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遮熱燃焼室と斜流タービン式ターボチャージャを採用した商業車用低燃費ディーゼルエンジンの開発

全負荷最少燃費率の推進(GVW20tトラック)

図1 全負荷最少燃費率の推進(GVW20tトラック)

遮熱率と燃料消費率の関係(NOx排出量一定)

図2 遮熱率と燃料消費率の関係(NOx排出量一定)

P11Cエンジンで採用した主な技術

図3 P11Cエンジンで採用した主な技術

ピストン断面図比較(D:シリンダボア径)

図4 ピストン断面図比較(D:シリンダボア径)

ターボチャージャ断面図比較

図5 ターボチャージャ断面図比較

全負荷性能曲線〔P11C(P-Ⅳ)とP09C(P-Ⅱ)比較〕

図6 全負荷性能曲線〔P11C(P-Ⅳ)とP09C(P-Ⅱ)比較〕

1.概要

 ディーゼルエンジンは,燃料経済性,耐久性などが他の熱機関に比べ優れていることから動力源として広く使われている.しかし,環境保護の面から,排気出ガス,排気煙はなお一層の低減が望まれているが,地球温暖化の対策については馬力当たりのCO2の排出量が少なく,年々高まる燃費低減のユーザニーズと一致し,メリットが高い.この様な背景のもとで,商業車用大型ディーゼルエンジンは,環境適合と市場ニーズに応えるべく種々の改良を行ない図1に示すように燃費低減を図ってきた.しかし近年この傾向は,鈍化傾向にある.この様な状況を打破し大幅な燃費低減を達成するため,新たなアプローチによる低燃費方策が必要となってきた.

 本エンジン(呼称:P11C型エンジン)の基本的なコンセプトは,遮熱エンジンの研究に遡るものであり,研究の結果得られた最低燃費率と遮熱率との関係を,具体的な形で実用化にこぎ着けたものである.

 具体的な方策として通常のアルミニウム合金製ピストンに対し,遮熱率が高くかつ高速ディーゼルに適含するダクタイル鋳鉄製の軽量,コンパクトなピストンを開発した.また,遮熱に伴い増加した排気エネルギーの効果的活用を図るため,広い作動範囲で効率の良い斜流タービン式ターボチャージャを開発した.上記技術の他,吸・排気系,噴射系に電子制御の活用,ならびに各種フリクションロスの低減と相まってP11C型は熱効率45.5%(184g/kWh)に到達する事が出来た.

2.技術の内容

 2・1 低燃費化に対する考え方と方策  低燃費化は,次の三つの方策により推進した.

 2・1・1 燃焼室の遮熱による燃費の低減  先行実験にて燃焼室各部を徐々に遮熱化することにより,エンジンの各種特性(性能,燃費等)がどの様に変化するかを追求した.図2にNOx排出量一定の条件における遮熱率と燃費の変化を示す.この結果,燃費を低減するためには,燃焼室の最適な遮熱化が必要である事が分かる.そこで遮熱化の変更規模と燃費低減効果を考慮し,仕様Aのダクタイル鋳鉄性ピストンを採用する事とした.

 2・1・2 排気量の最適化と新型ターボチャージャの開発による燃費の低減  先行実験の結果,燃費が最良となる空気過剰率:λ=2.0以上を狙い排気量の拡大と新型ターボチャージャの開発を行った.

 (1)排気量の最適化  排気量の拡大は,エンジンのフリクション増加を伴うため,燃費の悪化につながる.そこで空気過剰率増大による燃費改善と排気量拡大による燃費悪化のトレードオフを検討し,排気量は最良の燃費が得られる10.5lとした.

 (1)新型ターボチャージャの検討  また,遮熱により増加した排気エネルギーの効果的活用と,空気過剰率増大による要求最大風量の増加に対応するため,高風量下でタービン効率の高い斜流タービンを採用する事とした.

 2・1・3 フリクションロス低減による燃費の低減  その他の燃費低減策として,ポンピングロス低減を目的に,インタクーラを含む各吸気系部品の圧力損矢低減,動弁系のフリクション低減を目的に,ローラカムフォロワを採用した.

 2・2 P11C型エンジンの主な採用技術  図3に主な採用技術を示す.この中で今回新たに採用したダクタイル鋳鉄製ピストンと斜流タービン式ターボチャージャについて詳細説明する.

 2・2・1 ダクタイル鋳鉄製ピストン  図4にダクタイル鋳鉄製ピストンと従来のアルミ合金製ピストンの断面図比較を示す.本ピストンは,特にアルミ合金製に代替できる軽量ピストンの実現に重点をおき,質量増加に寄与率の高いコンプレッションハイトを従来の概念を破る値(従来の0.71Dに対し0.52D,D:シリンダボア径)に設定した.

 また,ダクタイル鋳鉄の持つ優れた材料特性を生かし,前述の燃焼室の遮熱以外に以下に示す特徴を実現した.

 まず,トップリングの位置を限界(トップランド高さを従来の0.16Dに対し0.06D)まで上げ,燃焼室のデッドボリュームを約14%低減し,良好な燃焼による低排出ガスレベルと低燃費を達成した.

 また,鋳鉄の低い熱膨張率を活かし,エンジン冷態時におけるピストンとシリンダライナの隙間を低減することにより,ピストンスラップに起因する騒音を低減した.

 2・2・2 斜流タービン式ターボチャージャ  図5に斜流タービン式ターボチャージャと従来型ラジアルターボチャージャの断面比較を示す.斜流タービンは,従来タービンに比較し,流入したガスが滑らかに流れることにより,広い作動範囲でタービン効率が約3%向上した.これによりエンジンのポンピングワークの代用特性である,ブースト圧とタービン入口圧の差が大きくなり,燃費が改善された.一方,コンプレッサ側については,日本国内の道路事情に適応した広い作動域を持つUBCI(Ultra Backward Curved Impeller)をべ一スに高風量化に対応する設計を行った.

 2・3 燃費低減効果  P11C型エンジンの全負荷性能を前任P09C型と比較して図6に示す.全負荷最小燃費は184g/kWhを達成し,正味熱効率は45.5%を達成した.また本エンジンを搭載したトラック(GVW20トン)は,従来の同級車に比べ10%の燃費改善(当社比較)を達成した.

3.まとめ

 本エンジンはダクタイル鋳鉄製ピストン,斜流タービン式ターボチャージャ等新技術を開発,採用しトッ・プレベルの低燃費を達成した.この技術は今後のディーゼルエンジンの燃費低減技術の進歩に貢献する事が期待できる.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1994年、上光勲(日野自動車工業(株))、新倉孝昭(同左)、野田正裕(同左)、辻田誠(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

商業車、ディーゼルエンジン、燃費低減、遮熱エンジン、ターボチャージャ、斜流タービン、ダクタイル鋳鉄製ピストン
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