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ハイビジョンのスタジオ規格化

CCIRで議論されたハイビジョン規格と現行テレビ方式の比較

表1 CCIRで議論されたハイビジョン規格と現行テレビ方式の比較

 現行のカラーテレビ放送は、日本や韓国、アメリカ、カナダ、中南米各国がNTSC方式、イギリスやドイツなどの西欧と中国などがPAL方式、フランスやロシアなどがSECAM方式といった具合に3方式でカラーテレビ放送が行われている。これでは各国で制作されたテレビ番組の素材交換が難しい。広く番組資産を利用し合うには、やはり国際的な規格の統一が欠かせない。次世代のテレビ方式こそ共通化させたい、というのがテレビ放送関係者の夢であった。

 NHKは1960年代後半から世界に先駆けて次世代テレビとしてハイビジョンの研究開発を進めてきたが、1974年に国際標準化機関のCCIRがHDTVを現行テレビの2倍以上の解像度をもつテレビ方式として研究課題に取り上げてから各国の関心が高まった。すでにNHKは視覚や心理面での評価実験の結果を踏まえて、「総走査線数1125本、アスペクト比5:3、インターレース比2:1、フィールド周波数60Hz」とするハイビジョンの暫定規格を決め、これを日本および国際規格にするための作業を開始していた。

 国内のハイビジョンに関する法制化は1984年、電気通信技術審議会(郵政省の諮問委員会)で検討が開始された。それを引き継いだ同審議会の高精細度テレビジョン委員会は1987年、CCIRの放送技術開発協議会(BTA)が取りまとめた技術仕様「1125/60高精細度テレビジョン方式スタジオ規格」(BTA-S001)を基に審議を進め、CCIRに「HDTVスタジオ規格」として提案した。

 アメリカは当初から日本のハイビジョンに関心を示し、1977年に全米映画テレビジョン技術者協会(SMPTE)にハイビジョン検討作業部会が組織され、1987年にはBTAの協力でHDTV規格(SMPTE-240M)が制定された。一方、1983年には次世代のテレビシステムの技術標準を勧告するため、NTSCにならってATSCが組織された。

 CCIRでは、アメリカは日本の提案を了承したが、ヨーロッパは「HDTVから現行テレビへの変換が問題だ」として納得しなかった。そこでNHKは、フィールド周波数50HzのPALやSECAMでもハイビジョンからの変換が難しくなく、ヨーロッパが日本案を採用しても不利でないことを示すために「HDTV/PAL方式変換装置」を開発した。この装置は世界で初めて「動き補正型」のフィールド周波数変換方式を採用し、動画像の変換画質が格段に向上した。表1に、CCIRで議論されたハイビジョン規格と現行テレビ方式の比較を示す。

 欧州放送連合(EBU)は技術的に納得して日本案を支持する方向であったが、欧州連合(EC)はフランスが中心となって、主に、政策面から反対の動きを強めた。そのため1986年のCCIRドブロフニク総会では、日本案を基にした規格の勧告は見送られることになった。

 ECは総会後、ヨーロッパ提案としてPAL, SECAM方式とフィールド周波数が同じ50Hzで、2倍の走査線数となる1250本/50Hz方式を提案した。しかし標準化すべき規格パラメータの中では、日本が提案した3値同期信号や3原色を規定する測色パラメータなどには合意し、日本案とヨーロッパ案を併記することになった。ついに1990年、CCIRジュッセルドルフ総会でHDTV規格が「勧告709」として成立したのである。

 その後、日本のハイビジョンは放送実績などで評価され、有効走査線数(テレビ画面上で見える走査線)については1997年4月にITU-R(国際電気通信連合の無線通信部門。CCIRの後継機関。)で1080本が合意され、さらに2000年3月に総走査線数が1125本に統一された。

 こうした紆余曲折の末、「総走査線数1125本、有効走査線数1080本、水平方向の有効画素数が1920画素となる画素形状が正方であるハイビジョン」をベースとするHDTVの世界統一規格が実現した。

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(放送の方式と処理技術)

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国際標準化機関のCCIRで、HDTVを現行テレビの2倍以上の解像度をもつテレビ方式として研究課題に取り上げられた。
1990年
ジュッセルドルフ総会でHDTV規格が勧告709として成立した。
1997年4月
ITU-R(CCIRの後継機関)で1080本の合意が取れた。
2000年3月
総走査線数が1125本に統一され、総走査線数1125本、有効走査線数1080本、水平方向の有効画素数が1920画素となる画素形状が正方であるハイビジョンをベースとするHDTVの世界統一規格が実現した。

世の中の出来事

1990
大学センター試験が始まる。
1990
東西ドイツが統一される。

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キーワード

ハイビジョン、HDTV、CCIR、ITU、BTA、SMPTE、標準化、ハイビジョン、放送方式
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