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潜水調査船“しんかい6500”用マニピュレータの開発

マニピュレータシステム構成

図1 マニピュレータシステム構成

仕様

表1 仕様

スレープアームの外観

図2 スレープアームの外観

把持部制御ブロック図

図3 把持部制御ブロック図

1.概要

 海洋科学技術センターは,深海調査のため昭和62年度~平成元年度にかけて有人潜水調査船“しんかい6500”を建造した.

 “しんかい6500”は,潜航深度6500mとフランスの“ノチール”,アメリカの“アルビン”や,ソ連の“ミール”をしのいで現在世界で最も深く潜航でき,地球上の海洋の98%を調査することができる最新鋭の有人潜水調査船である.

 今回,この潜水調査船の手として,深海の貴重な生物,岩石の採取や,地震予知調査に用いる傾斜計,重力計等の計器の設置,回収作業などを行い,潜水調査活動の成果を大きく左右する潜水調査船の重要な装置であるマニピュレータシステムを開発した.

 本マニピュレータは,人間の腕と同様に双腕で,狭い潜水調査船内でミニチュアマスタアームにより自由自在に操作でき,かつ貝やかになどの生物を潰すことなくソフトにつかんで採取することができるなど,種々の特長を持っている.

2.システムの構成

 マニピュレータシステムは,潜水調査船の船外に装備される“スレープアーム”と,潜水調査船の船内に装備される“操作装置”と“制御装置”により構成される.マニピュレータシステムの構成を図1に,また概略仕様を表1に示す.

 (1)スレープアーム  船外の深海中で作業する腕で,右腕は7自由度の器用な腕で“マニピュレータ”,左腕は5自由度で重量物を取扱うパワフルな腕で“グラバ”と言う.深海では外圧680kgf/cm2,温度0~2°Cの環境下にさらされる.外観を図2に示す.

 (2)操作装置  マニピュレータの操作を行うマスタアーム,グラバを操作するジョイスティックがあり,これらはいずれも狭い船内で扱うため小型,軽量化を図り,使用しない時には格納できるよう可搬式としている.

 (3)制御装置  制御装置は,マイクロコンピュータとサーボアンプなどの“制御部”と,DC源やマスタアームのドライプモータを駆動するアンプなどの“ドライブアンプ部”から構成される.

3.システムの特長

 深海調査における各種作業と試料採取活動能力の向上のため,マニピュレータシステムは次の特長を持っている.

 (1)対称型バイラテラル割御  マニピュレータ把持部の制御ブロック図を図3に示す.マニピュレータ把持部の力制御には,対称型バイラテラル制御方式を採用した.対称型バイラテラル制御方式はサーボ偏差により力を検出するため,センサは位置制御を行うためのポテンショメータだけで,一切の力検出用センサを必要としない.従って,システムがシンプルになり,劣悪な大深度環境に曝される潜水調査船用マニピュレータシステムにとって高い信頼性を維持することのできるシステムと言える.

 このパイラテラル制御は,単に把持力をオペレータにフィードバックするだけでなく,バイラテラル比を調整することによりスレーブアームの把持力を制限することもでき,柔いものから硬いものまでさまざまな対象物を自在につかむことが可能である.

 (2)音による力フィードバック方式  また,このバイラテラル制御に加え把持力をオペレータに帰還する手段として,スレーブアームが物をつかむと船内でその把持力に応じた音がでる“音による力感覚表現”を行い,オペレータの力感覚の不感帯や長時間作業による力感覚の麻痺を補った.

 この音による力感覚表現は,マニピュレータの手首3軸にも適用し,手先が海底などに接触したり,重量物を持ち上げた場合に手先に負荷がかかったことを知ることができるようにした.

 (3)マスタアームとドライブモータの分離  バイラテラル制御におけるマスタアームは,力を帰還するためのアクチュエータをグリップ部に装備するためグリップ部が重くなる.更に,自重補償のためのバランスウェイトが必要となり,全体重量が増大し動作時の慣性も無視し得なくなり操作性が悪化する.そこで,把持部の力帰還用のドライブモータをグリップ部から分離して別置きとし,その力をレリーズワイヤでグリップ部のトグルに伝達し,狭い船内でのマスタアームの操作性を向上させた.

 (4)RMRC制御(Resolved Motion Rate Control) グラバの制御には,ジョイスティックにより各関節を操作する各関節モードに加えてRMRCモードを設けた.RMRCモードは,ジョイスティックの操作を手先の前後・左右・上下方向の速度指令とし,これを積分した手先の位置指令を制御装置により演算して複数の関節を同時に動かすものである.

 これによりマスタスレープ制御と同様,オペレータは各関節の動きを考えることなく手先の動かす方向に感覚的に操作すればよく操作性が向上する.特に,計測器を海底に突き刺す操作のように正確に直線的な動きを行う場合に有効である.

4.結び

 本マニピュレータシステムは,平成元年4月より総合海上試運転が開始され,11月末に海洋科学技術センターへ引き渡された後,平成2年より約1年間乗員の訓練を行いながら運航が始まった.そして平成3年には,北フィジィ海盆への調査等本格的な調査潜航が行われ,マニピュレータにより“しろうり貝”をソフトにつかんで採取し,また,計測器の設置・回収作業を行い,その性能を十分に発揮するごとができた.平成4年には,日本海溝,琉球海溝,伊豆小笠原諸島,マリアナ海溝等の調査が行われる予定であるが,ここでも多くの成果をあげてくれるものと期待される.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1992年、阪本弘克(川崎重工業(株))、猪熊守彦(同左)、真鍋隆夫(同左)、高川真一(海洋科学技術センター)、手塚久男(三菱重工業(株))に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

マニュビレータ、把持力、バイラテラル、力感覚、ジョイスティク、水中、深海
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