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冬季の上向き雷放電新現象の発見

冬季雷による50万ボルト2回線送電線の逆フラッシオーバ

写真1 冬季雷による50万ボルト2回線送電線の逆フラッシオーバ

冬季の大電流上向き雷放電と電流波形

写真2 冬季の大電流上向き雷放電と電流波形

 日本の冬季雷は1960年代から学界に報告されていたが、注目を浴びたのは1970年代に日本海側に建設された500kV2回線送電線で、冬季に予想をはるかに上回る2回線事故が発生してからである。産学による精力的な研究によって雷放電がその原因と推測されるに至り、冬季雷地域の送電線の雷害対策が強化されることで一段落した。1990年代に冬季雷による送電線2回線逆フラッシオーバ現象が世界で初めて撮影され、事故原因の推測が正しかったことが証明された。しかし独立高構造物での冬季の雷電流観測データが蓄積されたにもかかわらず、この季節の高い送電線雷事故率を説明することは30年来できていなかった。

 新しいリレーシステムの導入によって送電線事故発生時刻のミリ秒単位の記録が得られるようになり、それを冬季の雷放電に伴う電磁界パルスの観測記録と厳密に照合した結果、開発者は冬季の2回線事故原因が、200kA級の大電流パルスを伴う上向き雷放電現象であることを突き止めた。特に、負極性大電流を発生させる上向き雷放電は従来知られていなかった新現象で、発見に至る経緯が招待論文として米国の専門誌に掲載され、世界的にも認知された。

 1990年代になってから発見された雷放電の新現象は、スプライトに代表される超高層での発光現象、衛星観測で発見されたCIDと名づけられた高空での特殊な雷放電現象があり、それぞれ理学的な観点から注目を浴びて精力的に研究されているが、いずれも工学的には脅威ではない。社会の基盤となる重要システムに障害を及ぼすという点で、冬季雷の新現象は理学的に興味深いだけでなく、工学的にスプライトやCIDとは比較にならないほど重要である。長年にわたる日本海側の数箇所の高構造物での雷電流直接観測で発見されなかった理由は、現象の発生頻度が夏季の大電流雷同様、非常に低いためである。開発者らは別の雷観測手法を用いて、雷放電密度の低い日本海側の冬季雷が、夏季の大電流雷よりも高い頻度で送電線に重大事故を発生させる性質をもつという30年来の謎を、見事に解き明かした。

 冬季雷による送電線の雷事故率についても、根拠の明確でない仮定を置かずとも、精度のよい予測をすることが可能となった。その結果、冬季の雷害事故対策を具体的な根拠をもって検討できるようになったことは、雷研究のみならず送電工学の進歩の上でも画期的である。


 本研究の成果に対して、電気学会は、2010年、石井勝(東京大学)、齋藤幹久(東京大学)、板本直樹(北陸電力(株))に電気学会振興賞(進歩賞)を贈った。

文献

[1]M. Ishii, M.Sato, A. Sugita, and N. Itamoto 、High current upward lightning flashes in winter、Proc. 13th International Conference on Atmospheric Electricity, Beijing, pp321-324,2007
[2] M.Saito, M.Ishii, M.Matsui, and N.Itamoto、Spatial distributions of high current lightning discharges in Hokuriku area in winter、電気学会論文誌B, Vol.127, No.12, pp1325-1329,2007
[3] 石井 勝,齋藤幹久,藤居文行,松井倫弘,板本直樹、大電流を伴う冬季の雷放電、電気学会論文誌B, Vol.128, No.1, pp291-297,2008
[4] 齋藤幹久,石井 勝,藤居文行,松井倫弘,川村裕直,板本直樹、冬季の日本海側における送電線雷故障率の検討、電気学会論文誌B, Vol.129, N0.1, pp157-164,2009
[5] M. Ishii and M. Saito、Lightning electric field characteristics associated with transmission-line faults in winter、IEEE Transactions on Electromagnetic compatibility, Vol. 51, No. 3, pp. 459-465,2009
[6] M. Saito, M. Ishii, M. Matsui, and N. Itamoto、Spatial distributions of high current lightning of discharges in Hokuriku area in winter、IEEJ Transactions on Power and Energy, Vol. 127, No. 12, pp. 1325-1329,2007
[7] M. Ishii, M. Saito, F. Fujii, M. Matsui, and N. Itamoto、High-Current Lightning Discharges in Winter、IEEJ Transactions on Power and Energy, Vol. 128, No. 1, pp. 291-297,2008
[8] M. Saito, M. Ishii, F. Fujii, M. Matsui, H. Kawamura, and N. Itamoto、Evaluation of Lightning Fault Rate of Tranmission Line on the Coastal Area of the Sea of Japan in Winter、IEEJ Transactions on Power and Energy, Vol. 129, No. 1, pp. 157-164,2009

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キーワード

放電、高電圧・大電流、送電、風力発電、雷放電、冬季雷、LEMP
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