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鉄道車両の急曲線通過性能向上のための摩擦調整材車上噴射による車輪/レール間摩擦制御手法の開発

実車両による長期試験

図1 実車両による長期試験

車両/レール間摩擦特性

図2 車両/レール間摩擦特性

摩擦調整材車上噴射装置概要

図3 摩擦調整材車上噴射装置概要

摩擦調整材車上噴射システム

図4 摩擦調整材車上噴射システム

横圧・振動・騒音測定値

図5 横圧・振動・騒音測定値

摩擦調整材導入後のレール状態変化

図6 摩擦調整材導入後のレール状態変化

1. 概要

 鉄道車両の走行性能は,車輪/レール間の摩擦特性に大きく依存し,駆動,制動の際には高い摩擦係数が求められ,急曲線を通過する場合には,横圧(左右方向の力)低減,キシリ音や波状摩耗の抑制から低い摩擦係数が要求される.そのため古くから,砂まき,塗油等さまざまな手法がとられてきたが,これらは万能な対処方法とは言えないものであった.そこで著者らは,車輪/レールの潤滑に最適と思われる摩擦調整材の特性に着目し,急曲線において摩擦調整材を車上から噴射することで,車輪/レール間の摩擦特性を積極的に制御し,車両の曲線通過性能の改善を図る新手法を考案した.試験装置による基礎実験や現車試験,数値解析などを通じて得られた知見を元に摩擦調整材噴射装置を設計・開発し,現在では,東京地下鉄(株)の一部路線の車両に搭載・使用することで,空転や車輪滑走等の不具合も誘発することなく,曲線通過に伴って生ずる車輪/レール接触の諸問題を解決しており,営業線の運営に多大な貢献をしている(図1).

2. 技術の内容

 使用する摩擦調整材(KELTRACKTM HPF)は,車両の曲線通過時に相当する微小なすべりに対しては,車輪/レール間の摩擦係数を適度に低く保ちながら,滑り率が増加するに伴って摩擦力も増加するポジティブな摩擦特性を有している(図2).このような特性から本摩擦調整材は,横圧低減やレール波状摩耗・キシリ音抑制に有効でありながら,車輪滑走・空転を誘発し難い摩擦特性を有しており,車両の制動・駆動を伴う場所においても適用可能で,油のように適用場所の制約を受けず車輪/レール接触に伴う諸問題を解決できる非常に有用な潤滑材である.

 この摩擦調整材を車両側から精度よくレールに噴射することで,車輪/レールの摩擦状態を制御する車上装置を開発した(図3).同装置では,適用対象曲線の内側レール頭頂面に,微少量の摩擦調整材を編成最後尾に配置された噴射ノズルから霧状に噴射し,列車通過後のレールに塗布する.このことにより,レールに塗布された摩擦調整材の乾燥時間を極力短縮するとともに,車輪/レール接触だ円の中に摩擦調整材を点在させることで,粘着を確保する.車上による制御という簡便性があり,噴射列車の後続列車が恩恵を受けるという鉄道の特色を利用したシステムとなっている(図4).

 これまで取り組んできた試験結果のうち,図5 に車輪/レール間の各境界条件で実測した,急曲線における外側レール横圧,レール小返り(左右)振動,軌道近傍の騒音の測定値(平均値)を示す.また,図6 に摩擦調整材導入後のレールの状態変化を示す.摩擦調整材噴射が横圧,振動,騒音および波状摩耗の抑制に有効である事が確認できる.

3. まとめ

 急曲線通過に関わる諸問題を解決するために,車輪/レール間の摩擦係数を積極的に制御する技術を鉄道へ新たに導入するため,摩擦調整材の車上噴射装置を開発・実用化した.本装置により,横圧の低減やキシリ音の抑制等,急曲線における車両の運動性能が大幅に向上した.さらに現在は,車輪/レール間の摩擦状態を台車に装着したセンサにより検知し,摩擦調整材を必要最小量のみ供給するフィードバック制御の導入による改良に取り組み,いっそうの性能向上とともに効率性,経済性向上を目指している.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2007年、留岡正男(東京地下鉄(株))、須田義大(東京大学)、松本耕輔(東京地下鉄(株))、中居拓自(住友金属工業(株))、谷本益久(住友金属テクノロジー(株))に日本機械学会を贈った。

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キーワード

摩擦調整材、摩擦調整剤噴射装置、鉄道・浮上式鉄道、振動・騒音、トライボロジー、摩耗・摩擦
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