1に示す.リーン運転時にはNOxは貴金属上で酸化され,吸蔵材と反応して硝酸塩を生成して触媒上に吸蔵される.吸蔵したNOxは理論空燃比からリッチ運転時に貴金属上で三元触媒性能により窒素に還元して浄化される.空燃比をリーンと理論空燃比に2分間隔で切換えたときの触媒前後のNOx濃度の挙動を図2に示す.

 2・2 空燃比制御法  本触媒の浄化性能を最大限に引き出すため,空燃比制御法を開発した.一つは,減速タイミングに応じて空燃比をリッチにする制御である,アイドル付近は空間速度(SV)が小さく,NOx還元率が高く,また燃料損失も小さいためである(図3).しかしながら,実走行では,リーン条件が長時間続く場合も存在する.そこで,その時点でのNOx吸蔵量と触媒が吸蔵できるNOx最大容量とを運転条件から推定して,NOx吸蔵量が最大容量付近で自動的に短時間空燃比をリッチとしてNOxを還元浄化した後,再びリーンに戻す制御ロジックを開発した.80km/h定常走行時のNOx排出特性を図4に示す.約50秒間隔で0.3秒間リッチ空燃比に制御することにより,NOxを大幅に低減している.この時の燃費悪化は0.5%以下に抑えられている.また,リッチ化を実行すると,リーンとリッチのトルク段差が生じるが,これは空燃比と点火時期の制御法の改良により軽減され,十分に許容できるレベルになった.

 2・3 システム構成  リーンバーンの手段は,独立ヘリカルポートとスワールコントロールバルブ,EFI独立噴射,燃焼圧センサである.NOx吸蔵還元型三元触媒は,NOx浄化の最適温度範囲から,車両の床下位置に搭載した(図5).

 2・4 効果  このシステムの10-15モード走行時のNOx浄化率は新品触媒で90%,耐久試験後で60%である.このNOx浄化性能により,オートマチック車のリーンバーン運転領域を図6のごとく,拡大することができ,リーンバーンによる燃費効果を4→8%(理論空燃比制御方式エンジン比)と倍増させた.また,NOx排出量の低減に伴い,排気量1.8l,等価慣性質量1.25tクラスのオートマチックトランスミッション車においても,EGRシステムなしでリーンベーンシステムを成立させることができ,システムの簡素化が図れた.

 本システムは,1994年8月から当社のカリーナに採用され,さらに1996年1月よりコロナ,カルディナに採用が拡大されている.

3.まとめ

 本システムにより,従来不可能とされてきたリーン運転領域でのNOx浄化が可能になった.このシステムによりリーンバーンエンジン採用車種が拡大でき,低燃費(CO2の削減)と低エミッションに対するニーズに応え,地球環境の維持に寄与できるものと期待される.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1996年、加藤健治(トヨタ自動車(株))、原田淳(同左)、三好直人(同左)、新庄博文((株)豊田中央研究所)、立石修士(キャタラー工業(株))に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

文献

[1] 加藤建治、木原哲郎、原田淳、井口哲、中西清、「NOx吸蔵還元型三元触媒システムの開発(1)」、自動車技術会学術講演会前刷集、Vol.946, pp.42-45, 1994.
[2] 加藤健治、木原哲郎、浅沼孝充、後藤雅人、柴垣信之、「希薄燃焼エンジン用NOx吸蔵還元型三元触媒システムの開発」、TOYOTA Technical Review, Vol.44, No.2, pp.33-35, 1994.
[3] 原田淳、渡辺治男、丹羽孝夫、「トヨタカリーナ用 7A-FE用リーンバーンエンジン」、内燃機関、Vol.34, No.426, pp.53-58, 1995.
[4] 三好直人、石橋一伸、谷澤恒幸、村本理恵美、竹島伸一、田中俊明、松本伸一、斎木基久、土井晴夫、立石修士、「希薄燃焼エンジン用NOx吸蔵還元型三元触媒(1)」、第74回触媒討論会予稿集、pp.98-99, 1994.
[5] 高橋直樹、新庄博文、山崎清、飯島朋子、鈴木正、横田幸治、鈴木宏昌、田中俊明、松本伸一、立石修士、「希薄燃焼エンジン用NOx吸蔵還元型三元触媒(2)」、第74回触媒討論会予稿集、pp.100-101, 1994.
[6] 三好直人、谷澤恒幸、竹島伸一、高橋直樹、笠原光一、「希薄エンジン用NOx吸蔵還元型三元触媒の開発」、TOYOTA Technical Review, Vol.44, No.2, pp.24-29, 1994.
[7] Satoshi Iguchi, Tetsro Kihara, Jun Harata, Toshiaki Tanaka, Kenji Katoh, "NOx Storage Reduction 3-Way Catalyst for Lean Burn System", 16th International Vienna Motor Symposium, pp.249-257, 1995.
[8] Naoto Miyoshi, Shin'ichi Matsumoto, Kenji Katoh, Toshiaki Tanaka, Jun Harada, Naoki Takahashi, Koji Yokota, Masahiro Sugiura, Kouichi Kasahara, "Development of New Concept Three-Way Catalyst for Automotive Lean-Burn Engines", SAE Paper 950809, pp.121-130, 1995.
[9] Naoki Takahashi, Hirofumi Shinjoh, Tomoko Iijima, Tadashi Suzuki, Kiyoshi Yamazaki, Koji Yokota, Hiromasa Suzuki, Naoto Miyoshi, Shin'ichi Matsumoto, Tsuneyuki Tanizawa, Toshiaki Tanaka, Syu-shi Tateishi, Kouichi Kasahara, "The new concept 3-way catalyst for automotive lean-burn Engine: NOx storage reduction catalyst", Catalysis Today, Vol.27, pp.63-69, 1996.

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