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情報理論における符号構成法に関する先駆的研究

 現在の情報通信技術を支える中核的な理論体系が、情報の数学的モデル化と符号化という工学的手法を組み合わせた情報理論である。情報理論における様々な符号化問題において、ランダム符号化法などによって符号の存在が保証されているが、具体的な符号構成法が未知の場合は多い。そのような符号の代表的なものとして、1995年に植松さんは、無記憶通信路の通信路容量を達成する具体的な符合を初めて代数的に構成した。植松さんが対案した符号は、外部符号として代数幾何符号を用い、内部符号を可変符号にした連接符号であり、無記憶通信路の通信路容量よりも真に小さい伝送速度において、符号長を無限に長くしたとき指数関数的に復号誤り率が減少する。しかも提案した符号は符号長の三乗のオーダーで効率的に復号可能である。現在では、LDPC符号を用いることで、より少ない計算量の復号法でも通信路容量に漸近できることが知られているが、連接符号の信頼性関数を達成するという点と符号構成が代数演算にて行えるという点では提案法の方が優れている。
 通信路符号化に次いで1997年に植松さんは、スレピアン・ウルフ符号化問題として知られている、相関を有する複数の情報源の個別符号化/同時復号問題に、上で述べた符号構成法が応用できることを見いだし、スレピアン・ウルフ符号化に用いる具体的な固定長符号の構成に世界で初めて成功した。植松さんによる発表の翌年、DISCUS(Distributed Source Coding Using Syndromes)と呼ばれる同様な符合が米国の研究グループによって独立に提案された。これらの符号は、現在、センサネットワークにおけるセンサとセセンター間の通信やネットワーク符号化にも応用されており、多端子情報理論の実用面での発展の端緒となった。このように、植松さんが構築した符号構成法は、通信路符号化のみならず情報源符号化にも利用できる一般的なものであり、情報理論における各種符号を構成する際の指針を与えるものである。
 有限アルファベットの情報源に対して、情報源の統計的性質によらず、ブロック長が長くなるにつれて1記号あたり符号長がエントロピーに漸近する符号として、種のレンペル・ジブ符合に代表されるユニバーサル符号が知られている。2002年に植松さんは、加算無限アルファベットの場合でも、レンペル・ジブ符号を修正することでユニバーサル符号が存在するための必要十分条件を満たす情報源の集合に対して、実用的なユニバーサル符号を常に構成できることを明らかにした。これらの一連の成果は、米国の幾つかの研究グループの注目を浴び、加算無限アルファベットの情報源の符号が盛んに研究されるようになり、最終的にはアルファベットが未知の情報源の符号化問題にまで発展して、情報理論の新局面を開いた。


 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2008年、植松友彦に業績賞を贈った。

文献

1. 植松友彦、水野享、ステチャイ ノッパナキーポン: 「優れた信頼性関数を有する符号の代数的構成法と光通信への応用」, 信学論(A), J77-A, 11, pp.1537-1545 (1994-11)  (平成8年度電子情報通信学会論文賞受賞)
2. T. Uyematsu:”An algebraic construction of codes for Slepian-Wolf source networks”, IEEE Trans. Inform. Theory, vol.47, 7, pp.3082-3088 (Nov. 2001)
3. T. Uyematsu and F. Kanaya :“Asymptotic optimality of two variations of Lempel-Ziv codes for sources with countably infinite alphabet”, IEICE Trans. Fund., vol.E89-A, 10, pp.2459-2465 (Oct. 2006)

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キーワード

情報理論、連接符号化、スレピアン・ウルフ符号化問題、情報源のユニバーサル符号化、可算無限アルファベット
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