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地下無重力実験施設

システム概念図

図1 システム概念図

落下カプセル模式図

図2 落下カプセル模式図

1.はじめに

 新素材の開発,物性の研究等において微小重力環境を利用する研究が注目されている.微小重力環境の実験を短時間ではあるが地上で行う施設として落下塔がある.これまではアメリカにある自由落下高さ130m,微小重力時間5.15秒のものが最大であったが,1991年に北海道上砂川の廃坑になった炭坑の立坑を用いて実験装置を搭載したカプセルを490m自由落下させ,10秒間の微小重力実験を行う実験施設が完成した.この落下塔は従来のものに比べ,搭載可能重量は約4倍,制動時の衝撃加速度は約1/4であり,完成後順調に稼働し,多くの実験が行われている.

2.技術の内容

 2・1 基本性能  本施設の基本性能は以下の通りである.

 ・微小重力時間  :10秒
 ・微小重力レベル :10-5G
 ・制動時衝撃加速度:約8G
 ・最大搭載重量  :1000kg
 ・落下前および落下中に地上制御室と実験装置間でカラー画像を含む信号の双方向伝送が可能

 2・2 システムの構成  従来の100m級の大形落下塔は落下中の空気抵抗を避けるため,実験装置を搭載したカプセルを真空チューブ内で落下させている.この施設では落下高さが高いため大気中落下とし,空気抵抗はカプセルに推力を与えて補償する方式を開発した.制動も従来はクッション材を入れた槽にカプセルを突入させ停止させているが,緩やかに停止させるためエアーダンピング方式を開発した.図1にシステムの概念図を示す.

 2・3 カプセルの構造  カプセルは二重構造とし,実験装置は内側のカプセルに搭載される.自由落下中は内カプセルを外カプセルの内側に浮遊させ,微小重力状態を創り出す.カプセルはアルミニウム合金の溶接構造で直径1.8m,長さ8m,重量は最大の実験装置を搭載した場合で5.7tである.

 落下中の空気抵抗を補償するため,外カプセルを落下方向に加速する必要がある.この推力を高圧の圧縮空気をノズルから噴出させるガススラスタで得ている.カプセルは分解,組立に便利なようにスラスタを装備するスラスタモジュール,内カプセルを浮遊させるペイロードモジュール,制御機器を搭載したバスモジュールの三つのモジュールより構成されている.

 2・4 微小重力を実現する方法  図2はカプセル落下前の状態を示す.外カプセルは切離装置につり下げられ,その内部に内カプセルがつり下げられている.切り離されると内カプセルは外カプセルの中に浮遊し,外カプセルはレールに沿って落下する,内カプセルは10秒間自由落下するとコリオリの力により切離位置から東に175mmずれる.レールは鉛直に敷設されており,この移動量を吸収するため内カプセルは外カプセルの中心から西に90mmずれた位置から切り離され,東に85mmずれた位置に着床する.

 落下はまず内カプセルを切り離し,55msおくれて外カプセルを切り離す.内外カプセルの間隔はコリオリの力による移動量を除くと75mmと狭いため,内カプセルが切り離し時の外乱で水平方向の初速度を持つと,10秒の間に外カプセルに接触してしまい,微小重力状態を実現することができない.そのため外カプセルに5対の磁気軸受(内カプセル姿勢制御マグネット)を設け,内カプセル切り離し直後0.4秒間,内カプセルの落下方向以外の運動を低減する制御を行う.

 外カプセルは切り離されると,立坑内に設置された鋼製の2本のガイドレールの間を,吸引式の6対のマグネットで案内されレールに非接触で落下する.

 内カプセルは外カプセルより先に切離されるため,内カプセルの落下速度が速く,切離後約1秒で初速度低減用のマグネットとの狭いギャップを抜ける.その後は内カプセル底部と外カプセルの距離を赤外線センサで測定し,その信号のフィードバックでスラスタの推力を制御し,10秒問内カプセルを外カプセル内に浮遊させ,微小重力状態を実現する.

 2・5 光伝送システム  内外カプセル間を微小重力を乱さない程度の細い光ケーブルで結び信号の伝達を行っており,外カプセルと地底とはレーザビームによる双方向の光伝送を行っている.外カプセルの落下中の振動でビームがずれないよう自動追尾装置を装備しており,実験中の映像およびデータはリアルタイムで地上の制御室に送られる.また落下中の実験装置に地上からコマンドを送ることも出来る.

 2・6 制動および回収  内径4.8mの立坑内を落下してきた直径1.8mのカプセルは,切離後10秒で,内径1.9mの制動槽に突入する.制動槽下部はエアシールされているため制動槽内の空気が圧縮され,この空気力でカプセルは減速される.制動槽内の圧力は制動槽下部のオリフィス弁によりカプセルの重量,気圧,温度等により調節される.カプセルが低速になったところで,カプセル側面に設けられた制動フィンを油圧駆動の制御装置が掴みカプセルを停止させる.カプセルが停止したのを確認して,地上より回収装置をロープで降ろしカプセルを把持した後ブレーキの油圧を解放し,落下後十数分でカプセルは地上に回収される.

3.おわりに

 本施設は(株)地下無重力実験センターの手で運営され,順調に稼働している.1992年12月末までに実験装置を搭載して300回以上の落下実験を行っており,今後ますます各方面で利用されるものと期待される.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1993年、高橋貞雄(石川島播磨重工業(株))、高橋光男(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、塩田昭三((株)地下無重力実験センター)、小川耕二((株)東芝)、印藤弘郷(三井造船(株))に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

無重力、落下塔、10秒間の微小重力実験、二重構造のカプセル、光伝送システム
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