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インテリジェント車体組立システムの開発と実用化

ボディメインIBSの構成

図1 ボディメインIBSの構成

1.概要

 自動車産業を取りまく環境は近年めまぐるしい変化を遂げている.ユーザの嗜好やニーズの多様化に伴う市場環境の変化,グローバルな生産補完と言った国際化の進展,さらには一次,二次産業離れや高齢化等の労働環境の変化などである.特に車の需要はユーザの価値観の変化に加えて,季節変動や新車発売の初期効果によりモデルライフ内での需要変動が極めて大きく,またその予測も困難である.その結果各生産工場において生産能力に対し各々過不足を生じた生産実績となり,企業全体で見ると全生産能力に対しロスを生じてしまう.これは従来から自動車の生産システムは巨大かつ複雑なため,車種や生産能力の変更が容易に出来ないためである.

 一方,激しい「変化」の中で,日本国内においては年間約20車種のモデルチェンジが行われている.このモデルチェンジには,2年半以上に渡る長期の生産準備,数百億円にのぼる投資と延べ数千人の技術工数を要するため,自動車会社にとって極めて大きな負担となっている.従って,このモデルチェンジを如何に迅速にかつ容易に行うかが自動車会社にとって大きな課題となっていた.これらの課題に対し,当社は「変化」への迅速な対応力を有する生産システムを狙いとし,従来から特に規模が大きくフレキシビリティの点でネックであった車体組立工程のボディメインラインに,多車種混流生産が可能なインテリジェント車体組立システム(Intelligent Body assembly System=IBS)を開発・導入し,当社栃木・座間・九州各工場にて稼動を開始した.今後,アメリカのスマーナ工場を含めた各生産拠点に拡大採用していく計画である.

2.技術の内容

 2・1 IBS開発のねらい  IBSの開発に当たって狙いを以下の3点とした.

 (1)生産工程をプログラマプル化することにより,車体のデータを変更するだけであらゆる種類の車(例えばマーチからプレジデントまで)がいずれの生産拠点においても同一ラインで生産出来る.

 (2)品質の自己補正や設備故障の自己診断機能を有し高品質・高稼動率が得られる.

 (3)オフラインCADシミュレーションシステムにより,車の開発段階における各種生産条件のシミュレーションがEWS上で実行出来,作成されたティーチデータを海外を含めた生産拠点を結ぶネットワークを介して転送することにより,国内工場を含めたグローバルな生産補完を実現する.

 これらの狙いを達成するシステムの根幹は,データを主体としたプログラマプルな生産システムである.

 2・2 IBSの基本構成

 (1)IBSボディメインラインの構成  IBSボディメインラインは全長約65m,最大幅10mのスペースを占め,1台の車を約45秒で生産し月産2万台以上の生産能力を有する.

 ラインのフローは,初工程から順次部品が自動セッターにより投入され,車のフロアやボディサイド,ルーフ等の合計7部品が,溶接されずに順次仮組されて行く.その後,搬送装置によりNCロケータと称する従来の組立治具に相当する位置決め溶接工程に搬入され,各々の部品をNCロケータ内のロボットにより位置決めした後,スポット溶接を行う.

 次に,仮打ち溶接された車体は,インライン車体精度計測工程に搬送され,車体の主要ポイントを計測ロボットにて計測する.計測結果はEWSのディスプレイに表示される.

 その後,車体は増打ち工程に運ばれロボットにより強度上必要なスポット溶接が行われる.図1にラインの構成を示す.

 (2)基本構成の概要  本システムの基本構成の概要を述べる.

 a.NCロケータ  従来の1~2車種生産対応の「車体組立専用治具」をプログラマブル化したことにより,データの変更だけであらゆる車種の車体組立を可能とした,IBSの中枢を成す装置.従来のボディメイン組立治具と同等のスペースに,51台のロボット(部品の位置決め用35台,溶接用16台)を集中配置し,ロボット軸数合計250軸の自由度と位置決め精度±0.1mmを実現したフレキシブル組立治具である.また,各ロボットは位置決め時に生じる車体からの反力に対し最大300kgまでの保持力を有し,車体を高精度に位置決めする.

 b.インライン車体精度計測装置および精度フィードバックシステム  溶接により組立が完了した車体の主要部位約60点を,センサとロボットにより高速測定し全数の品質保証を行うと共に,車体精度の変化に対し変化量を瞬時に検出し解析を加えて迅速な対策を行うシステム.さらにNCロケータと本装置をEWSを介して継続しフィードバックループを形成することにより,精度の変化時にはNCロケータヘ補正値を送る自動精度フィードバックも将来可能である.

 c.設備モニタリング&故障診断システム  NCロケータの稼動状況を,ラインサイドのEWSにて常時モニタし,万一のシステム故障時には逆推論型診断システムにおいて,オペレータとの対話により短時間での故障原因の究明と復旧方法の指示を行い,複雑で大規模なNCロケータの高稼動率を維持するシステム.

 d.オフラインシミュレーションシステム  車のCADデータによりNCロケータのCADティーチを行うと共に,部品の位置決め位置や溶接打点位置,動作タクトタイムの算出,NCロケータの動作干渉検討等の生産条件のすべてのシミュレーションを行うシステム.シミュレーション結果を直接あるいはネットワークを介しラインのNCロケータにダウンロードすることにより,短時間での生産準備が実現出来る.

 2・3 IBSの効果

 (1)多車種混流生産の実現  従来1~2車種の混流が限界であったボディメインラインにおいて,あらゆる車の混流生産を可能とした.

 (2)迅速な工場間生産補完の実現  IBSの動作データを他工場のIBSラインにロードすることにより,短期間での工場間生産補完の準備を可能とした.実績として従来約半年以上要していた準備期問に対し約3箇月で応援生産を開始することが出来た.さらに今後期待される効果として次の3点が挙げられる.

 (3)国内を含めた世界各地の生産拠点を対象にワールドワイドネットワークを構築することにより,データ転送によるグローバルな生産補完の実現が可能となる.

 (4)データをべ一スとした制御システムのため各種CADシミュレーションによりモデルチェンジにおける生産準備期問を大幅に短縮し,さらには新車の試作車が出来る前のCADデータの段階でのコンピュータ試作も可能となる.

 (5)車体工程のみならずプレス・塗装・組立等の他工程にも本システムを発展させ,各生産拠点の各工程がデータによってつながるトータルでインテリジェントな生産システムの構築が図れる
 (なお,本件に関する特許件数は約100件出願済み.)

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1991年、奥山馨(日産自動車(株))、笹岡博(同左)、井上博司(同左)、境野真道(同左)、矢崎和彦(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

車体組立、混流生産、CAD、溶接、位置決め、車体精度、故障診断
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