1. HOME
  2. 機械関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号1889)

ディーゼル-電気新型ハイブリッドシステム採用の低公害低燃費大型バスの開発

HIMRシステム搭載バス概略図

図1 HIMRシステム搭載バス概略図

HIMRの基本機能

図2 HIMRの基本機能

出力性能曲線

図3 出力性能曲線

HIMRバスの効果

図4 HIMRバスの効果

1.概要

 大都市における大気汚染は一時改善の方向にあったが,近年再び悪化の傾向がみられ,寄与率の高い自動車排ガス,特にディーゼル排ガスの一層の改善が強く求められている.また地球温暖化対策として,更なる燃費改善が期待されている.

 このような背景の中で世界的に種々の低公害車,すなわちメタノール車,天然ガス車及び電気自動車等の研究・開発が鋭意進められているが,これらの車の普及には技術的課題の解決はもちろんのこと,燃料供給及び充電設備等のインフラ整備が必要となる.今回新たに開発したディーゼル-電気のハイブリッド(HIMRシステムという)車は従来のディーゼル車と同一燃料を使用するため,新たなインフラ整備が不要である.また本システムはブレーキエネルギーを回生し,これをバッテリに蓄電し,車の発進・加速時や高負荷走行時に特殊モータでディーゼルエンジンをトルクアシストすることができるので,困難とされていたNOx,黒煙,燃費及び騒音を同時にかつ大幅に改善することができる.更に従来のスタータ及びオルタネータを不要としたり,モータをインバータで制御することにより電気式補助ブレーキとして機能させることができる他,本システムは大幅な変更なしに従来のバスに搭載できる等のメリットを有している.

2.技術の内容

 2・1 システムの構成と特長  本システムは図1に示すように回転機である三相交流機,これを多機能に制御するコンピュータ付インバータ,制動エネルギーを蓄電するバッテリ,制動時の余剰電気エネルギーを大気に放出する抵抗器及びディーゼルエンジンの出力を制御する電子ガバナ付燃料噴射ポンプ等より成っている.

 本システムの構造上の特長は,エンジン後部のフライホイールハウジング内のクランク軸上に超薄型の三相交流機を取り付け,軽量・小形のインバータで制御することによりディーゼルエンジンの出力と三相交流機のモータ出力との二つの出力によって車軸を駆動するところにある.

 2・2 システムの機能  本システムは図2に示すようにスタータ,モータ,発電,エネルギー回生,リターダ(電気ブレーキ)の五つの基本機能を有している.三相交流機はインバータの制御によりエンジンの始動時にスタータスイッチの信号を受けてスタータとして作動する.また,車両の発進・加速時のように高いトルクを必要とする時にはアクセルセンサからの信号を受けてトルク補助用のモータとして作動する.車両の制動時にはリターダの調整レバーの信号を受けてリターダとして作動し,この時のブレーキエネルギーを電気として取り出しバッテリに充電して回生する.なお,ブレーキエネルギーの回生だけでは電気が不足する場合には,オルタネータ(発電機)として作動し,バッテリに充電することもできる.このため,現行のスタータ及びオルタネータは不要となる.

 一方,ディーゼルエンジンの出力は電子ガバナ付燃料噴射ポンプをコンピュータ制御することによって決定されるが,図3に示すようにモータ(三相交流機)によるトルク補助によって,高負荷での運転が無くなるため,黒煙の排出がこれで解決される.しかし,6モードにおけるNOxの排出量は軽負荷運転時の寄与率が大きいため,これだけでは改善効果が少ないのでNOxの生成を抑えた軽負荷燃焼チューニングを実施して一層のNOxの低減を図っている.なお,この軽負荷燃焼チューニングは黒煙の問題が解決されたので従来エンジンと異なり実施が容易になった.また,発進・停止頻度の多い都市内走行バスにおいて,図2に示す五つの機能を走行条件によって適宜切り換えてスムースな走行ができるようインバータで三相交流機を制御している.

 なお,バッテリは改良型の鉛バッテリを25個使用し,電圧は300Vである.24Vで作動する車載機器類への電源供給は300Vを24Vに変換するDC/DCコンバータを介して行う.

 2・3 効果  本システムを採用した場合の効果を図4に示す.

 2・3・1 排ガスの改善  NOxは20~30%低減すると共に,黒煙は約70%低減し,ほとんど目に見えない状態となる.

 2・3・2 燃費の向上  都市内路線バスとして使用した場合,燃費が5~15%向上する.このことは排ガスを大幅に改善した上での性能向上であり,今後の地球温暖化対策(CO2対策)を考えると非常に有効である.また,今後バッテリが進歩すれば,制動時の余剰電気エネルギーの大気放出が減り,20~30%の燃費の向上が期待される.

 2・3・3 騒音の低減  車の発進・加速時に三相交流機をモータとして作動させ,エンジンをトルク補助するので,バス内後部座席における発進・加速時の騒音が平均6.7%低減する.

 2・3・4 補助ブレーキの向上  三相交流機が強力なリターダ(電気補助ブレーキ)として機能し,ブレーキ時の減速度が2.6倍に向上するのでフートブレーキの使用頻度が大幅に低減し,ブレーキライニングの寿命が2~3倍に延長する.

 2・3・5 その他  三相交流機をインバータで制御することにより,スタータ機能及び発電機能を発揮するので従来のスタータ,オルタネータが不要となる.

3.まとめ

 本システム採用の大型バスは特別なインフラの整備を必要とせずに,従来困難とされてきたNOx,黒煙,燃費及び騒音の大幅改善を可能とした.また,今後パワーエレクトロニクス及びバッテリの進歩によりブレーキエネルギーの回生効率が向上し,一層の低公害・低燃費化が期待できる.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1992年、鈴木孝幸(日野自動車工業(株))、小幡篤臣(同左)、小池哲夫(同左)、茂森政(同左)、田島敏伸((株)東芝)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

エネルギーと環境(エネルギー・環境)
(エンジンシステム)
生活を支える機械(産業・物流・宇宙)
(交通・物流)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1992
山形新幹線が開業する。
1992
ボスニア・ヘルツェゴビナが内戦状態となる。(ユーゴスラビア)

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

大型バス、ディーゼルエンジン、ハイブリッドシステム、低公害、低燃費、低騒音、電気式補助ブレーキ、エネルギー回生
Page Top