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永久磁石式軽量渦電流ブレーキ装置(ECBリターダ)

永久磁石式リターダ

図1 永久磁石式リターダ

永久磁石式リターダの開発目標

表1 永久磁石式リターダの開発目標

構造と作動機構

図2 構造と作動機構

リターダのコントロールシステム

図3 リターダのコントロールシステム

リターダ付車両の減速度(高過給付小排気量エンジン(9.8l)搭載車)

図4 リターダ付車両の減速度(高過給付小排気量エンジン(9.8l)搭載車)

ライニング温度上昇

図5 ライニング温度上昇

1.概要

 近年,高速道路網の整備に伴い,トラック運搬の長距離化,高速化が進んでおり,特に大型車のブレーキシステムの高性能化,安全性向上の必要性が高まっている.大形車はディーゼルエンジンの高過給による小排気量化と駆動系ギヤ比のファーストレイショ化が進み,エンジン及び排気ブレーキ力が低下している.このような状況からフットブレーキ,エンジンブレーキ,そして排気ブレーキに次ぐ第4のブレーキであるリターダ(自動車の速度を減速,または制限する補助ブレーキ)の要求が高まっている.

 従来のリターダはコイル式電磁石や流体を使用するもので,いずれも重く(200~300kg),かつ車両も大幅な改造を必要としていた.このため日本国内の車両事情などに適合せず,国内においては輸入バスなどで一部の使用例があるのみであった.

 今回,電磁石の替わりに強力な永久磁石(Ne-Fe-希土類磁石)を採用することにより,大幅な軽量化が可能で,まったく新しい概念のリターダを開発することに成功した.また電磁石のようなバッテリ,ジェネレータの容量アップや取付けのための車両改造が不要のため,容易に従来の車両へ取り付けが可能である利点も有している.

2.技術の内容

 2・1 装置の構成と特徴  図1に今回開発したリターダの車両取付け状況とカットサンプルを示す.本リターダは開発着手前にトラックのブレーキ使用状況とニーズを調査し,表1に示す目標を設定した.従って表1に示す項目が本リターダの特徴であり,第1に安全性の向上を考慮して開発した.

 2・2 作動機構と構造  図2に作動機構を示す.エアシリンダにより永久磁石を取り付けたヨークを軸方向にスライドさせ,永久磁石を回転しているドラムの内側に移動させるとブレーキオンの状態となる.この状態では静止しているステータのケーシングに鋳込まれた低炭素鋼を通じて磁場はドラム内に侵入する.このために生じる渦電流と磁場の作用で回転方向と逆にローレンツ力が働く.これが渦電流ブレーキの作用原理である.ブレーキオフの場合は,磁場はケーシングに吸収され,ドラム内に侵入しないため,ローレンツ力は作用しない.

 本開発では試作実験の結果より,比較的高いトルク効率とブレーキ力不要時の残留トルクが少ない点からドラムタイプ軸方向スライド方式を選定した.またドラム構造はローレンツ力に及ぼす諸因子(永久磁石の強さ,装置の幾何学的パラメータ,材料の電気伝導度,比透磁率など)の影響を明らかにして,最適値を求めた.同時に試作の繰返しによって高トルクで軽量な形状を求めた.ステータは永久磁石への熱影響を極力低下させる断熱密閉構造で,本開発にあたり最も苦心した設計となっている.

 2・3 コントロールシステム  図3にコントロールシステムを示す.ステアリングコラムにあるコンビネーションスイッチを手で操作し,一段で排気ブレーキが,二段で排気ブレーキとリターダの両方が作動する.ブレーキペダルを踏み込むとリターダは連動し,リターダが作動中でもアクセルペダルを踏み込むと解除するシステムとなっている.

 2・4 効果  各種室内試験,実車耐久試験,モニタ車による性能評価を行った結果,目標通りの性能が確認された.モニタ車によるユーザの評価では(1)高速での下りカーブで安心して運転できる,(2)ブレーキを踏む回数が半分以下となり,運転者の疲労軽減に役立っている,(3)制動時の荷崩れの心配がなくなった,(4)従来ブレーキライニングは4箇月しか持たなかったが2年持ちそうだ,(5)ライニングの摩耗粉が大幅に減少し,整備環境の改善に役立っている.などの好評を得ている.図4にリターダを使った時の必要減速度確保の例を,図5にライニングの温度上昇低減効果の例を示す.

3.まとめ

 今後,自動車の安全性向上,運転者の疲労軽減がますます要求されると予想され,今回開発したリターダは,この要求に十分こたえられるものである.大型トラック用以外にも大型バスなど数多くの車種への展開によって,自動車の安全性向上および運転者の労働環境改善に大きく貢献することが期待される.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1993年、坂本東男(住友金属工業(株))、荒木健詞(同左)、鈴敏夫(同左)、桑原徹(いすゞ自動車(株))、新谷廣二(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

文献

[1] 荒木健詞、坂本東男、小林純夫、桑原徹、「渦電流ブレーキ装置のローレンツ力解析」、日本機械学会第68期通常総会講演会講演論文集、(Vol.C)1706, No.910-17, pp.525-527, 1991.
[2] 桑原徹、新谷廣二、坂本東男、荒木健詞、斎藤晃、「永久磁石式軽量渦電流ブレーキ装置(ECBリターダー)の開発」、住友金属(企業誌)、43-5, pp.24-30, 1991.
[3] Sakamoto H., Araki K., Ishida A., Kobayashi S., and Kuwahara T., "Design of Permanent Magnet Type Compact ECB Retarder", SAE Transactions, Journal of Commercial Vehicles, Vol.106, Section 2, pp.508-514, 1997.

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自動車、補助ブレーキ、リターダ、渦電流ブレーキ、永久磁石
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