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10万時間を超える超長時間の高信頼性クリープ試験によるクリープデータシートの作成

物質・材料研究機構目黒地区の単式クリープ試験室

図1 物質・材料研究機構目黒地区の単式クリープ試験室

2.25Cr-1Mo鋼の応力-破断時間データ

図2 2.25Cr-1Mo鋼の応力-破断時間データ

炭素鋼(0.3C)の30万時間を超えるクリープ曲線

図3 炭素鋼(0.3C)の30万時間を超えるクリープ曲線

1.概 要

 クリープデータシート作成計画は,高温機器の設計に必要な10万時間クリープ破断強度などを短時間からの外挿でなく10万時間クリープ試験を実施して求め,その結果を広く公表することによって,高温用金属材料の適正な使用,高温機器の安全性の確保と信頼性の向上,高温用金属材料の開発に寄与することを目的として1966年に開始した.

 クリープデータシートでは,10万時間を超える長時間クリープ試験データを取得することを目標としているが,約1万時間までのクリープ試験データを取得し左時点でクリープデータシートの初版を発行している.3~5万時間程度のクリープ試験データを取得した後,改訂A版を発行し,10万時間を超えるクリープ破断データを取得した後,最終版となる改訂B版を発行している.1986年以降に改訂B版を発行しており,プロジェクト開始時に対象とした44材種に関するクリープデータシート作成計画は,2004年3月にすべて終了した.現在は1988年以降にクリープ試験に着手した新規開発材料22材種に関する長時問クリープ試験を行い,クリープデータシート作成を継続実施している.

2.技術の内容

 クリープデータシート作成計画では,世界最大規模のクリープ試験設備(単式クリープ試験機:878台,複式クリープ試験機:144台,大型クリープ試験機:10台,その他:36台,合計1068台)を整備し,66材種の国産耐熱金属材料について最長10万時間を超える長時間クリープ試験を実施している.クリープ試験設備と長時間クリープ試験データの例を図1および図2に示す.

 ボイラ・圧力容器などの高温機器の設計基準である許容引張応力は,10万時間クリープ破断強度に基づいて設定される.そこで本作成計画では,需要の高い耐熱金属材料について,民間では実施が困難な長時間クリープ試験を系統的に実施して,信頼性の高い長時間クリープ試験データを取得することを目的としている.信頼性の高いクリープ試験データを取得するためには,試験温度を精度良く安定に維持することが最重要課題である.本作成計画では,年間を通じて空調により試験室の温度を一定に維持するとともに,自家発電設備により約40年間にわたり連続してクリープ試験を実施し,多数の長時間クリープ試験データを取得している.また,温度計測に細心の注意を払い,JlS規格(JIS Z8704-1993温度測定方法-電気的方法)B級の精度で全クリープ試験機の温度計測を実施し,JIS規格(JIS Z2271:1999金属材料のクリープおよびクリープ破断試験方法)において規定されている許容温度範囲の半分の範囲に試験温度を制御し,最長では30年を超える長時問にわたり安定に試験温度を維持している.クリープ試験に供する約4000対のタイプR熱電対のすべてについて,国家標準に基づいて検定された標準熱電対を用いて校正を行い,クリープ試験供試後の特性劣化挙動についてもモニターしている.これにより,熱電対素線の製造ロットから,校正結果,特性劣化を含めた使用履歴すべて把握して,クリープ試験温度の信頼性向上を図っている.この結果として蓄積した,熱電対の特性劣化挙動は,JIS規格(JIS Z2271:1999)でも参考資料として引用されている.これらの試験を通じて,これまでに10389点のクリープ破断データを取得し,総クリープ試験時間は約26000年を超え,700点以上の10万時間を超える長時間クリープ試験データを取得している.30万時間(約34.2年)を超えるクリープ試験データもすでに7本取得している.

3.まとめ

 2005年度末までに総計130冊のクリープデータシートを発行し,国内外約700箇所の民間企業,大学,公的研究機関などに送付するとともに,2003年からはNIMS物質・材料データベースとしてインターネットによるデータの公開も行っており,経年プラントの定期点検時の余寿命予測や健全性評価,事故や損傷時の原因究明,新規材料開発のための参照データなどとして活用されている.また,クリープ変形挙動やクリープデータ解析法などの基礎的研究,許容引張応力の妥当性評価による見直しなどにも活用され,「発電用火力技術の技術基準の解釈」の許容引張応力見直しにも反映されるなど,高温機器の安全性・信頼性向上に貢献している.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2006年、木村一弘((独)物質・材料研究機構)、横川賢二((独)物質・材料研究機構)、金丸 修((独)物質・材料研究機構)、大場敏夫((独)物質・材料研究機構)、宮崎秀子((独)物質・材料研究機構)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

クリープ、強度設計、損傷・寿命評価、材料強度、金属材料
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