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国内ポスト新長期排出ガス規制対応2.0L直噴ディーゼルエンジンの開発

LNT制御要求と排気後処理システムの状態遷移図

図1 LNT制御要求と排気後処理システムの状態遷移図

空燃比制御の動作の様子

図2 空燃比制御の動作の様子

LNTシステムの排気低減効果

図3 LNTシステムの排気低減効果

1.概要

 ディーゼルエンジンは,理論空燃比よりも空気が多い状態(リーン状態)で燃焼し,ポンプ損失が少なく,圧縮比も高いため,少ない燃料で効率良く燃焼できる.しかし,常時リーン状態で燃焼するため理論空燃比近傍でのみ機能する三元触媒システムによるNOx(窒素酸化物)とHC(炭化水素)の同時低減が難しく,強化される排気規制に対応するためには新たな技術の必要性が増してきた.ディーゼルエンジンの優れた点はそのままに,従来では難しいとされたNOx を大幅に低減するため,最新の燃焼技術およびDPF(Diesel Particulate Filter)システムに加え,LNT(リーンNOx トラップ触媒)とその性能を引き出す高度なエンジン制御技術を開発した.この技術によりM9R エンジンを搭載するエクストレイルは,世界で初めて2009 年10 月から施行された新しい排出ガス規制「ポスト新長期規制(平成21 年規制)」に適合することができた.

2.技術の内容

 LNT の性能を十分に発揮させるためには,空燃比コントロールと触媒温度コントロールが不可欠である.そのため図1 に示すようなLNT,DPF に対する制御要求と各運転モードの状態遷移を可能とした. 通常運転時に対して,DPF 内のPM(Particulate Matter)の堆積量に応じて実施されるDPF 再生モードに加え,LNT に吸着したNOx を還元するリッチスパイクモード(数分間に数秒の頻度でリッチ雰囲気運転するため,この操作をリッチスパイクと称している)と吸着安定化した硫黄酸化物を除去する硫黄被毒解除モードとで構成される.またこれらのモード要求を正確に検知するためにLNT へのNOx吸着量,硫黄被毒量,触媒の温度などLNT 状態量を正確に予測するモデルをコントローラ内に付加した.エンジン運転状態およびLNT 状態予測値に基づき排気後処理要求を判断し,最適な吸入新気量および燃料噴射量の制御を行っている. また,一般に空燃比などの燃焼に影響を与えるパラメータが大きく変化するとエンジン燃焼効率の変化によりエンジン発生トルクの変化を生む.運転性に違和感無く, かつ各排気後処理装置の要求に合わせて空燃比をコントロールするためには,モード切替時の吸入空気および燃料噴射量の緻密な制御が必要となる.これら課題を解決するため,新気・EGR の動特性(EGRガス中酸素濃度を含む筒内酸素量応答)を考慮したモデル規範型の制御アルゴリズムを適用した.具体的には(図2),(A)燃費率悪化の補正,(B)EGR 中の酸素を考慮した吸入ガス中酸素量応答を推定し,(C)これらに応じて過渡の目標空燃比補正値と(D)目標噴射量を演算する.この結果,目標空燃比が急変するリッチスパイクモードにおいても運転性に違和感が無い空燃比制御を実現した.

 これを欧州排出ガス規制Euro4 対応技術(ダブルスワールポート,ピエゾ式インジェクタ,大型EGR クーラ等による燃焼改善など)と組み合わせ,ポスト新長期規制を達成することを可能とした(図3).

3.まとめ

 技術の要は,吸着したNOx を予測して適切なタイミングで浄化させること,および運転性に影響を与えることなくリーン・リッチ運転させることであり,これを実現するためエンジンの動特性と排気後処理システムの状態を予測するモデルに基づく新制御ロジックを開発した.今後もディーゼルエンジンを環境技術の一翼を担う動力源とするため,また,ディーゼルエンジンが更なる環境改善に貢献することを目指して,開発を続けていく.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2010年、白河暁(日産自動車(株))相吉澤英二(同左)、池田未央(同左)、古賀俊雅(同左)、米谷州平(同左)に「日本機械学会賞(技術)」を贈った。

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キーワード

リーン・リッチ運転、トラップ触媒、リッチスパイクモード、触媒温度、エンジン制御、ディーゼルエンジン、汚染物質抑制、排ガス浄化触媒、空燃比制御、NOx
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