1. HOME
  2. 電気・情報関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号1916)

指静脈認証技術の実用化

入退管理用指静脈認証装置

図1 入退管理用指静脈認証装置

ATM用指静脈認証装置

図2 ATM用指静脈認証装置

指静脈認証の原理

図3 指静脈認証の原理

 近年の急速な情報化社会の進展に伴い、企業や自治体などで、個人データ、機密に対する管理意識が高まっている。これに伴って、指紋、虹彩、顔など、「個人固有の特徴」を用いる生体認証が、より確度の高い本人認証手段として注目されている。
 本研究は、「指静脈」という新しい生体部位に着目した本人認証技術の研究開発を進め、独創的な発明とともに実用的なシステムを実現してきた。本技術は、重要施設の入退管理や銀行ATMでの不正引き出しの防止などで既に広く利用されており、現在の安心・安全な社会づくりに欠かせない存在になっている。
 指静脈認証技術は、指内を走る幾本もの静脈が織りなすパターンが人それぞれに異なることを利用して、個人を判別する手法である。本研究では、その実現のため、まず人間には見えない皮下の静脈を安定に撮影すべく、近赤外光を適切に指に透過させて静脈を鮮明に撮影する静脈イメージング技術を考案した。波長700~1,200nmの近赤外領域の光は、生体組織をよく透過する一方、静脈を流れる血液中のヘモグロビンという物質には逆によく吸収される。この特性の違いを利用して、静脈だけが暗い線として鮮明に浮かび上がるような撮影方式を実現した。次に、撮影した静脈を血管幅や指の姿勢の変動があっても高精度に照合できるように、静脈の中心形状の特徴だけを抽出し、かつその変形も許容できる高性能パターンマッチング法を考案し、世界最高レベルの認証精度を実現し実用化した。
 更に本研究は高精度化だけにとどまらず、誰にでも容易に操作できる方式を考案した。上記の透過撮影による静脈イメージング方式は、表面のしわ等の影響を受けない鮮明なパターン取得を可能にし、高精度認証を実現する上で重要な役割を担っている。しかし、透過撮影では、光源とカメラで撮影対象物を挟み込む構造が一般的であり、そのまま適用した場合、光源が指の甲側上方を覆い隠す形となり、心理的抵抗感や不自由さがあった。そこで、まず光源を指の左右両側面に配置して、上方を開放した。指に入射した光は散乱で全方向に広がるので、横から光を入射してもカメラ側に光が届き、静脈を透過撮影できる。ただし、この光源配置では、光源に近い側ほど光が過剰となり静脈が映りにくくなるため、左右の光源を交互に明暗切り換えて2枚撮像し、光量が適正な半面ずつを組み合わせて認証に利用するようにした。これにより、透過式の高精度に加え、指一本を上からかざすだけの使いやすさも両立させた。
 以上のように、本研究の様々な先駆的開発によって、指を上からかざすだけで瞬時に本人確認ができる新世代の生体認証技術が確立した。2006年に生体認証に関する第三者評価機関である米国のIBG(International Biometric Group)が実施した精度評価試験では、認証精度の高さに加え、特に、指紋、虹彩に比べ、登録未対応率がけた違いに小さいことが実証された。このことは本技術が万人に受け入れやすいことを意味する。本技術は、特に高い安全性と多様な顧客への対応が不可欠な金融機関において、個人預金保護の切り札として採用が進み、生体認証を採用する金融機関の約8割が指静脈認証を採用し、日本の事実上の標準となっている。


 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2008年、三浦直人、長坂晃朗、宮武孝文に業績賞を贈った。

文献

[1]河野美由紀、梅村晋一郎:、「指の静脈パターンによる個人認証方法」,計測自動制御学会 パターン計測シンポジウム」,2000
[2]Kono,M, , Ueki, H., Umemura, S, “Near-infrared finger vein patterns for personal identification” ,APPLIED OPTICS,Vol.41,No.35,p.7429-7436,2002
[3]Miura,N, Nagasaka, A., Miyatake, T,“Automatic Feature Extraction from non-uniform Finger Vein Image and its Application to Personal Identification” , IAPR MVA2002, 7-4, p.252-25,2002
[4]三浦直人、長坂晃朗、宮武孝文、 「線追跡の反復試行に基づく指静脈パターンの抽出と個人認証への応用」,電子情報通信学会論文誌(D-II) ,Vol.J86-D-II, No.5,p.678-687 ,2003
[5]Miura,N, Nagasaka, A., Miyatake, T,“Feature extraction of finger-vein patterns based on repeated line tracking and its application to personal identification” , Machine Vision and Applications, No.15, p.194-203,2004
[6]Miura,N, Nagasaka, A., Miyatake, T : “Extraction of Finger-Vein Patterns Using Maximum Curvature Points in Image Profiles” , IAPR MVA2005, 8-30, p.347-350,2005
[7]宮武孝文、「静脈パターンを用いた個人認証」,光学,Vol.33, No.8,p.23-27,2004

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

2008
後期高齢者医療制度がスタートする。
2008
米投資銀行リーマン=ブラザースが経営破綻する(リーマン=ショック)。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

生体認証、指静脈、静脈イメージング方式
Page Top