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縦型高分解能RBS(ラザフォード後方散乱)分析装置の開発

RBSの分析手法比較

図1 RBSの分析手法比較

従来および高分解能RBSによる測定(Ta(2nm)/Ti(2nm)/Ta(2nm)/Ti(2nm)膜)

図2 従来および高分解能RBSによる測定(Ta(2nm)/Ti(2nm)/Ta(2nm)/Ti(2nm)膜)

縦型高分解能RBS分析装置概観

図3 縦型高分解能RBS分析装置概観

加速器内部構造

図4 加速器内部構造

検出角度自在変更機構

図5 検出角度自在変更機構

1. 概要

 当社は,昨今のナノテクノロジー分野における極薄膜の分析や多層薄膜界面の拡散などの現象を解明するために必要なナノメータ厚さの薄膜に対応した小型分析装置を提供している.これはRBS(Rutherford Backscattering Spectroscopy)の原理にもとづき,高電圧で加速した高エネルギーイオンを薄膜表面に衝突させ,試料表面元素からの弾性散乱イオンのエネルギーを高精度で分析することで,オングストロームレベルの深さ分解能で元素組成の定量分析を可能とした,世界でも一社でのみ製造・販売している装置である.散乱イオンのエネルギー測定には,従来の半導体検出器に代えて,京都大学で考案された分析用2重集束マグネットと位置検出器を用いた手法(図1)を搭載しており,従来RBSに比べ深さ方向分解能を20 倍~50倍に高めている.このため,図2 に示すように数nm 単位の多層膜であっても各層ごとのスペクトルを分離できるため,膜ごとの組成分布が明瞭にわかり,半導体ゲート絶縁膜などの極薄膜元素プロファイルやアニール前後における界面の元素拡散などの状態を計測する手法として認知されつつある.さらに,この性能を汎用的,安定的に利用するため,①小型縦型加速器,②検出角度自在変更機構,③計測データ自動解析ソフトウエアなどを開発し,高度な分析ニーズに対応したコンパクト,高信頼,高精度でかつ使い勝手の良い縦型高分解能RBS 分析装置として完成させた.

2. 技術の内容

 本装置は図3 に示すように,高エネルギーイオン(He, 最大500keV) を発生する加速器を上部に配置し,イオンをいったん下方に向け加速し,偏向電磁石にて水平に軌道をまげて測定チェンバに入射させる.加速器を上部に配置可能としたことで,水平に機器配置された横型と比較して,本体設置スペース(2.6m × 1.6m)を35%減らし,汎用表面分析装置と同様に研究室,実験室に設置可能となった.この縦型構造を実現するために,イオンを加速する加速管周囲にコッククロフト高電圧発生回路を構成した,コンパクトな縦型加速器を開発した.小型化した場合,必然的に高電圧放電の可能性が高まり,故障の発生や装置寿命の低下につながるため,放電発生の抑制と放電発生時の内部回路の保護対策技術を開発し,信頼性の高い小型加速器を実用化できた(図4).

 信頼性の高い測定をオングストロームレベルの精度で行うためにはシステムの高精度化が重要である.そこで測定チェンバと分析マグネットとの角度を自在に変更でき,散乱イオンの検出方向を高精度に設定できる「検出角度自在変更機構」を開発した.図5 に示すように,ビームラインに大口径べローズで接続された分析チェンバが,付属する各種機器と一体となって高精度ベアリングおよびリニアガイド上で試料表面軸(Y軸)を中心に回転する構造とし,角度をリニアスケールで計測しフィードバックするシステムを開発した.この結果,角度設定再現性0.1 度以下を達成し,分析データの精度を3 倍に高めることができた.さらに大口径ベローズの自由角度範囲内では,測定チェンバの真空を破らず容易に角度変更が可能であるため,今回開発したRBS 計測データの自動フィッティングシステムとの併用で,従来に比べて分析時間を約60%短縮できた.

3. まとめ

 今回開発した装置はHRBS-V500 の型式で販売しており,すでに国内外大手半導体メーカに納入し,半導体プロセス開発に貢献している.また高分解能RBS 手法による受託分析サービスが行われ,分析関係の国際会議でもその有用性が取り上げられるなど,精度の高い表面分析手法としての利用が活発になりつつある.

 なお,この装置は独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業の成果を一部に採用していることを謝意とともに付記する.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2007年、重河和夫((株)神戸製鋼所)、福山博文((株)神戸製鋼所)、足立成人((株)神戸製鋼所)、小林 明((株)神戸製鋼所)、木村健二(京都大学)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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ナノテクノロジー、極薄膜の分析、多層薄膜界面の拡散、RBS原理、半導体製造技術
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