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超音波を利用した誘導加熱式ジャー炊飯器の開発

IH式炊飯器の構成

図1 IH式炊飯器の構成

内釜の振動特性

図2 内釜の振動特性

8次固有モード

図3 8次固有モード

美味しさ指標

図4 美味しさ指標

糖度の変化

図5 糖度の変化

1.概要

 日本人の大多数が,柔らかくて粘りのあるご飯を美味しいと感じる.超音波振動の利用によって吸水が促進される.しかも,米の表面層がはがされて重湯となり,これが再び米外層に付着して粘りが増すため,柔らかくて粘りのあるご飯になる.また,十分な吸水によりでん粉のブドウ糖への分解が加速され甘みが増す効果も期待できる.鍋に振動素子を装着する考えはあるが,振動素子や駆動回路が高コストで,鍋と振動素子との一体化による清掃性や使い勝手などに課題があり実用化には至っていなかった.誘導加熱(IH:Induction Heating)式ジャー炊飯器では,IHコイルから内釜に電磁力が作用する.ここに報告する技術は,特別の振動素子を使うことなく,この電磁力を利用して内釜に超音波振動を発生させる従来にない全く新しい方式である.この技術開発によって,業界初の超音波を利用したIH式ジャー炊飯器を製品化した.

2.技術の内容

 IH式ジャー炊飯器の基本構成を図1に示す.米を炊飯する内釜の底部に,外側と内側に二つの円環状の励磁コイルを同心位置に配設している.制御回路から20数kHzの高周波の電流を供給すると,内釜には電磁誘導作用によってジュール損失が生じ発熱する.この誘導発熱によって炊飯する.

 本技術の開発で,最も苦心した点と解決に至った過程における特筆すべきポイントは二つである.第一は,内側励磁コイルと内釜とのすきまに非磁性材料の銅リング(図1)を適切に挿入すると,微弱な超音波振動が発生することを実験過程で発見したことである.これを契機として実用化への可能性が確信できるようになった.第二はこの超音波振動の発振メカニズムの解明によってその強度と安定化を図ったことである.コイルの給電周波数を変化させた内釜の振動特性は,図2に示すように,11kHzの間隔でピークが出現しており,88kHzのレベルが最も大きいことがわかった.この観察から 超音波振動は,内釜を構成するステンレス層の縦振動であり,ピーク周波数の88kHzは内釜の8次の縦振動固有振動数に一致することがわかった.図3に内釜縦振動の8次固有モードの解析結果を示す.また,この縦振動を励起する加振力はステンレス層の応力であることを推論し,88kHzのモーダル加振力を大きくなるように,内釜の形状チューニングを実施した.

 ご飯の美味しさを「粘り/硬さ」の比で定義し,その測定結果を図4に示す.超音波によって美味しさ指標は87から105に18ポイント改善された.これは超音波によって吸水が促進されるためである.さらに,図5に示すように糖度も増し甘みが向上した.

3.まとめ

 特別の振動素子を使うことなく,超音波振動を発生させる誘導加熱式ジャー炊飯器を製品化した.炊飯器の本質性能である「ご飯を美味しく炊く」という機能を大幅に進化させることができた.本技術は今後の新しい調理家電製品の創出や食生活の変革への貢献が期待できる.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2006年、古石喜郎(三菱電機(株))、菅波拓也(三菱電機(株))、長峯長次(三菱電機(株))、菱山弘司(三菱電機ホーム機器(株))、猪熊 晶(三菱電機ホーム機器(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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ジャー炊飯器、誘導加熱、励磁コイル、超音波振動、電気機械
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