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高生産性フライング式幅サイジングプレスの開発

スラブ幅サイジングプレスの主要仕様

表1 スラブ幅サイジングプレスの主要仕様

フライング式サイジングプレスの機構

図1 フライング式サイジングプレスの機構

フライング式サイジングプレスの同期制御方法

図2 フライング式サイジングプレスの同期制御方法

1.概要

 鉄鋼製造プロセスの連続化は重要な技術開発課題である.製鋼,熱延間の同期化操業の拡大のための重要技術であるスラブ幅大圧下に関して,竪ロールによる圧延ならびにスタート・ストップ式の幅サイジングプレスが開発されているが,前者はクロップロスの増加による歩留りの問題があり,また後者はスラブ間欠送りのため,生産性の点では必ずしも十分ではない.

 今回,従来法の欠点を解決する,高生産性に適したフライング式幅サイジングプレスを世界に先駆け開発し,昭和63年6月,住友金属鹿島製鉄所熱延工場で実用化した.

 本技術は,スラブを停止すること無く連続プレスすることを特徴とし,熱延の高能率に十分対応すると共にスラブの幅大圧下を実現し,連鋳能力の向上,製鋼,熱延間の同期化拡大に寄与し,大きな経済的効果をもたらしている.さらにこの技術の有効性が認められ,海外への技術販売も成立している.

2.開発内容

 2・1 設備の基本構造  開発ステップの第一段階として熱間鋼モデル実験,剛塑性有限要素法解析などにより,材料変形,プレス負荷の基本特性を明らかにすると共に,高生産性ホットストリップミルラインに対応したプレス設備の基本構造の検討を重ね,以下に詳細に示すように,①プレス圧下-スラブ搬送方式は,フライングプレスの採用,②金型は,短尺一方向テーパ金型をそれぞれ逆向きに上下配置した構造,③座屈防止装置は,大径ロール上下一体型,がよいとの結論に至った.

 (1)プレス圧下-スラブ搬送方式

 従来のロール方式と比較して,一般にプレス方式ではその生産スピードが問題となる.現状の国内の生産ピッチは,スラブ1本当たり約60秒位であり,高速プレスが必要である.

 走間プレスの場合は,生産性が高く,高効率熱延に十分対応できるとともに,ピンチロール不要(スラブ搬送はテーブルローラおよび金型による)により,表面傷の心配もなくなる.またプレス所要時間,金型とスラブの接触時間も短いため,スラブ温度低下が少なく,金型の寿命も大きくなる等メリットは大きく,その採用を決定した.

 (2)金型の形状と構造

 モデル実験結果より,広幅スラブで,強幅圧下(約300mm以上)の場合は座屈防止の点から,リバースプレスが有効であることが判明した.また,基本的にはいかなるプレス条件の場合もできるだけ圧下軸に対して,プレス荷重による偏心荷重(偏心モーメント)が小さいことが設備上は望ましい.以上の対策として,逆向きの金型を上下配列する構造を考えた.これにより,リバースプレス時も荷重重心位置は圧下軸上に可能となり,装置本体への曲げ・ねじりモーメントは極力押えられ本体のコンパクト設計が可能となった.

 (3)座屈防止装置

 広幅スラブで,幅圧下量が300mmを超えると,スラブが幅方向に座屈しやすくなる.とくに,先後端部が大きい座屈を示すので,座屈防止押えロールが必要となる.熱間鋼モデル実験により,上下一対の大径ロール(φ800mm相当)にて,強幅圧下の場合も十分座屈防止が可能なことを確認した.この際,押えロールの長手方向設定位置に最適位置があることを明らかにした.

 2・2 実機設備の特徴

 (1)開発したフライング式水平対向高速機械プレスの主要仕様を表1,圧下・フライング機構を図1,フライング式プレスの同期制御方式を図2に示す.すなわち,このプレスは2種の偏芯軸から構成される偏芯揺動機構による機械的な搬送速度一定制御により,入側スラブ速度と金型搬送速度の同期化を実現している.

 さらに,揺動駆動と圧下駆動の電気的同期により金型圧下位置を制御し,上記金型一定搬送速度区間でのプレス圧下を実現させている.機械クランク駆動方式を採用しているため,①高速運転向き,②作動がスムーズでショックが少ない,③左右金型の対象作動が確実に行われる,④エネルギー効率が良いなどの特徴がある.プレスのサイクルは50回/min故に,1回プレス当たり1.2sの時間を要す.そのうちスラブと金型の接触時間は0.3sであり,その間スラブは一定速度で進行し,停止することはない.

 (2)従来のプレスではスラブの送りを間欠的に行う必要があるためスラブの急加減速がストロークごとに必要で大きな動力が必要となるが,フライング式プレスを採用しているので特別なスラブの送り装置を必要としない.

 (3)クロップ形状を適正化するための金型形状並びにプレス方法を検討した結果,金型傾斜角度12°が有効であり,後端クロップ対策として後端予成形又は,後段エッジャーとの組合せがよいことを確認し,クロップ最小化の技術を確立した.

 (4)金型ギャップ間のスラブ上下に大径押えロールー対を設置し,座屈の発生を防止する.またプレス後のスラブの通板に支障がないように,サーボコントロールによる待期位置制御および圧力一定制御を実施している.

 2・3 開発の成果  鹿島製鉄所熱延工場(月産36万t)に適用し,熱延の高生産性を維持しつつ,プレス適用率97%,プレス平均圧下量235mm,最大圧下量350mmの安定操業を実現しており操業成績の向上に寄与している.

 また,鹿島製鉄所での成功を基に,本技術の有効性が認められ,海外熱延ミルヘの技術販売も現在までに数件成立している.

3.結言

 熱延工場の高生産性を維持しつつ,スラブの幅大圧下を可能とする高生産型幅圧下装置の開発に取り組み,世界初のフライング式幅サイジングプレスを開発した.

 本技術は,連続鋳造機の生産能力を大幅に向上させると共に,連鋳一熱延間の同期化拡大を実現し,大きな経済的効果をもたらした.

 更に,本開発技術の有効性が認識され,海外への技術販売も進んでおり,今後,世界中の熱延工場で採用されていくものと確信している.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1995年、田添信広(石川島播磨重工業(株))、井出賢一(同左)、沖正海(住友金属工業(株))、小淵隆久(同左)、波床尚規(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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鉄鋼製造プロセス、スラブ、幅サイジングプレス、連続鋳造、フライングプレス、走間プレス
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