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世界最大・商業用超々臨界圧蒸気タービンの開発

主蒸気圧力の推移

図1 主蒸気圧力の推移

超高圧・高圧タービン

図2 超高圧・高圧タービン

スチームホワール安定判別

図3 スチームホワール安定判別

1.概要

 超々臨界圧と通称される31.1MPaの蒸気条件を有する世界初の本格的な大容量火力発電プラントとして,中部電力川越発電所1号機700MWが平成元年6月に,同2号機が平成2年6月にそれぞれ営業運転を開始し,いずれも好調に運転中である.図1に示すように,従来の大容量火力発電所の蒸気圧力は高々4.2MPaであり,約30年以前にそのレベルに達して以来長い期間にわたり進展が見られなかった.それを本機において大幅な記録更新を行い,発電端熱効率を39.7%から41.7%へ2%向上させることに成功した.

 この発電所の最重要機器である超々臨界圧蒸気タービンの設計開発にあたっては,設計条件が高圧高温化のために格段と厳しくなるにもかかわらず,従来機同様の高い信頼性と優れた運用性をもつ機器にすることを大前提とした.したがって,事前に各要素,部品について現有技術をべ一スに,その限界に向けての延長・拡大を系統的かつ綿密な解析と試験により行った.かつ最終的に実機試験による本開発の総合評価を行った.

 ここで,超々高圧部の主要部品の12Cr鋼化,ロータのスチーム・ホワール現象防止,初段動翼の強度確証等が重要な技術課題であった.本機により確立・実証した高効率化技術は,燃料の種類を問わず,すべての火力発電所に適用でき,エネルギー問題,環境問題に大いに役立つものとして,世界的にも広く注目を浴びている.

2.技術の内容

 2・1 開発方針  本機の設計仕様は出力700MW,回転数3600rpm,主蒸気31.1MPa/566°C,2段再熱566°C/566°C,串型4車室4流排気33.5”である.これにたいし中圧タービンと低圧タービンは従来の700MW機と基本的に同じとし,開発の力を図2に示す超高圧・高圧タービンに専ら集中させることとした.

 さらに超々臨界圧の初号機といえども,従来機と同じ高い信頼性を維持させるために,実績のない新規技術に頼らず,現有技術を最大限に延長,拡大し,かつその最適化をはかることを設計開発の基本方針とした.

 2・2 技術の延長,拡大

 (1)12Cr鋼の使用拡大  翼材として12Cr鋼は古くから使用され,ロータ材としても15年を超える好調な実績がある.ただし,静止部のケーシング,蒸気弁,ノズルダイアフラムなどの部品に対しては低Cr・Mo・V鋳鋼等が多用化されてきた.

 今回,高圧高温化に対して従来材を用いると耐圧容器,耐圧構造物としての静止部品が大幅な肉厚設計となり,タービンの起動停止時に生ずる熱応力が過大となる.従来部品なみの肉厚に抑えるために,よりクリープラプチャー強度の優れた材料として,超高圧・高圧部のすべての静止部品に対し12Cr鋼を採用した.

 これはまた,回転部と静止部の熱膨張係数の差にもとづく熱伸び差をなくし,間隙の最小化と起動停止特性の改善にも有効であった.

 (2)ロータのスチームホワール現象防止  超高圧・高圧タービンのロータは出力密度(発生出力/ロータの曲り剛性)が増加するという必然的傾向をもつ.したがってスチームホワール現象という不安定軸振動が発生しやすくなる.スチームホワール現象はある一定負荷以上で発生する負荷依存性の振動であり,そのロータの固有振動数で振れ回る特徴を有している.動翼での発生トルクの周方向アンバランスやラビリンスパツキン部の蒸気圧力の周方向アンバランスに起因している.これまでも,世界のいくつかのユニットでその現象が発生し,大容量化,高圧化の最大の障壁と一般に見なされてきた.

 今回,この現象を防止するために,新たにスチームホワール試験装置を製作・実験し,図3に示すように安定判別が精度良く行える技術を確立するとともに,図2に示すように従来機で複流であった初段を単流とし,動翼にクリスマス植込部を多用化,12Cr鋼のノズル・ダイアフラムなど,ロータ径を太く,軸受スパンを短くして,ロータの曲り剛性の低下を出来るだけ防止する限界設計に挑んだ.

 (3)初段動翼の強度確証  超高圧部と高圧部を一つのケーシングに納め,かつ軸受スパンの増大を防ぐために,上述のように初段動翼を単流とした.このことは,蒸気密度の増大とあいまって初段動翼の強度に対してより苛酷な条件となる.そのため,設計的には従来最も多用化され信頼性の高い鞍形植込部を採用し,その寸法の最適化と回転振動試験などの種々の要素試験を行って,信頼性を確証しながら現用技術の拡大・延長を行った.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1991年、池田隆((株)東芝)、伏見富和(中部電力(株))、桧佐彰一((株)東芝)、相沢協(同左)、柿島正好(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

火力発電、流体機械、蒸気タービン、超々臨界圧、流れ解析、12Cr鋼、スチームホワール、安定判別技術
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