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小型人工衛星「まいど1号」の開発・運用と雷観測

小型人工衛星「まいど1号」

写真1 小型人工衛星「まいど1号」

「雷センサ」

写真2 「雷センサ」

「まいど1号」による雷観測のまとめ

図1 「まいど1号」による雷観測のまとめ

 「まいど1号」は、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)からμ-LabSatの技術移転を受け、東大阪を中心とする中小企業群が製造し、2009年(平成21年)1月23日に打上げられた小型人工衛星である。これには、大阪大学グループが開発した、雷放電に伴うVHF波帯広帯域電磁波を受信・記録するVHF波形測定装置を搭載している。μ-LabSatにおける実績品と、民生品を多用することで省コスト・短開発期間を実現し、試験によりその信頼性を確保した。打上げ後、高度約660kmの軌道に投入され、1ヵ月間の試験運用期間を経て、9ヶ月余に渡る定常および後期運用を行った。この間、VHF波形測定装置は、地球上の100箇所以上の地点で10,000パルスを超える電磁波の観測に成功した。地上観測や電磁波伝播シミュレーション結果との比較などから、雷放電から放射された電磁波である確率は極めて高いと結論づけられており、宇宙空間においてこれだけの広帯域で受信した波形データは、世界初のももである。民生品や地上用機器ベースで開発した装置が正常に機能すること、感度等の設計が正しかったこと、宇宙空間が雷観測実施可能な電波環境であることを確認したことなどが主な成果である。

 小型人工衛星「まいど1号」の開発と打上げ成功、およびこれによる雷観測は、広く世界に報道されており、世の中に与えたインパクトは非常に大きい。人工衛星は、電気工学に関わる技術を結集し、ものづくりを行う究極の題材のひとつと言うことができる。特に、小型衛星であることによる省スペースや省電力に対する厳しい制約と、一方で高い信頼性が求められるという矛盾する要求を、JAXAからの技術移転を受けつつ、中小企業群の秀でた製造技術と、小型化・高機能化が進む民生品の利用、度重なる試験による検証という、従来の宇宙機開発とは一線を画する方法で満足し、完成させたことは特筆に価する。また、本衛星の主ミッションは雷観測であり、これまで電気学会論文誌等でもその成果を発表されている地上用雷観測装置を、宇宙に展開しようとするものである。世界でも前例がない広帯域での波形記録、宇宙からの電波計測による雷活動監視に向けての基礎データの蓄積と実証など、当該事項によりもたらされた科学的成果は電気関連分野の発展に大きく貢献するもので、電気工学を技術的背景とする者に対し宇宙関連研究への道を開く物ともなり得る。


 本研究の成果に対して、電気学会は、2010年、森本健志(大阪大学)、河崎善一郎(大阪大学)、橋本英一((独)宇宙航空研究開発機構)、青木豊彦((株)アオキ)に電気学会振興賞(進歩賞)を贈った。

文献

[1] Y.Nakamura and H.Hashimoto、SOHLA-1, A lowcost satellite development with technology transfer program of JAXA、Proceedings of 56th International Astronautical Congress (IAC) 2005, IAC-05-B5.6.B.08,2005
[2] Z. Kawasaki、Lightning Observations from space by broadband VHF digital interferometer、IEEJ Transactions FM, Vol.126, No.1, pp10-12,2006
[3] Z.Kawasaki, T.Morimoto, and T.Ushio、VHF broadband digital interferometer on a small satellite、Proceedings of The 25th International Symposium on Space Technology and Science (ISTS) pp.1602-1607,2006
[4]森本健志,牛尾知雄,河崎善一郎、小型人工衛星からのVHF波帯自然電磁波源測位、電子情報通信学会技術研究報告, EMCJ, 環境電磁工学 106(224), 1-6, 2006-08-25,2006
[5]T.Taniguchi, A.Hirata, T.Morimoto , and Z.Kawasaki、Propagation characteristic of widband electromagnetic wave in the ionosphere、IEEJ Transactions FM, Vol.126, No.11, pp.1173-1176,2006
[6]森本健志,河崎善一郎、小型衛星「まいど1号」からの雷観測、日本大気電気学会誌, Vol.3, No.2, (No.75), pp.2-5,2009
[7]H.Kikuchi, T.Morimoto, T.Ushio, and Z.Kawasaki、Wideband Radio Wave Observations of Lightning Discharge by Maido-1 Satellite、IEICE Transactions Communications, Vol.E93-B, No.8, pp.2226-2227, DOI: 10.1587/trancom.E93.B.226,2010

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キーワード

宇宙航空エレクトロニクス、電磁環境、雷、小型人工衛星、電波伝搬
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