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繊維強化複合材料の採用による軽量・コンパクトエンジンの開発

MMCエンジン断面図

図1 MMCエンジン断面図

MMCシリンダブロックの位置付け

図2 MMCシリンダブロックの位置付け

吸引装置

図3 吸引装置

MMC組織写真

図4 MMC組織写真

MMC層の検出事例

図5 MMC層の検出事例

MMCシリンダブロック

図6 MMCシリンダブロック

1.概要

 地球環境問題がクローズアップされ,炭酸ガスによる温暖化現象を防止するための自動車の排気ガス規制や燃費向上が社会的要請になっている.自動車の軽量化は燃費向上効果が大きく,特にエンジンの中で,大きな重量をしめるシリンダブロックの軽量・コンパクト化は効果的である.しかし,エンジン構造(図1)の中でもシリンダブロックは骨格部を形成しており,エンジン高出力化からこれまで鋳鉄材依存が支配的であり,軽量化を遅らせていた一つの要因であった.近年シリンダブロックの軽量化手法として,鋳鉄材からアルミニウム材(鋳鉄ライナ付き)へ材料転換することが世界的な傾向である.

 このような背景の中で,ピストンとのしゅう動面を鋳鉄ライナから,より軽量な繊維強化複合材料(Metal-Matrix-Composite:以下MMCと略す)に変え,高性能化と軽量・コンパクト化の両立ができるシリンダブロックの量産に成功した.技術的特徴としては,MMCをシリンダブロックのピストンしゅう動面だけに採用している部分強化法を採用したことと,それを活用して高性能化と軽量・コンパクト化の両方を満たせる自動車用エンジンが実用化できたこと.技術的成果としては,図2の出力/重量表に示すようにMMC材の重量は,同一出力で比較すると,鋳鉄材に対して50%,アルミニウム材(鋳鉄ライナ付き)に対して25%の軽量化を達成し,今後の軽量・コンパクトエンジンの開発に大きく貢献できることである.

2.技術の内容

 MMCシリンダブロックは,五つの技術開発によって量産化に成功した.

 2・1 アルミナ繊維とカーボン繊維からなる複合材料技術  ピストンおよびピストンリングとのしゅう動特性が鋳鉄材と同等以上になるこもをねらって,耐久性や耐摩耗性確保のためのアルミナ繊維,耐焼き付き性確保のためのカーボン繊維の2種類を混合して目標としたしゅう動特性を得た.

 2・2 吸引プレス成形法による高精度プリフォーム製造技術  押出し成形法を始めとした種々のプリフォーム製造法はあるが,それらは精度面で適さないので新たに開発することが必要となった.紙すき技術からヒントを得て,図3に示す繊維の吸引装置を考案し,次工程のプレス成形装置で均一な厚さに積層させた高精度なプリフォーム製造技術を確立した.

 2・3 低速・加圧鋳造法による複合材料の鋳造技術  プリフォームの微細な繊維体の間隙にアルミニウム合金を安定して浸透させ,均質なMMCを得るために低速度充填でしかも加圧成形ができる鋳造法を実用化した.図4に鋳造成形されたMMC部分を示す.

 2・4 ボア往復加工法の採用による複合材料加工技術  MMCシリンダ面を高精度に加工するために特殊なツールホルダを開発し,ファインボーリング加工とホーニング加工を同軸で行い,加工代を少なくすることで健全な加工面が得られた.また,部分強化法を採用しているので加工ラインは,シリンダボア加工を除き,鋳鉄ライナ付きアルミブロックとの混合生産ができる.刃具については,一般的な超硬チップでは刃具寿命が短いため焼結ダイヤチップを使用している.

 2・5 渦流・超音波探傷による非破壊検査技術  機械加工の最終工程において,全数検査により品質保証するシステムとし機械加工のタクトに合わせた渦流・超音波探傷を同時にできるインライン非破壊検査装置を実用化した.図5は,渦流探傷測定法でMMC層を検出した事例を示す.

3.むすび

 このMMCシリンダブロック(図6)に採用された技術は,アルミ複合材特性の軽量および高熱伝導性から鋳鉄材,アルミニウム材(鋳鉄ライナ付き)に対して,さらに高性能化と軽量・コンパクト化を達成したものである.また,現在の地球環境問題からくる種々のニーズに活用できる技術であると考える.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、1991年、安藤芳夫(ホンダエンジニアリング(株))、林直義((株)本田技術研究所)、海老沢賜寿雄(ホンダエンジニアリング(株))、原誉(同左)、佐久間剛(同左)に日本機械学会賞(技術賞)を贈った。

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キーワード

自動車、エンジン、シリンダブロック、軽量化、コンパクト化、繊維強化複合材料、アルミナ繊維、カーボン繊維
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