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数値電磁界計算に基づくサージ解析手法の確立とその汎用解析プログラムVSTLの開発

VSTLのグラフィカル・ユーザ・インターフェース

図1 VSTLのグラフィカル・ユーザ・インターフェース

 サージ解析は、雷撃による過電圧の解明に大きな役割を果たす。従来のサージ解析は、解析対象を集中定数・分布定数素子に置き換えた回路解析であり、鉄塔やビルといった三次元構造物上を伝搬するサージ問題等には本格的に適用できない。この問題を解決するため、開発者らは根源的な支配方程式であるマクスウェルの方程式を数値的に解くFDTD法(有限差分時間領域法)をサージ解析に適用するための研究開発を行った。FDTD法は主にアンテナやマイクロ波の分野で開発された解析手法であるため、サージ解析に適用するためには、適切な細線導体模擬手法、傾斜導体模擬手法、雷放電路模擬手法、避雷器等非線形素子模擬手法、フラッシオーバ現象模擬手法の開発が必要であり、その開発に順次成功した。また、その成果を実装した汎用解析プログラムVSTL(Virtual Surge Test Lab.)を完成させて実務への適用を可能とした。現在、VSTLは電力会社、大学、企業等で広く利用されている。さらに、従来解析できなかった鉄塔逆フラッシオーバ現象、変電所母線サージ伝搬、配電線誘導雷、接地系の解析に適用し、重要な知見を得ている。

 以前より、回路解析では解けないサージ問題に対してマクスウェルの方程式に基づく数値電磁界解析が有効であること自体は知られていた。しかしながら、具体的な適用には困難が多く、開発者らは先ず、数ある数値電磁界解析手法の中でもFDTD法を用いれば、土壌中を三次元的に広がるサージ電流が正確に解析できることを見出した。また、FDTD法を種々のサージ解析に適用する際、電線や構造物の部材等、細い導体を制度良くモデル化することが全体の解析精度を大きく左右することに着目し、その高精度モデル化手法を開発した。さらに、雷放電の進展速度を正確に模擬する手法や、従来数値安定性の問題で不可能とされていた避雷器等非線形素子を模擬する手法の開発にも成功し、最近では、鉄塔のアークホーンにおけるリーダー進展過程を正確に模擬する手法も開発した。これらの技術は汎用プログラムVSTLとして結実し、延べユーザ数は188に達し、この分野の標準プログラムとなった。開発者ら自身が行った電力設備の雷サージ解析だけでなく、ユーザが行った風車や高層ビルの雷サージ解析からも重要な知見が多く見出されており、この分野の発展に大きく貢献している。


 本研究の成果に対して、電気学会は、2009年、野田琢((財)電力中央研究所)、立松明芳((財)電力中央研究所)、田辺一夫((財)電力中央研究所)に電気学会振興賞(進歩賞)を贈った。

文献

[1] 田辺一夫、FD-TD法に基づく電力設備の過渡接地抵抗解析手法、電気学会論文誌B, Vol.120, No.8/9, pp. 1119-1126,2000
[2] 野田 琢,横山 茂、FDTD法に基づく汎用サージ解析プログラムの開発、電気学会論文誌B, Vol.121, No. 5, pp. 625-632,2001
[3] T. Noda, and S. Yokoyama、Thin Wire Representation in Finite Difference Time Domain Surge Simulation、IEEE Trans.on Power Delivery, Vol. 22, No. 5, pp. 72-72,2002
[4] T. Noda, R. Yonezawa, S. Yokoyama, and Y. Takahashi.、Error in Propagation Velocity Due to Staircase Approximation of an Inclined Thin Wire in FDTD Surge Simulation、IEEE Trans. on Power Delivery,2004
[5] T. Noda, A. Tatematsu, and S. Yokoyama、Improvements of an FDTD-Based Surge Simulation Code and Its Application to the Lightning Overvoltage Calculation of a Transmission Tower、International Journal of Electrical Power & Energy Systems,2007
[6]立松 明芳,野田 琢、FDTD法を用いたサージ解析における数値発散回避法と細線導体模擬への適用、電学論 B,Vol. 129,No. 6,pp. 776-782,2009
[7] 立松 明芳,野田 琢、FDTD法を用いたサージ解析における避雷器模擬手法の開発とその配電線誘導雷電圧計算への適用、電学論 B,Vol. 130,No. 3,pp. 373-382,2010
[8]S. Matsuura, A. Tatematsu, T. Noda, and S. Yokoyama、A Simulation Study of Lightning Surge Characteristics of a Distribution Line Using the FDTD Method、IEEJ Trans. PE, Vol. 129, No. 10, pp. 1225-1232,2009
[9]A. Tatematsu, K. Yamazaki, K. Miyajima, and H. Motoyama、A Study on Induced Voltages on an Aerial Wire due to a Current Flowing through a Grounding Grid、電学論B,Vol. 129,No. 10,pp. 1245-1251,2009
[10]野田琢、FDTD解析の結果に基づく雷サージ解析用鉄塔モデル、電学論B, Vol. 127, No. 2, pp.379-388,2007
[11]K. Tanabe、Performance of proposed thin-wire model in finite difference time domain method、IEEJ Trans. Electrical and Electronic Engineering
Vol. 6, No. 3, pp. 207-210
,2011
[12]野田 琢、FDTD法による雷サージ・EMC解析技術、平成18年電気学会全国大会,No. 7-S10-8,2008
[13]A.Ametani, et al、Numerical Electromagnetic Analysis Method and its Application to Surge Phenomena、CIGRE C4-108,2008
[14]T. Noda、A Tower Model for Lightning Overvoltage Studies Based on the Result of an FDTD Simulation、Electrical Engineering in Japan, Vol. 164, No. 1, pp. 8-20,2008
[15]T. Noda、A Numerical Simulation of Transient Electromagnetic Fields for Obtaining the Step Response of a Transmission Tower Using the FDTD Method、IEEE Trans. on Power Delivery, Vol. 23, No. 2, pp. 1262-1263,2008
[16]野田 琢、FDTD法による雷サージ解析技術、電気学会誌,Vol. 126,No. 10,pp. 659-662,2006

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電気・電力
(電気基礎技術)

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世の中の出来事

2009
鳩山由紀夫(民主・社会・国民新連立)内閣が発足する。

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キーワード

解析・電磁環境、送電、高電圧・大電流、雷サージ、三次元構造物
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