1. HOME
  2. 機械関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号1904)

超高層ビル用V字型ハイブリッドマスダンパの開発

V字形HMDの外観図

図1 V字形HMDの外観図

新宿パークタワービル外観

図2 新宿パークタワービル外観

HMDおよび建物の主要目

表1 HMDおよび建物の主要目

HMDシステム配置および建物変形モード図

図3 HMDシステム配置および建物変形モード図

建物据付時の自由振動試験結果

図4 建物据付時の自由振動試験結果

1.はじめに

 大規模な超高層ビルを対象にして,強風時や中小地震時の揺れを低減し,居住性を高める目的で,コンパクトで高性能なハイブリッドマスダンパ(HMD)を開発し,その有効性を確認した.

 本装置では,V字型形状の付加質量体がローラ上を揺動するパッシブ機構を採用することにより,装置の固有周期調整が容易でコンパクトな機構を実現することができた.この機構に電動モータによるアクティブ制御を加えたハイブリッド方式を採用することにより,従来のアクティブ方式の約1/3程度のアクチュエータ容量でほぼ同程度の制御性能を実現している.

 本装置は,このたび延床面積で我が国最大の超高層ビルとなる「新宿パークタワー(地上52階,高さ226.5m)」に適用した.付加質量体の重量110tの国内最大級の装置3台をビルの39階機械室に設置し,現地での制御効果確認試験を行った結果,目標どおりの高い性能を確認できたので,その概要を以下に述べる.

2.技術の概要

 2・1 V字形HMDの特徴  今回,超高層ビル用に開発したHMD外観図を図1に示す.本装置ではパッシブ機構に,電動モータによる制御を加えたハイブリッド方式を採用することにより,従来のアクティブ方式の約1/3程度のアクチュエータ容量でほぼ同程度の制御性能を実現している.制御力は電動モータ,減速機からラック・ピニオンの歯車機構を介して付加質量体に作用する.付加質量体の底辺形状をV字型とし,ローラ支持するだけの簡単な機構により擬似円弧運動をするパッシブな振り子機構を構成している.通常の振り子の場合には約10m程度のつり長さを必要とするのに比べて,本方式ではつり機構や機械的ばね機構を一切省略でき,長周期でありながらコンパクトな機構を実現した.またV字形レールの開き角度を可変にすることにより装置の固有周期を容易に調整できる機構となっている.異常時のフェールセーフ機構としてはメカニカルブレーキや油圧バッファ機構を備えている.

 2・2 適用建物  HMDシステムを適用した建物「新宿パークタワー」を図2に示す.この建物は,新宿中央公園南側に位置する超高層ビル〔地上52階,226.5(m)〕であり延床面積では国内最大,高さは国内3番目の規模となる.この建物は強風時にねじれを伴った短辺方向の揺れを生じることが予測されている.そこで建物上層部ホテルの居住性を向上させるために,装置を39階中間機械室に設置することとした.本建物用に開発したV字型HMDの基本諸元を表1に示す.付加質量体110tのHMD3台を設置し,付加質量体総重量/建物重量比は0.25%となっている.図3に示すように建物の短辺方向並進にねじれが連成した1次振動モードを制御するため,HMDは平面重心より偏心した部分(S棟)に配置している.建物振動検出用センサは装置を設置している39階,地震感知用センサを1階に配置している.地震,強風などによる建物揺れがある基準レベルを越えると駆動装置を起動するとともに,安全監視装置により各装置内に異常が発生すれば直ちに非常停止させるなどのインテリジェント機能を有している.

 2・3 制御効果予測解析および性能確認試験  HMDの制御則には準最適化手法を採用し,建物の水平2方向並進および捩れ変形を考慮した多自由度モデルを用いて詳細な制御効果予測解析を行った.この結果,再現期間5年の風外力に対する建物応答加速度を1/2以下に低減し,中小地震時の後揺れや,遠方地震時の長周期揺れを大幅に減衰するだけの効果が得られ,これを制御目標とした.

 装置完成後は工場での単体性能確認試験および建物据付時の制御性能確認試験を行った.建物据付時に,HMDにより建物を強制加振し,その後装置を停止した場合と制御モードに切り替えた場合の39階自由振動波形の実測値を図4に示した.同図は装置作動による高い減衰特性を示しており,上述の制御目標を十分満足できる性能を有することを確認した.そのほか装置が発生する騒音・振動は建物居住性を損なわないだけの低レベルであることを確認した.

3.まとめ

 建物に据付時の制御試験により,ほぼ目標どおりの性能が得られていることを実証した.本システムのような大規模構造物を対象にしたアクティブコントロールの実用化は海外でもほとんど例がない.今後は風や地震時での稼動データを蓄積してシステムの有効性を明らかにしていくと共に,本技術の他分野への応用展開をはかっていく所存である.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1994年、谷田宏次(石川島播磨重工業(株))、牟田口勝生(同左)、新井征夫(同左)、石井孝二(鹿島建設(株))、山田俊一(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

生活を支える機械(産業・物流・宇宙)
(産業・化学機械)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1994
松本サリン事件が起こる。
1994
自民党と社会党の連立による村山内閣が発足する。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

ハイブリッドマスダンパ、新宿パークタワー、パッシブダンパ、アクティブ制御
Page Top