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マイクロ熱アクチュエータによる磁気ヘッドスライダ浮上量の制御技術

本技術の狙い

図1 本技術の狙い

本技術のコンセプト

図2 本技術のコンセプト

プロトタイプの研究開発

図3 プロトタイプの研究開発

本技術を適用したHDD製品群

図4 本技術を適用したHDD製品群

1. 概   要

 磁気ディスク装置(HDD)の大容量化のためには,約10nmの微小すきまをもって空気潤滑される磁気ヘッドスライダの浮上量を,さらに低減する必要があった.低浮上化を阻む最大の障害は,環境温度などによる浮上量バラツキである.当社では,スライダ中に搭載したマイクロ熱アクチュエータによって浮上量をその場調整して上記バラツキを吸収,常に低浮上状態を実現し,性能改善と歩留まり向上に貢献するTFC(Thermal Flying-height Control)技術を開発した.

2. 技術の内容

 本技術のねらいは,磁気ヘッドスライダ浮上量の内訳で大きな部分を占める,浮上バラツキおよび浮上変動に備えて確保している浮上マージン(図1)を不要化することである.

 図2 に本技術のコンセプトを示す.磁気ヘッド近傍に浮上量調整用のマイクロアクチュエータを組み込み,浮上設計的には十分なマージンを確保しつつ,必要な時のみアクチュエータに通電し,浮上量を下げて記録再生を行う.すなわち,アクチュエータに電流を通じて発熱させると,その近傍が熱膨張し,ヘッド/ディスク間距離を微調整できる.これにより,接触しないぎりぎりの低浮上量を常に確保しながら,高性能な記録再生ができるようになった.以下にアクチュエータの特徴を示す.
 (1)駆動量は供給電力に対してリニア
 (2)消費電力は1nm の浮上制御あたり約10mW で,現実的な消費電力で浮上量変動を補償することができる
 (3)アクチュエータの時定数(フルストロークの63%の変位に達する時間)が200μs 以下であり,ヘッドチェンジやシークの間に通電開始すれば実際の記録再生 に十分間に合う応答性である.

 図3 に研究開発についてまとめる.まず伝熱・変形・空気軸受シミュレーションといった機械系技術を駆使して熱アクチュエータを設計し,実際に熱アクチュエータを搭載したスライダを試作・評価した.本アクチュエータ形成方法は,ウエハ単位で行われている薄膜ヘッド形成プロセスの一部に組み込めるものであり,従来から浮上量制御スライダとして提案されてきた圧電アクチュエータ等と比較して,量産歩留まりが高く実装コストが低いことが最大の特長である.

3.まとめ

 当社では,図3 に示した研究開発結果をもとに更に改良を進め,2006 年の日刊工業新聞「十大新製品賞」を受賞したモバイル用2.5 型HDD(商品名:Travelstar 5K160)を皮切りに,業界初の1 テラバイト(テラは1 兆)の大容量を実現したデスクトップパソコン用3.5 型HDD( 商品名:Deskstar 7K1000/Cinemastar 7K1000),ビデオカメラなどに用いられる1.8 型HDD( 商品名:Travelstar C3K80), ?30~ +85°Cの過酷環境に耐える車載HDD(商品名:Endurastar J4K50)など,今後の全HDD ラインアップに本技術を搭載する(図4).

 本技術は,HDD の信頼性向上,低価格化を推進してHDD適用製品の裾野を広げ,IT 社会をより豊かにしてゆく.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2007年、栗田昌幸((株)日立製作所)、白松利也((株)日立製作所)、三宅晃司((株)日立グローバルストレージテクノロジーズ)、田中秀明((株)日立グローバルストレージテクノロジーズ)、三枝省三(広島大学)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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磁気ディスク装置、ヘッドスライダー、熱アクチュエータ、ヘッド浮上量制御、記憶装置、制御、マイクロメカニクス、トライボロジ
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