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Stop & Start System(アイドルストップ)における常時噛合いギヤ式始動機構

機構断面と作動概要

図1 機構断面と作動概要

再始動時間

図2 再始動時間

OWC係合の基本原理

図3 OWC係合の基本原理

OWC T-N線図

図4 OWC T-N線図

車室内始動音レベル

図5 車室内始動音レベル

周速とリップ温度の関係図

図6 周速とリップ温度の関係図

1.概要

 「Stop & Start System における常時噛合いギヤ式始動機構」(以下「常噛み機構」と略す)とはワンウェイクラッチとボールベアリングを使ってスターターピニオンギヤとリングギヤを常に噛み合わせることにより,エンジン始動品質(音・振動・時間)を向上させたものである.従来のギヤ飛び込み式始動機構を使ったアイドルストップの量産経験を通して,更なる普及のためには「始動・停止時の音・振動低減」「いつでも発進可能な,速やかな再始動」が必要と考えた.これらの課題を克服するためギヤを常に噛み合わせる機構とした.更に「全ての駆動系に対応可能な展開性確保」「始動系のメンテナンスフリー」を実現し,『アイドルストップが常識!』の新環境時代を切り拓くことを目指す「常噛み機構」を世界で初めて開発した.

2.技術の内容

 「常噛み機構」の機構断面とその作動概要を図1 に示す.エンジン始動時はワンウェイクラッチ(以下OWC と略す)が係合してスターター駆動力がクランクシャフトに伝達される.エンジン始動後はOWC が解放されてリングギヤは停止し,エンジンだけが回転する.ギヤ同士を常に噛み合わせることで,従来スターターのピニオンギヤが飛び出してリングギヤに噛み合うまでの時間を短縮できる.また図2 に示すようにエンジンが完全に停止するまで再始動を待つ必要がないため,エンジン停止過程中でのドライバー発進要求にも対応可能となった.

 図3 はOWC 係合の基本原理を示す.従来OWC はオートマチックトランスミッション内部での使用例があるが,潤滑油としては摩擦係数μの変化が少ないオートマチックフルードであり,μ変化が激しいエンジンオイル中での使用は世界初である.OWC 係合信頼性確保には実車でのμ把握が必要不可欠で,市場での最小μを導き出し,そのμでも係合保証可能な噛合い角αを設定した.

 また本機構では通常始動以外,例えばエンジンストール時にはエンジン回転エネルギーが短時間に衝撃トルクとしてOWCに負荷される.OWC の寿命把握のためには,様々な入力場面と発生頻度把握が重要である.図4 は新開発したOWC のトルクと使用限度回数を示すT - N 線図(最小μ)と実使用での入力トルク・回数を示すもので,車両生涯に渡り保証可能な始動機構用OWC を開発できた.

 図5 は車両遮音性能と車内始動音の関係を示す.従来のギヤ飛び込み式始動機構に対し4dB 低減でき,遮音性能の悪い車両でも違和感のない始動音を実現した.

 エンジンオイル中に常噛み機構基本部を配置するため,2 つの大径オイルシールを使用している.とりわけ従来の乗用車エンジン用の30m /秒を超える40m /秒の軸周速で使用されるインナーオイルシールは図6 に示すように,そのリップ温度が従来比40°C以上も上昇する.このためオイルシールの低緊迫力化,リップへの低摩擦コーティング追加,エンジンブロック後端面にオイルジェット追加,更にシールに温度低減プレートを追加して,従来エンジンオイルシール並みのリップ温度まで低減した.

3.まとめ

 今回開発した「常噛み機構」は2008 年8 月からヤリスなどに搭載されて発売中である.都市部渋滞走行時には約10%のCO2排出量削減と燃料消費削減効果を期待できる.今後の本機構の普及で地球環境課題解決に向け,より一層の貢献が可能となる.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2009年、浅田俊昭(トヨタ自動車(株))、杉村一昭(トヨタ自動車(株))、酒井和人(トヨタ自動車(株))、永田良介(トヨタ自動車(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

ワンウェイクラッチ、常噛み機構、エンジン始動機構、始動音、アイドルストップ、メカトロニクス、機能要素、伝動機構、歯車、安全性・信頼性
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