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技術試験衛星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)搭載大型展開アンテナ反射鏡(LDR)

ETS-VIIIの軌道上のイメージ

図1 ETS-VIIIの軌道上のイメージ

反射鏡基本モジュールの構成

図2 反射鏡基本モジュールの構成

受信用反射鏡の軌道上展開画像

図3 受信用反射鏡の軌道上展開画像

1. 概要

 通信衛星の利用拡大のためには,衛星の性能を飛躍的に向上させ,新しい移動体通信サービスを展開する必要がある.技術試験衛星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)に搭載された大型展開アンテナ反射鏡(LDR)は公表されているアンテナでは世界最大となる,電気開口13m(最大機械寸法19m)を有し,今後の通信容量の拡大と,地上端末の小型化のために必要不可欠な技術である.LDR は軌道上で無事展開し,鏡面精度等,性能評価結果も良好である.構造・機構設計技術に加え,地上試験技術,解析評価技術も含めてその技術は今後の大型展開宇宙構造物の基盤技術であり,発展的に継承されるものである.

2. 技術の内容

 ETS-Ⅷ全体の質量はおよそ3 トンであり,図1 に示すように, 2 つの大型展開アンテナおよび2 つの太陽電池パドルを持ち,端から端までが40m の大きさになり,静止衛星としては世界最大級のサイズとなる.大型展開アンテナ1 枚の寸法は19m×17m で,これはテニスコート1 面分ほどである. ETS-Ⅷの目的は,3 トン級大型衛星バス技術,大型展開アンテナ技術,高度移動体衛星通信技術,及び測位にかかわる基盤技術の開発を行うことにある.この中で,大型展開アンテナ技術は,通信装置としての位置づけに加え,将来大型宇宙構造の基盤技術を築くことを狙いとしている.LDR は,電波の反射面を金属メッシュ面とし,その金属メッシュ面をパラボラに成形するためにケーブル構造を構築している.さらにそのケーブル構造に張力を付与する展開骨組み構造をモジュール構造として全体構造を構築する構成である(図2).このように各構造要素が明確な機能分担を行っており,検証すべき機能,性能を明確にしている.さらに,モジュール構造とすることにより,検証単位をさらに明確にし,また試験評価手段や設備の限界を考慮した構造単位にすることで,試験の精度を限界まで高めている.収納状態において,LDR は直径1m,高さ4m の略円柱形状となる.

 LDR の地上試験評価で最も重要な点は,重力の影響を正確に把握することである.10m 規模の展開構造の場合,薄い金属メッシュと軽量なケーブルであっても,要求される形状精度をはるかに超える自重たわみが発生し,また,重力によって発生する力は自身の展開力の数100 倍あって,安易な吊り下げ試験では評価が全く無意味なものになる.同時に,ケーブル,膜,骨組みといった幅広い剛性範囲の構造要素を組み合わせた大規模な構造解析モデルに対して,平衡形状解析,熱変形解析,展開解析を実施することが必要である.ETS-Ⅷでは,モジュール単位での鏡面調整を実施する際に重力の作用方向を変えて調整を繰り返した.モジュール結合後の変形については,解析予測を行い,その妥当性については3 モジュール結合した鏡面の測定により検証している.また,地上展開試験結果による地上展開解析モデルの検証を行い,軌道上最悪条件でも展開抵抗力に比べ,2 倍以上の展開力があることを確認している.ETS-Ⅷ は平成18 年12 月16 日に種子島宇宙センターよりH-IIA204 型により打ち上げられ,12 月25 日に受信アンテナ(図3)を,翌26 日に送信アンテナを展開した.解析による展開力予測値と軌道上測定データとは良い一致を示しており,地上試験評価が適切に行われたことが確認できた.

3. まとめ

 現在,ETS-Ⅷでは,携帯端末を用いた相互通話や高速データ通信,情報のマルチキャスティング等,特に災害時の利用に重きを置いた利用形態を中心に利用実験を実施している.LDR 開発技術は,第25 号科学衛星ASTRO-G 搭載アンテナなど,宇宙科学分野へ技術継承されている.将来の移動体通信においては,地上のネットワークと衛星とを統合するシステムの構築構想を萌芽させ,また地球観測分野への応用としても適用が可能である.さらに大型展開アンテナにおける新たな構造トポロジーの創造と,解析・試験評価技術の開発は今後の大型宇宙構造の基盤技術となる.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2008年、辻畑昭夫((独)宇宙航空研究開発機構)、寺田弘慈((独)宇宙航空研究開発機構)、目黒 在(武蔵工業大学)、臼井基文((独)宇宙航空研究開発機構)、新舘恭嗣((独)宇宙航空研究開発機構)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

文献

[1] A. Meguro, A. Tsujihata, and N. Hamamoto.、The 13 m Aperture Space Antenna Reflector for Engineering Test Satellite VIII、1999年、Proceedings of the IEEE AP-S, AP-64, 1999, Orland.
[2] A. Meguro, A. Tsujihata, N. Hamamoto, and M. Hommma.、Technology status of the 13 m aperture deployment antenna reflectors for Engineering Test Satellite VIII、2000年、Acta Astronautica, Vol. 47, Nos. 2-9, 2000, pp. 147-152.
[3] A. Meguro, H. Ishikawa, A. Tsujihata, A. Miyasaka, and K. Nakamura.、Analysis and test methods for large deployable space structures、2001年、Proceedings of the 42nd AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC Structural Dynamics and Material Conference, Vol. 3, 2001, pp. 2212-2221.
[4] J. Mitsugi.、Direct-Coordinate Partitioning for Multibody Dynamics Based on Finite Element Method、1995年、Proceedings of the 36th AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC Structure Structural Dynamics and Material Conference, AIAA-96-1442-CP, May 1995, pp. 2481-2487.
[5] J. Misugi and Y. Senbokuya.、Dyanamics Analysis of Cable-Driven Flexible Multibody Systems and Its Experimental Verification、1996年、Proceedings of the 37th AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC Structure Structural Dynamics and Material Conference, AIAA-96-1484, May 1996.

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キーワード

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