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ファジィ制御を導入した自動車用アクティブセーフティシステムの開発

本システムにおけるファジィ制御

図1 本システムにおけるファジィ制御

本システムの効果

表1 本システムの効果

道路状態の推定

図2 道路状態の推定

道路こう配の推定

図3 道路こう配の推定

路面凹凸検出方法

図4 路面凹凸検出方法

路面段差検出原理

図5 路面段差検出原理

1.はじめに

 自動車の性能がますます高性能化するなかで,快適感,満足感,一体感など,より人間の感性に合ったクルマづくりが重要視される一方で,高齢化や,交通事故の増大から,安全で扱いやすく,ドライバの判断・操作ミスを未然に防止する予防安全性の高いクルマが求められている.そのため,これまで多くの制御が車両に取り入れられてきたが,それらは,車速,アクセル開度,加速度などの車両状態の認識によるものが主体であるため,その効果が限られていた.したがって,ドライバ自身が車両を取り巻くさまざまな状況を認識し,自らの経験や知識に基づいて運転している.このため,長時間ドライブで生じる疲労や緊張から,ドライバはともすれば状況判断を誤り,運転操作ミスを犯すことにもなりかねない.

 これらの問題を解決するため,人問の感性に適合させたり,ベテランのノウハウを実現するのに有効なファジィ制御を導入し,車両状態の認識に加えて,外部環境(道路のこう配・屈曲度合,路面の滑りやすさ・凹凸等)の認識・判断,ドライバの意図の把握を多くのセンサで行い,車両の特性をその時々の状況に応じて自動的に制御して,誰もが走行環境の変化に巧みに対応できる自動車総合運動制御システムを開発した.

2.システムの概要

 本システムは,刻々と変化する車両をとりまく多くの状況(道路の上り坂や下り坂,曲がり,滑りやすさ,凹凸など)をクルマ自身がベテランドライバに成り代わって認識・判断し,状況に応じてドライバの意図通りに,車両特性を適切に制御するシステムを実現したもので(図1),次の六つのコンポーネントで構成されている.

 (1)ファジィシフト4A/T(4速オートマチックトランスミッション) 道路のこう配や曲がりぐあい,ブレーキ操作などの情報を追加して,状況に合うようシフト位置を3速,2速まで自動的に選択して,ドライバの運転を積極的にカバーし,安全で快適な走行を実現.

 (2)ファジィTCL(トラクションコントロールシステム) 平たん路,上り,下りを認識し,状況に合わせてエンジン出力の抑え方を変化させ安全走行を実現.

 (3)電子制御フルタイム4WD(4輪駆動) 道路の曲がりぐあい,滑りやすさ,凹凸,運転状況に応じて駆動力の配分を変化させ,さらに,ファジィTCLと組合せ,エンジンを含めた総合的な駆動力制御により高次元の安全性を確保.

 (4)アクティブ4WS(4輪操舵システム) 道路のこう配・曲がりぐあい,路面の滑りやすさ,ブレーキ操作などの情報を認識して,運転感覚・操作を平たん路走行の場合に近づけるよう,後輪の操舵角を自動的に調整して高い操縦性,安定性を実現.

 (5)アクテイブプレビューECS(電子制御サスペンション) プレビューセンサやサシペンションの上下動の振動分析から路面形状を認識して,サスペンション特性を調整し乗り心地を向上.
 道路のこう配情報を追加し,上りや下りでも平たん路走行の場合に近づけるよう前後輪のロール制御のタイミングを変え,操縦性,安定性を向上.

 (6)エアピュリファイヤファジィエアコン 車室内の温度変化,湿度などの情報を追加し,環境の変化に対しても安定した快適温度の実現,ガラスのくもり防止,さらに,空気清浄器による煙や花粉の除去など,快適な室内環境を実現.

3.技術の特長

 3・1 外部環境認識技術  外部環境は図2に示すように各種センサ情報を総合的・複眼的に捉えることによって,道路のこう配・屈曲度合,路面の摩擦係数・凹凸(粗さ)などの道路の状況と路面の状態を認識する.これらのうち,道路のこう配の推定を図3に,路面凹凸検出方法を図4に示す.

 3・2 プレビューセンサ  前方路面の段差を非接触で検出する超音波式プレビューセンサを開発した.図5に検出原理を示す.超音波振動子(共振周波数200kHz)は圧電セラミックを用い,送受信兼用タイプとした.信号処理用に8ビットマイコンを内蔵している.

 3・3 低コスト・高信頼性  センサ,アクチェータは従来から実績のあるものを使用して低コスト化と高信頼性を図っている.さらに,FMEA手法による解析を行い安全を配慮した設計になっている.すなわち,万一,本システムに故障が発生しても,システムを遮断してべ一ス機能にして走行機能を確保するとともに主要コンポーネントについてはインジケータを点滅させてドライバに警告する.

4.効果

 本システムの効果を表1に示す.

 一般ドライバが運転しにくい状況でもベテランドライバの経験や知識に基づいた判断をコンピュータが代行する制御によって,車室内の環境をよくし,車とドライバのコミュニケーションを高め,ドライバの心理的・肉体的負担を軽減し,さらに,ドライバのミスをカバーするなど,アクティブセーフティを一層向上させた.

5.まとめ

 自動車の運動性能を高める従来の予防安全技術に加え,ドライバの安全な運転を積極的に支援する本技術は,自動車のアクティブセーフティ技術の進歩に貢献するものと考える.なお,本システムは当社の市販車に搭載され国内外で高い評価を得ている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1994年、田中忠夫(三菱自動車工業(株))、谷正紀(同左)、馬越龍二(同左)、清水勝(同左)、谷本清治(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

ファジィ制御、プレビュー制御、4WD、4WS、アクティブセーフティ、運動制御
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