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世界市場対応還流式ATMにおける多様紙幣取扱い技術の開発

還流式ATM外観と紙幣還流機構構成

図1 還流式ATM外観と紙幣還流機構構成

位相制御型紙幣集積機構

図2 位相制御型紙幣集積機構

巻取り式紙幣収納放出機構

図3 巻取り式紙幣収納放出機構

搬送ガイド継ぎ目部における解析例

図4 搬送ガイド継ぎ目部における解析例

1.概要

 近年,海外の銀行において入出金処理が可能な還流式ATMの需要が増大している.しかし,寸法が多岐にわたる海外紙幣を取り扱う技術がこれまでになく,入金紙幣を出金紙幣として使用する還流式ATMは普及していない.当社は,さまざまな寸法の紙幣の集積や繰出しが可能な「位相制御型紙幣集積機構」や「巻取り式紙幣収納放出機構」,切れ紙幣を検出して排除するための「切れ紙幣検出機構」,装置の小型化・省スペースを実現する「紙幣往復搬送機構」などの新機構を開発し,世界各国の紙幣の入出金処理が可能な還流式ATMを初めて製品化した.また,三次元CADデータを活用した「紙幣搬送シミュレーション技術」を開発し,紙幣搬送機構の高信頼化と開発効率向上を実現した.

2.技術の内容

 図1に開発した還流式ATMの概観と紙幣還流機構の構成を示す.入出金口では,多岐にわたる寸法の出金紙幣を集積する機構が不可欠である.この課題を解決するために,図2に示す位相制御型集積機構を開発した.集積部へ進入してきた紙幣は,ループ状のシートと集積ガイドによって後端部に制動力を受けて停止する.その後,後続の紙幣が進入してくるとシートローラが回転し,フラットなシートで停止した紙幣をかき出して集積させるとともに,次のループ状シートが後続紙幣を停止させる位置で停止するように位相制御される.

 一時スタッカでは,多岐にわたる寸法の入金紙幣を一時的に収納した後,一枚ずつ繰出す機構が不可欠である.この課題を解決するために,図3に示すテープをホイールに巻き取りながら紙幣を収納し,逆にテープをリールヘ巻き戻しながら紙幣を放出する巻取り式紙幣収納放出機構を開発した.この機構は,紙幣の寸法に関係なく紙幣を集積して放出することが可能なだけでなく,従来のゴムローラを用いた紙幣放出機構のように放出される紙幣には抵抗力を作用させないため,剛性の低い紙幣が座屈して生じる不具合を防止している.

 また,開発したATMでは,切れの入った紙幣による障害が発生する前に紙幣の切れを検出し,入金された紙幣をそのまま返却することで信頼性を高めることにした.このため,搬送ローラにダブルテーパ形状のローラを用い,画像センサで紙幣の切れを検出する機構を開発した.ダブルテーパ形状の搬送ローラは紙幣の切れを開く機能があり,ここを通過して広がった切れの面積から切れの長さを判定する.

 さらに,紙幣の搬送ジャムや折曲りが予測可能な紙幣搬送シミュレーション技術を開発すると共に,この技術を活用して紙幣往復搬送機構の搬送ガイドの形状適正化を行った.開発したシミュレーション技術は,三次元CADシステムで設計した搬送ガイド形状のデータがそのまま解析可能となるデータ変換と自動メッシュ作成システム,および折れぐせのある紙幣解析モデルと解析ソルバ技術である.図4は,ジャムが発生しやすい搬送ガイドの継ぎ目部分において,先端に折曲りがある紙幣が搬送された場合の計算結果である.計算結果は実験結果ともよく一致し搬送ガイドの効率的設計を可能とした.

3.おわりに

 上述の機構や技術により開発した還流式ATMは,多様な紙幣の処理が要求される海外においても信頼性の高い入出金処理を実現している.また,今回開発した世界市場対応還流式ATMは,海外での還流式ATM市場を新たに創出した.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2005年、吉田和司((株)日立製作所)、野見山 章((株)日立製作所)、玉本淳一((株)日立製作所)、野呂慎豪((株)日立製作所)、加藤利一(日立オムロンターミナルソリューションズ)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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還流式ATM(紙幣自動受け払い機)、外国紙幣、紙幣収納・放出機構、紙幣切れ検出、紙幣搬送シミュレーション、端末機器、CAE/CAD、媒体
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